麻帆良祭への道
「もう一杯くれんかのう」
高畑と話しをした近右衛門は、何故かそのまま横島の店に来て酒を飲んでいた
今回の件がよほど堪えたのか、近右衛門はらしくないほかのスピードで酒を飲んでいる
「いいっすけど、飲み過ぎじゃないっすか? 木乃香ちゃんが心配しますよ」
無言のまま一升瓶の半分以上は一人で飲んだ近右衛門に、横島は流石にそろそろ止めた方がいいかと悩んでいた
「今日だけは飲ませてくれ。 ワシも何もかもが嫌になる時があるんじゃよ」
酒を出すのを渋る横島に近右衛門は暗い表情でぽつりと呟く
そのあまりの表情に横島は結局望むままに酒を出す
「なんか愚痴りたいなら聞きますよ。 ああ、聞いたことはすぐに忘れますしね」
いつになく荒れた様子の近右衛門に横島はたまらず声をかけてしまう
木乃香にはいろいろ世話になってるし、怪しい自分を何も言わずに受け入れてくれた近右衛門に横島は感謝もしている
せめて愚痴を聞くくらいはと声をかけていたのだ
「………ワシはこの年まで自分なりに精一杯働いて来たつもりじゃ。 少しでも麻帆良や世界が平和であるようにとのう」
横島の言葉に近右衛門は溜まったモノを吐き出すかのように口を開くが、その内容は表ではなく裏の苦労だった
近右衛門が裏の話を始めたことに驚く横島だったが、顔色一つ変えずに無言で聞き続ける
「君ならば分かると思うが、表と裏の共存は端から見るより楽ではない。 特に上に行けば上に行くほどのう。 しかしワシの苦労は一番分かって欲しかった者にすら伝わってなかった。 その事実が悲しくてのう」
魔法という言葉こそ出て来ないが、近右衛門は横島が内容を理解してるのを知っていてなお話していた
暗黙の了解の形で裏にはお互いに触れなかった横島と近右衛門だったが、あまりに溜まりに溜まったモノについ口に出してしまったようだ
近右衛門は自分の残り少ない時間を奪われた事実にも怒りや悲しみを感じていたが、それよりも自分の苦労を一番理解しているはずの高畑が理解してなかった事実は余計にショックだった
「理想と現実は違いますからね。 人が一人で抱えることの出来る荷物なんかたかが知れてます。 だからこそ、どうしても選ばなきゃならない時があるんですよね」
しばしの沈黙の後、横島は表情を変えぬまま言葉を選びつつ声をかける
近右衛門の苦労がどれほどだったか、横島はそれを少しは感じていた
理想と現実の狭間で長年苦しみながら生きてきた近右衛門の心の強さに、横島はただただ敬服するしかない
「いっそ全てを放り出そうかとも思ったが出来んかった。 ワシを信じて着いて来てくれる者も多いからのう」
実は高畑と話しをしていた時に近右衛門は、高畑に麻帆良学園学園長と関東魔法協会理事長の職を譲るから好きにしろと言おうかとも考えていた
命を賭けて守ると言うならば、やってみればいいと……
しかしそれをやると関東魔法協会のみならず、関西や日本の人々にも迷惑をかける結果になる可能性があった
それに刀子のように近右衛門を信じて頑張ってる者達も多く、そういった者達を見捨てれなかったのだ
高畑と話しをした近右衛門は、何故かそのまま横島の店に来て酒を飲んでいた
今回の件がよほど堪えたのか、近右衛門はらしくないほかのスピードで酒を飲んでいる
「いいっすけど、飲み過ぎじゃないっすか? 木乃香ちゃんが心配しますよ」
無言のまま一升瓶の半分以上は一人で飲んだ近右衛門に、横島は流石にそろそろ止めた方がいいかと悩んでいた
「今日だけは飲ませてくれ。 ワシも何もかもが嫌になる時があるんじゃよ」
酒を出すのを渋る横島に近右衛門は暗い表情でぽつりと呟く
そのあまりの表情に横島は結局望むままに酒を出す
「なんか愚痴りたいなら聞きますよ。 ああ、聞いたことはすぐに忘れますしね」
いつになく荒れた様子の近右衛門に横島はたまらず声をかけてしまう
木乃香にはいろいろ世話になってるし、怪しい自分を何も言わずに受け入れてくれた近右衛門に横島は感謝もしている
せめて愚痴を聞くくらいはと声をかけていたのだ
「………ワシはこの年まで自分なりに精一杯働いて来たつもりじゃ。 少しでも麻帆良や世界が平和であるようにとのう」
横島の言葉に近右衛門は溜まったモノを吐き出すかのように口を開くが、その内容は表ではなく裏の苦労だった
近右衛門が裏の話を始めたことに驚く横島だったが、顔色一つ変えずに無言で聞き続ける
「君ならば分かると思うが、表と裏の共存は端から見るより楽ではない。 特に上に行けば上に行くほどのう。 しかしワシの苦労は一番分かって欲しかった者にすら伝わってなかった。 その事実が悲しくてのう」
魔法という言葉こそ出て来ないが、近右衛門は横島が内容を理解してるのを知っていてなお話していた
暗黙の了解の形で裏にはお互いに触れなかった横島と近右衛門だったが、あまりに溜まりに溜まったモノについ口に出してしまったようだ
近右衛門は自分の残り少ない時間を奪われた事実にも怒りや悲しみを感じていたが、それよりも自分の苦労を一番理解しているはずの高畑が理解してなかった事実は余計にショックだった
「理想と現実は違いますからね。 人が一人で抱えることの出来る荷物なんかたかが知れてます。 だからこそ、どうしても選ばなきゃならない時があるんですよね」
しばしの沈黙の後、横島は表情を変えぬまま言葉を選びつつ声をかける
近右衛門の苦労がどれほどだったか、横島はそれを少しは感じていた
理想と現実の狭間で長年苦しみながら生きてきた近右衛門の心の強さに、横島はただただ敬服するしかない
「いっそ全てを放り出そうかとも思ったが出来んかった。 ワシを信じて着いて来てくれる者も多いからのう」
実は高畑と話しをしていた時に近右衛門は、高畑に麻帆良学園学園長と関東魔法協会理事長の職を譲るから好きにしろと言おうかとも考えていた
命を賭けて守ると言うならば、やってみればいいと……
しかしそれをやると関東魔法協会のみならず、関西や日本の人々にも迷惑をかける結果になる可能性があった
それに刀子のように近右衛門を信じて頑張ってる者達も多く、そういった者達を見捨てれなかったのだ