二年目の春

一方この日の茶々丸はエヴァ宅で家事をしていた。

相変わらず暇そうなエヴァとチャチャゼロはテレビゲームをして遊んでいるが、茶々丸は炊事洗濯などそれなりにやることがある。

その一方で茶々丸は超鈴音の件に関する問題が頭から離れなかった。

出来れば平和的に誰もが納得する道を探したいが、残念ながらそんな方法がないから対立することをもちろん茶々丸は理解している。

ただ現実問題として超の計画を防ぐことがさほど難しくないことは今更考えるまでもない。

茶々丸はずいぶん前から超鈴音が横島をひどく気にしているという話を葉加瀬から何度か聞いたことがあった。

葉加瀬としては超の考えすぎだと危機感を持ってなかったからこそ愚痴るように茶々丸に漏らしたのだろうが、今にして思えば超の考えは正しかったのだと理解する。


「問題の根底にあるのは何なのでしょう?」

もしかすると超鈴音の戦いはすでに始まってるのかもしれないと漠然とだが思う茶々丸であるが、そもそもの問題の根底にあるものを自分は知らないことに何とも言えない心境になる。

きっと横島やエヴァは知っているのだろうと思うが、茶々丸自身それを安易に聞いていいのかまだ迷いがあった。


《世界はそんなに簡単じゃない》

あの日異空間アジトで横島が語った言葉を噛み締めるように茶々丸は深まる疑問を抱えながら苦悩することになる。



同じ頃刀子は土曜ではあるが学校で仕事をしていた。

時期的に終業式も近く忙しいという訳ではないが、細々とした仕事は裏表問わずある。


「相変わらず頭が痛くなってくるわね。」

特に最重要機密の部類に入る横島側からの情報は逐一見ておくように近右衛門から言われており、中でも秘密結社完全なる世界の最新の動向など魔法協会にも隠さねばならない一部の機密は魔法協会では現時点で近右衛門と刀子のみで対応していた。

実際には土偶羅が動いてることもありこれらの情報は本当に頭に入れておくだけであるが、それにしても一介の剣士であり教師でしかない刀子にとって大国のトップ以上の情報を見るのは少なからず精神的な負担になっている。

尤も刀子の負担軽減の意味では授業の資料作成などで土偶羅が密かに手伝っているので、全体として仕事の負担は軽減されつつあるが。


「私には人の上に立つのはムリね。」

この日刀子が気になり熱心に見ていたのはクルト・ゲーデルに関する最新情報で、刀子からすると本当によくやるとしか思えない人物である。

ある意味少し前の高畑と同類であり周りが見えてないのではと思うが、タチが悪いのは高畑と違い自身の目的の為に他人を躊躇なく犠牲にしようとするところだろう。

無論その先には多くの人々が救われる未来があるのかもしれないが、誰を救い誰を犠牲にするかはクルトの胸ひとつなのだ。

ただ客観的に見ると現状の魔法世界では他にたいした方法がないのも事実である。

自分は平和な国に生まれて良かったと、そう思う以外にどうしようもなかった。


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