二年目の春・2

「全く、飲みすぎですよ。」

その後打ち上げは延々と続いていくが横島達と坂本夫妻と藤井は三時間ほど楽しむと一足先に戻ることになった。

坂本夫妻と藤井は帰りの電車の時間が迫っていたことと、木乃香達は中学生なのであまり遅い時間まで参加させる訳にはいかなかったのだ。

横島だけは特に帰る理由もなく残ってても良かったのだが、タマモもそろそろ限界が来ていて眠そうだったので一緒に帰ることにしている。


「アッハハハッ、大丈夫だよ大丈夫。」

最寄りの駅で坂本夫妻達と別れた横島達は電車で自宅と女子寮がある駅まで移動するが、一見するとほろ酔いにも見える横島は上機嫌な様子であった。

ただ大学生達と一緒にイッキ飲みしたりと若干ハメを外し過ぎた横島に、木乃香達は呆れたような様子で飲みすぎだと注意している。

見た目としては大学生達に混じると同年代としか見えずに楽しげでいいのだが、お酒を飲まない少女達なだけに馬鹿みたいにガブガブと飲む姿は好ましくないらしい。

ちなみに主催サークルには女子大生達もおり、横島は彼女達とも一緒に飲んで楽しげだったので若干面白くないという乙女心も少女達にはある。

別に横島は女子大生達を口説いていた訳でも木乃香達を放置していた訳でもないのだが。


「ほんと止める人が居ないとダメな人よね。」

そのまま電車の中でとうとうタマモが眠ってしまったので横島は電車を降りる際にはタマモを背負い帰り道を歩くが、そんな横島の姿を明日菜は呆れと共に何故かホッとするような気持ちで見守っていた。

思えば横島にはこの世界では親兄弟どころか友人知人も居なかったんだと思い出していたのだ。

日頃女子中高生と馬鹿騒ぎする横島であるが意外に同じ大人と馬鹿騒ぎする姿は初めて見た気がしている。

ここ最近は高畑なんかとよく飲んでいる横島だが、高畑は昔から馬鹿騒ぎなどとは縁遠い人であり本来の横島の精神年齢は今日の大学生達くらいなんだろうなと漠然とながら思うらしい。


「俺は大人だから、ちゃんと限度は弁えてるぞ!」

「あー、はいはい。 そうですね。」

まるで腕白坊主を見守るように生暖かい視線を向ける明日菜に横島は少しむきになるように反論するが、明日菜は軽く流してしまい木乃香達は思わず笑ってしまう。

確かに横島は限度は弁えてるつもりだろうが、そもそも横島の限度や常識が一般とずれてることは今更なのだ。

ちょっと目を離せばとんでもないことを仕出かしそうになるくせに、本人は慎ましく静かに生きたいと言うのだから滅茶苦茶な人だと改めて思う。


「帰って飲み直したりしたらダメですよ。」

「あとはさよさんよろしくです。」

横島はそのまま木乃香達を女子寮まで送ってさよとタマモと帰路に着くが、明日菜も夕映も木乃香も横島が帰ってからまたお酒を飲まないようにと再三注意して更にさよに後を頼み別れることになった。

なんというか自分は大人なんだけどなぁとため息混じりに呟く横島であるが、子供の方がまだ物分かりがいいと言われるだけである。

唯一注意しないのどかも別に横島を信頼してる訳ではなく心配してる様子なだけに、横島は自分はどう見られてるんだと今更ながらに思いながら帰っていく。


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