二年目の春・2

「あの……、横島さん出来れば戦闘技術と武装の追加もお願いしたいのですが。」

茶々丸の稼働テストが終わると横島は一仕事を終えたからかエヴァ達の酒盛りに加わるが、茶々丸は横島に悩みながらも自ら追加での要望を口にしていた。


「相手は超さんか?」

「……はい。 出来るならば力で決めるなどしたくはありませんが、誰かが戦わねばどうしても収まらないとなればその時は私が。」

ちょうどタマモとさよがお風呂に入っていたので裏のことを話しやすかったのかもしれないが、茶々丸から武装という言葉を聞くと横島はじっと茶々丸を見て軽くため息を漏らす。

茶々丸自身は今でも力での決着など望んでないが、それでも超が力で世界を変えようとするならば対抗する力は必要だった。

横島が以前話した超の計画が実行される麻帆良祭まで三ヶ月を切り、随分悩んだのだろうが頼むならば早い方がいいと決断したのだろう。

実際に超と交渉するにもあの様子では力がなくば話も聞いてもらえないのだから、対抗する力を求めるのも仕方ないのかもしれない。


「そうだな。 考えとくけど、一人で解決しようとはするなよ。 実は超さんの問題は学園長先生にも内密に知らせてあるからさ。」

一方茶々丸の複雑な心中を多少なりとも理解出来る横島は無責任に力を否定出来ないものの、茶々丸が一人で動くことには釘を刺していた。

横島も茶々丸が何をどうしようと考えてるのかよく分からない部分もあるので一概に言えないが、正直なところまだ幼いとも言える茶々丸が超を相手にして相手の土俵に乗るのは危険だと感じている。


「学園長先生はすでにご存知なのですか。」

「そろそろ茶々丸ちゃんとは少し具体的な話をする必要がありそうだな。 超さんの未来とその目的も含めて。」

超と対立してからもうすぐ一ヶ月となる頃に茶々丸が万が一の場合には力を持ってしても止めるという覚悟を明確に口にしたことに、横島はそろそろ超鈴音の問題を本格的に考える時が来たのかもしれないと思う。

エヴァにもちらりと視線を向けるが彼女はあくまでも口出しするつもりがないらしく静観する構えだ。

今はまだ考えてる段階だからいいが、茶々丸の場合下手に決断すると一人で突っ走るのではと横島は不安にもなっている。

加えて今更自分には関わりがないからと高みの見物を決め込めるようなタイプではないし、超の問題は扱いを誤ると世界の行方を左右しかねないだけに放置も出来ない。


「近々学園長先生も交えてきちんと話そう。 エヴァちゃんもそれでいいか?」

「ああ、構わん。」

そして珍しく感じるほど落ち着いた様子で話す横島の言葉を茶々丸はただ静かに受け止め聞いていた。

ただ正直横島が自ら超の問題に関与するとは茶々丸はあまり思ってなかったりもする。

以前言われた全てを救うのは無理だとの言葉からあまり関わりたくなさそうな様子を感じていたということもあるが。

しかし近右衛門やエヴァを交えてきちんと話したいというのは茶々丸がずっと考えていたことであり、横島は図らずも茶々丸の考えを一歩進めることになる。


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