二年目の春

さて卒業式を終えた中等部では春休みまであと少しとなっているが、三月も下旬に入ると麻帆良の街では春祭りの準備で賑わいを見せ始めた。

桜通りを筆頭に幾つかの桜の名所が麻帆良にも存在している麻帆良であるが、昨年同様に世界樹前広場をメイン会場にして桜祭りが行われる。

昨年は木乃香と明日菜と純粋に花見に行っただけの横島だが、今年は桜祭りのイベントとして麻帆良亭の限定復活が計画されてる。

尤も打ち合わせや準備は坂本夫妻と夕映達が行ってるので横島は相変わらずタッチしてなかったが。


「それじゃ種と苗を植えていきましょうね。」

「うん!」

そんなこの日は坂本夫妻が春祭りの打ち合わせにと麻帆良を訪れていて、夫は夕映・のどか・あやかと一緒に打ち合わせにと大学部の方へ出掛けたが妻は横島・さよ・タマモと一緒に庭の花壇や家庭菜園の指導をしていた。

タマモがさよや木乃香達と相談して植えたい花や野菜をリストアップして、坂本夫妻の妻が育てる難易度や季節を考慮して選んだ物を植えることになっている。

服装はさよは学校のジャージだったが、タマモは作業用に汚れてもいいジーンズのオーバーオールを着ておりこの服は実は前回来た時に坂本夫妻から貰った服であった。

坂本夫妻の妻もそれほど難しいことを教えてる訳ではないが、ちょっとした植え方のコツや肥料の種類や量などはこの庭を熟知していればこそのものだろう。

植える場所に関しても結構広い庭なので日光の当たる時間が異なるなど、意外に横島も知らないコツがいくつもあるらしい。


「みみずさんがいるよ。」

「あら、本当ね。 ミミズは土を豊かにしてくれるから優しくしなきゃダメよ。」

途中苗を植える穴を掘っているとミミズが現れてさよが軽く悲鳴をあげるも、タマモは特に苦手意識はないらしく穴を掘っていたシャベルの先でツンツンと突っついている。

坂本夫妻の妻はそんなタマモにミミズの役割を教えると、タマモはミミズを間違って踏まないようにと畑の中に移動させてあげていた。


「そうよ。 そうすればきっとよく育つわ。」

その後も横島達は坂本夫妻の妻から教わりながら花や野菜の種や苗を植えていく。



一方春祭りのイベントの打ち合わせに行った夫と夕映達であるが、こちらは参加場所の確認から始まり細々とした話し合いをしている。

メニューに関しては坂本夫妻に一任されてはいるが、リクエストとしての意見は主催サークルからも出されていてその調整も必要だった。

食材は雪広グループが提供する形に正式に決まり、こちらは雪広グループ意外の食材に関しても用意するとのことで仕入れに関しては比較的楽のようだ。


「しかし、本当にいいのか? 私としては助かるが。」

「私達としては問題ないですよ。 それに横島さんはお祭り好きですから。」

ただ仕込みに関してはやはり全て野外でするのは無理なので横島の店で行い、当日の調理は坂本夫妻に弟子の藤井と横島達も総動員されることになる。

他にも主催サークルの側からも手伝いの人員は出すらしいが、正直なところ作る量が多く特に調理を任せられる横島と木乃香が手伝わなければ計画自体が頓挫しそうなほどだった。

坂本夫妻の夫としては店を休んで協力させるのは気が引けるようで何度か確認しているが、ここまで来て協力しないとう選択肢は横島達の誰一人持ってない。


「麻帆良亭の出店は今年の春祭りの目玉ですから。 実行委員会の方からも混雑に備えてボランティアを何人か寄越してくれるそうです。」

そんな坂本夫妻の夫には若干の戸惑いがあるようだが、麻帆良亭の出店は今年の春祭りの目玉としてすでに告知されポスターにも印刷されて麻帆良市内各所に掲示されている。

麻帆良祭ほとの規模がない春祭りだけに麻帆良亭の出店が第一級の目玉として扱われているらしい。


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