二年目の春・2

一方横島の店ではこの日も前日に続き数日後に控えた麻帆良亭のイベントに向けた仕込みが行われていた。

春休み中ということで相変わらず店内は賑やかで横島自身も店内の騒ぎに加わることも珍しくはないが、坂本夫妻も流石に慣れて来たからか驚くことなく見守っている。


「うわ~、タマちゃん似合うよ! プロのミュージシャンみたい!!」

そんなこの日地下室では美砂達三人とタマモが楽器の練習をしていたが、この日はタマモでも使える子供用のギターが届いていた。

そもそも一緒にバンドをやると言ったタマモであるが具体的な役割を決める前にタマモにバンドの意味や楽器の種類を教えることから始まった結果、美砂達が練習を初めてからしばらくは見守る日々が続いていたタマモであるが最終的にはギターをやりたいということになったのだ。

本来の歴史では亜子を加えはずだった美砂達のバンドは何故かタマモと横島を加えることで話が進んでいる。


「わたしもれんしゅうがんばる!」

目指せ麻帆良祭ということで実質的に三ヶ月を切っているので正直タマモが本番までにギターを弾けるようになるかは分からないが、実は美砂達も楽器はほとんど素人なので横島が暇な時間に指導してなんとか形にしようとしているところだった。

仮にタマモはギターを弾けなくても、可愛いからギターを持たせて弾いてるふりをするだけでもいいのではということになっている。

ちなみに美砂達も本来の歴史より練習期間が短かったりするが。

本来は昨年の夏休みくらいからぼちぼち練習を始めるはずが、横島と関わるようになった影響からかこの世界の美砂達が練習を始めたのは今月に入ってからであった。

ただ本来の歴史にはない横島という指導者が居るので、その点に関しては有利と言えば有利だが。


「可愛いから何やっても絵になるのよね。」

そのままさっそく自分のギターで練習を始めるタマモを美砂達三人は付きっきりで見守り優しく教えていくが、タマモは真剣な表情でギターのコードなどの基礎を覚えようとしている。

ギターの場合は慣れるまでは指で弦の押さえ方などかなり大変なのだが、タマモは弱音を吐くこともなく練習を続けていく。

その姿は幼さの中にも確かな芯の強さのようなものが見えていて、美砂達はふとこのままタマモが大きくなればどんな大人になるのだろうと思いを巡らしていた。


「私達も負けてられないわね!」

そしてタマモに感化されるように美砂達は自分の練習にも力を入れていき、四人は明日菜がお昼ご飯だと呼びに来るまで続けることになる。



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