二年目の春・2

その後も麻帆良亭の屋台の営業は順調であった。

この日の開花状況は日当たりのいい場所では八分から満開に近く、後は六割から八割と残念ながら満開ではないが天気の良さも相まって祭り会場は混雑している。

風が吹き抜けるとまだ肌寒いのが現状だったが、カレーやシチューなどの温かい料理を食べるにはちょうどいいと言えるのかもしれない。


「おっ、姫が居るな。 姫は普通の料理も得意なのか?」

「ほんとだな。」

そんな麻帆良亭の屋台であるがこの日の特徴は麻帆良亭を知らない若い世代でも特に男性が多いことだろう。

元々現在の横島の店が女子中高生を中心にした客層なため、過去に行われた麻帆良亭の限定復活でも麻帆良亭を知らない若い世代は女性客が多かったのだ。


「お前ら知らないのか? 姫は元々料理が上手いんだぞ。 麻帆良カフェだと普通に料理も作ってるらしいしな。」

屋台の前にずらりと並ぶ行列の人々の中には待ち遠しいのか桜を見るよりも屋台の中を覗き込む人も少なくない。

一見すると気難しそうな麻帆良亭の店主を初めて見た者はその見た目から味を期待するが、同じく調理する横島や木乃香も意外に注目を集めていた。

特に大学生を中心に木乃香の愛称である姫がすっかり定着してしまい、中には名前を知らない者も居たりする。

相変わらず木乃香はパティシエとして有名なため、木乃香が普通に料理をする姿に驚く者も結構居るのだ。


「あのマスター見た目と違って恐いって聞いたんだが。」

「それはあれだろ? 自称ファンクラブの奴等の件だろ? あれは連中が悪いよ。 被害者のお嬢さんの友人にも嫌がらせされたりしたやつ結構居たらしいからな。」

一方横島に関しては相変わらず支離滅裂な噂があるが、有名どころで割と真実だとして流れてる噂は見た目と違って恐いという噂があるようである。

噂の根源は千鶴のストーカーを横島が潰してしまった一件だったが、非暴力ではあるが報道部を使ってストーカーを完全に殲滅した手口は高等部や大学部の男子には恐れられてもいた。

尤も横島本人は一計を案じて報道部の朝倉に頼んだだけで、後は報道部や天文部が自主的に動いたのだが端から見ると全て横島の仕業だと受け取られている。

特に麻帆良学園の場合は各学校や年代を越えた交流が盛んなことから、似たような形で勝手にファンやら親衛隊やら名乗る連中が少なからず居るので男子の側が受けた衝撃は大きかったらしい。

その影響もあってかある意味調子に乗っていたそんな連中は最近は大人しくなっていて、以前と変わらないのは三度の飯よりバトルが好きな古菲と闘う武闘派サークルの連中くらいだった。


「しかし本当にモテてるんだな。 くっそ! 一人であんなに独占するなよな!」

「おいおい、モテてるけどあれは中学生だぞ。 まだ子供じゃないか。 お前ロリコンか?」

ちなみに横島の好感度は男子にはやはりイマイチであり、木乃香達やさよを筆頭に客として来た女の子までも横島と親しげに話す姿を見ては嫉妬の籠った視線をぶつける者も多い。

中には一緒に花見をしようと誘ったりする女の子も多い為に余計にモテない男子の嫉妬を集めていたが。

ただまあ横島が親しいのは基本的に女子中高生なのでその評価が賛否両論あるのが現実だった。

そのまま横島が女子中高生に手を出してると素直に見ない大人の男子も相応に存在する。

まあそんな男子も決して横島を高く評価してるわけではないのだが。





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