二年目の春

さて二泊した今回の異空間アジト訪問はこの日で終わりとなり夜には麻帆良に戻ることになっていた。

まあ実際には何日滞在しても元の日時に帰れるのでいくら滞在してもいいのだが、結果として休みボケになる前に帰ろうということになっている。

刹那なんかは元の時間に戻ったことで唖然としていたが。


「たこさんだ!」

「今日は何にしようか?」

そして翌日はホワイトデーの次の日となる三月十五日であった。

この日は土曜ということもあり木乃香達が朝からバイトに来てくれるので、横島は日替わりメニューを何にしようかと悩みながら朝市や市場を回っていた。

平日の日中は相変わらず横島とタマモしか居ないので手のかかるメニューが無理なだけに、横島としても土日の日替わりメニューは何を作るか楽しみにしている。


「おう、あんちゃんか。 山菜はどうだ? 天然もんだから灰汁は強いが上手いぞ。」

「山菜っすか。 確かにモノはいいっすね。 下処理すれば明日には使えるな。」

朝市や市場でもすっかり顔馴染みが増えた横島とタマモはここでも有名人だった。

まあ昨年はいろいろ派手にやらかした横島なだけに流石に顔が知れたということもあるが、横島がまともに仕入れをするようになって半年は軽く過ぎているので個別に贔屓の店もそれなりにある。

品物を選ぶ目が確かなのも知れているので横島が訪れるとオススメの商品をアピールされることも多い。


「ほら、お嬢ちゃん。 おいしいよ。」

「ワーイ、ありがとう!」

ちなみにタマモはここでもいろんなお店を楽しげに見て回っては、果物や野菜に魚介に至るまでいろいろな物を食べさせてもらっていた。

当初は横島と一緒に買うか悩んだ物を味見していた程度だったが、顔馴染み増えるに従って買わない物まで貰っている。

早朝の朝市や市場なだけにタマモのような小さな子は珍しく、売り込みというよりは子供や孫を可愛がるようにタマモに試食をさせる人が結構いるのだ。


「おっし、帰るか。」

最終的にタマモが試食をして美味しいと喜んだ物まで買ったりして少し余分な出費をしつつ帰ることになるが、まあこれもいつものことである。



「さよちゃん、おはようさん。」

「木乃香さん、おはようございます。」

一方店ではさよが店外の掃除などして留守番していたが、早朝にも関わらず木乃香が来ていた。

この日は木乃香は正式にはバイトは休みであったが、早朝の仕込みは料理の経験を積む貴重な機会だけに自主的に手伝いに来ている。

特にスイーツ関連は体育祭の影響で実力以上の評価をされているだけに技術のレベルアップに余念がない。

昨年末には学園主催のクリスマスパーティの件で新堂と一緒に調理をする機会があり、彼女が今も努力を惜しまないというのを知ったからでもあるが。

相変わらずパティシエになる気は今のところないが、せめて新堂に恥をかかせないようにはなりたいとも思うようである。



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