二年目の春・2

さて午後になると祭り会場では更に混雑していた。

周囲では麻帆良カレーの屋台や超包子の屋台も午前中より行列が出来ていて何処も忙しそうに働いている。


「はい、三百円のお釣になります。」

そして麻帆良亭の屋台では相変わらず途切れない行列を前に、坂本夫妻の妻と夕映・明日菜・さよの四人は二人一組となって販売を続けていた。

調理する横島達も大変だが目の前に行列が続き並ぶ人々の視線を集める販売もまた大変だった。


「熱いので気を付けて下さい。」

当然レジなどないので一応電卓を置いて一人がお金のやり取りをする間に、もう一人が注文した料理を渡す準備をするのだがこの場で食べていくならともかく他に持っていくには袋に入れたりと相応に手間がかかる。

今回食器は使い捨ての食器にしたので洗う手間はないものの、その分使い捨ての食器は柔らかいので人混みの中を運ぶには袋に入れたり蓋をしたりと気を使うのだ。

まあ坂本夫妻の妻はもちろんベテランなので焦って失敗などしないし、夕映達もさよもこの一年で鍛えられたので大きな失敗はないまま頑張っている。


「人気なのはどれなの?」

「今日のメニューだとサンドイッチとビーフシチューですね。」

ちなみにこの日売れ行きがいいのは麻帆良亭の看板メニューでもあったビーフシチューと、持ち帰りに便利なサンドイッチであった。

実はサンドイッチは定番の物以外に麻帆良亭のヒレカツや特性ハンバーグをサンドイッチにした物もあり、こちらがお手軽さも相まって人気のようである。

これらのサンドイッチは元々は学校に通う大学生なんかが昼食にと買っていたメニューだったらしい。

ただ洋食屋の本格的なサンドイッチは学生向けにと値段を押さえても相応にするので、現代だと学生が昼食にと買うには厳しくここしばらくは大人が家族への土産などに買う人がほとんどだったようだが。

先日パン屋の件でこだわったのは、このサンドイッチの為でもあった。


「すげーな、確かに肉が旨そう!」

それとサンドイッチがこの日人気なのは、すでに紙製のフードパックに入れられたサンドイッチの断面が見えるからでもあった。

ヒレカツは絶妙な火の通り加減が、ハンバーグは溢れださんばかりの肉汁が一目で分かるのが人気の理由だろう。

加えてこれらにはサンドイッチのヒレカツやハンバーグ用の特製タレの香りが更に食欲をそそり、他のメニューを買いに来た人もついでに買っていく人が跡を絶たない。


「じゃあ、これ二つずつちょうだい。」

結果として今日しか食べられないと言われると、限定品なんかに弱い人間の心理も相まって値段に関係なくどんどん売れていく。

それがすでに失われた店の味だと知り惜しむ者も多い。

同じ味の料理を麻帆良ホテルで食べれると教えても居るが、やはり人は本家本元の味を食べたいと思うのだろう。

賑やかな花見の場に相応しいサンドイッチや料理を人々は堪能することになる。





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