二年目の春・2
そのまま観桜会は和やかな雰囲気で続いていくが、食事をしていたタマモは突然立ち上がると桜の中でも一番立派な桜の元に行きじっと桜の花ではなく木を見つめていた。
「タマちゃんどうしたの?」
「さくらさんがあやかちゃんのことしんぱいしてるの。」
その姿が妙に気になった明日菜はタマモに声をかけるが、タマモは意味不明なことを口にするといつの間にか付近から居なくなっていたあやかを探しに行くと言い明日菜が慌てて後を追っていく。
「横島さん?」
「明日菜ちゃんに任せとけば大丈夫だよ。」
一方突然真剣な表情になったタマモを明日菜が慌てて後を追った事に気付いた木乃香達は、自分達も何事かと一緒にタマモを追いかけようとするもこちらは何故か挨拶回りが終わりゆっくりしていた横島に止められてしまう。
「何かあったのですか?」
「声が聞こえたんだよ。 桜の木の声が。」
周りには一般人も居るため内緒話のように理由を囁く横島に少女達は更に不思議そうな表情を見せる。
しかし横島はこの場ではそれ以上語るつもりがないらしく、雪広邸の屋敷の一角に僅かに視線を向けると再びタマモが見ていた桜の木に視線を移していた。
「きょうはね、たいせつなひなんだって。 あやかちゃんげんきなくなるからさくらさんがしんぱいしてるの。」
そしてあやかを探して屋敷に入ったタマモと明日菜だが、こちらもイマイチ要領を得ない。
タマモはさくらさんがと口にするが明日菜にはそれが誰か分からないのだから当然ではあるが、ただこの時明日菜は一つの出来事を思い出していた。
「そう言えば今日って……。」
普通ならば子供のざれ言として深く考えないのかもしれないが、明日菜は真剣なタマモにその訳を考え自ら答えを見つけ出すことになる。
「タマちゃん、今日はいいんちょの弟の誕生日になるはずだった日なのよ。」
「おとうと?」
「産まれて来れなかったの。」
それが正しいのかどうかも確信が持てない明日菜ではあるが、それでも明日菜は今日という日の意味をタマモに語って聞かせた。
正直幼いタマモに聞かせるべき話ではないのは明日菜も理解しているが、それでも明日菜はタマモが知るべきではと半ば直観的に感じたのかもしれない。
そして明日菜の言葉を聞いたタマモは明日菜の記憶を頼りにある部屋の前まで来ていた。
「あやかちゃん、みつけた!」
コンコンと控えめに部屋のドアをノックしたタマモは、まるでかくれんぼでもしていたかのようにドアを開けると部屋の中に居たあやかに駆けよっていく。
「えっ!?」
この時あやかは産まれてくるはずだった弟の部屋で静かに窓の外を眺めていた。
ちょうど窓からは観桜会のようすやタマモと横島が声を聞いた桜がよく見えている。
今年は偶然にも今日という日が観桜会になってしまったが、実は弟の誕生日でもあり命日でもあるこの日はあやかは毎年弟の部屋で過ごしていたのだ。
少し困ったような明日菜といつもと変わらぬ笑顔のタマモが突然部屋に入ってきてあやかは驚いていたが、嬉しそうに駆けよってくるタマモの姿に不快感は感じなかった。
「タマちゃんどうしたの?」
「さくらさんがあやかちゃんのことしんぱいしてるの。」
その姿が妙に気になった明日菜はタマモに声をかけるが、タマモは意味不明なことを口にするといつの間にか付近から居なくなっていたあやかを探しに行くと言い明日菜が慌てて後を追っていく。
「横島さん?」
「明日菜ちゃんに任せとけば大丈夫だよ。」
一方突然真剣な表情になったタマモを明日菜が慌てて後を追った事に気付いた木乃香達は、自分達も何事かと一緒にタマモを追いかけようとするもこちらは何故か挨拶回りが終わりゆっくりしていた横島に止められてしまう。
「何かあったのですか?」
「声が聞こえたんだよ。 桜の木の声が。」
周りには一般人も居るため内緒話のように理由を囁く横島に少女達は更に不思議そうな表情を見せる。
しかし横島はこの場ではそれ以上語るつもりがないらしく、雪広邸の屋敷の一角に僅かに視線を向けると再びタマモが見ていた桜の木に視線を移していた。
「きょうはね、たいせつなひなんだって。 あやかちゃんげんきなくなるからさくらさんがしんぱいしてるの。」
そしてあやかを探して屋敷に入ったタマモと明日菜だが、こちらもイマイチ要領を得ない。
タマモはさくらさんがと口にするが明日菜にはそれが誰か分からないのだから当然ではあるが、ただこの時明日菜は一つの出来事を思い出していた。
「そう言えば今日って……。」
普通ならば子供のざれ言として深く考えないのかもしれないが、明日菜は真剣なタマモにその訳を考え自ら答えを見つけ出すことになる。
「タマちゃん、今日はいいんちょの弟の誕生日になるはずだった日なのよ。」
「おとうと?」
「産まれて来れなかったの。」
それが正しいのかどうかも確信が持てない明日菜ではあるが、それでも明日菜は今日という日の意味をタマモに語って聞かせた。
正直幼いタマモに聞かせるべき話ではないのは明日菜も理解しているが、それでも明日菜はタマモが知るべきではと半ば直観的に感じたのかもしれない。
そして明日菜の言葉を聞いたタマモは明日菜の記憶を頼りにある部屋の前まで来ていた。
「あやかちゃん、みつけた!」
コンコンと控えめに部屋のドアをノックしたタマモは、まるでかくれんぼでもしていたかのようにドアを開けると部屋の中に居たあやかに駆けよっていく。
「えっ!?」
この時あやかは産まれてくるはずだった弟の部屋で静かに窓の外を眺めていた。
ちょうど窓からは観桜会のようすやタマモと横島が声を聞いた桜がよく見えている。
今年は偶然にも今日という日が観桜会になってしまったが、実は弟の誕生日でもあり命日でもあるこの日はあやかは毎年弟の部屋で過ごしていたのだ。
少し困ったような明日菜といつもと変わらぬ笑顔のタマモが突然部屋に入ってきてあやかは驚いていたが、嬉しそうに駆けよってくるタマモの姿に不快感は感じなかった。