二年目の春・2

春祭りの会場はまだ朝にも関わらず結構な人で賑わっていた。

屋台などはほとんど開いてないほど朝早い時間であるが、日中は混雑するのでそれを避けて朝に花見に来てる人も居るらしい。

まあ中には昨夜から花見と称して徹夜で飲んで撃沈したり、未だに飲んでる猛者もいるが。


「おっきいてんとだ!」

この日の麻帆良亭の営業場所は世界樹前広場の中央のイベント広場の一角だった。

正面には世界樹が高々とそびえ立っていてその下に特設のステージと客席が見える。

麻帆良亭の屋台は運動会などのイベントに使うテントで設営されていて、裏には店から食材を運んできた冷蔵車が臨時の冷蔵庫に代わりとこの日一日置かれる予定だ。

屋台の設営なんかは主催サークルの方でしてくれたらしく、朝早いにも関わらず何人かの人員が確認作業をしていた。

何が気に入ったのか他の屋台より一回りは大きなテントを見たタマモは少し興奮ぎみにテントの中に駆けていき、さよや明日菜が危ないからと慌てて追いかけていく。


「カレーの近くなんだな。」

場所的には麻帆良カレーの屋台の近くで付近には当然ながら超包子の屋台もあり、個別にあるテーブルの他にも自由に飲食出来るようにと共用のテーブルが幾つも置かれた飲食スペースもある。

付近の屋台もすでに開店準備をしてる頃で、横島は坂本夫妻に断りをいれて夕映とのどかと共に麻帆良カレーの屋台に挨拶に行ってから準備を始めた。


「おはようさん。 天気が良くて良かったな。 流石に客席にはテント設置出来なかったからさ。」

「おはようございます。 本当に良かったです。」

そのまま坂本夫妻や横島が開店準備を進める中で、夕映は主催サークルの人との打ち合わせを始めていた。

混雑が予想されるのでメニューや販売数は予め話し合いにより決めていて、主催サークルの側で製作したメニュー告知のポスターも今朝には祭り会場の入り口や屋台など複数箇所に貼って来ている。

それに屋台の前には先程から主催サークルの人がテーブルと椅子を運んで来ていて、その場で食べれるようにともしていた。

ただ混雑した場合にはどこにどう並ばせるかなど細かい話し合いはいろいろ必要である。

調理出来る人数の数から考えても行列が出来るのは確実なのだ。

加えて坂本夫妻の年齢を考慮しあまり無理をさせないようにとも、主催サークルと夕映は坂本夫妻に内密に話をしている。

屋台の営業時間も事前の話し合いにより昼過ぎと夕方には休憩を挟むことなども決めていて、事前に告知してはいるが本番では主催サークルや実行委員会から派遣された人員が行列で並ぶ人に説明する必要もあった。

正直横島と藤井はともかく年配者の坂本夫妻と少女達が主力なので相応に配慮は必要なのだ。

実は主催サークル側からは料理人の助っ人を頼んでみてはと提案していたが、坂本夫妻がそれは無理だと断っている。

ある程度の仕込みや下準備ならともかく、本格的な調理となるといくら腕のいい料理人でもすぐには対応出来ないというのが現実だった。

横島や木乃香達にしても何度か一緒に仕事をした経験があってこそであり、使い慣れた店の厨房ならいざ知らず全く未知の屋台では坂本夫妻も管理出来ないのが本音のようだ。



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