二年目の春

「これは……。」

「これほど簡単に……。」

そのまま横島の指導による基礎的な修行は続くが途中からは高畑も志願して参加していた。

横島としては特別な指導はしてないつもりであるが、そもそも横島のこの手の技術や指導法はほとんど小竜姫から継承したものになる。

本来ならば妙神山という聖地で認められた者でなければ受けられないレベルの修行であり、刀子と刹那は短時間で僅かながらも自覚出来るほど気の扱いがよくなるのを感じ驚いていた。


「筋がいいっすね。 その調子で。」

「横島さんって、本当に人に教えるの上手いのよね。」

ただ横島自身は相変わらず抜けていて、そこまで貴重な修行だという自覚がないので木乃香達に料理や勉強を教えてるのと同じ感覚で指導している。

加えて同じく短時間での技術の向上に驚く刀子と刹那を見ても驚く様子が全くないのは、日頃から横島の指導に慣れてる少女達である。

木乃香の料理に明日菜の勉強など横島が指導をして変わった経験を間近で見てきた少女達にとって、多少の技術の向上など当たり前だとすら思えるらしい。


「木のお風呂なんて珍しいね。」

「うん。」

そして刀子達が修行している最中であるが人数が多い関係で少女達は順番にお風呂に入っていた。

ログハウスは西洋風の建物であるがお風呂は浴槽から全て木材で造られた風呂はどちらかと言えば日本式の風呂になる。

広さは日本の一般家庭のお風呂の倍以上は軽くあり三~四人は楽々入れる広さで、この日一番風呂に入っていたのは夕映とのどかでタマモと一緒に入っていた。


「こうしてると今が春だと思えませんね。」

「というか一日の移動にしては気温差が激しすぎるです。」

全面木材で出来てるお風呂は木の温もりを感じるようで心地良く、浴室にある大きな窓からは一面の雪景色と綺麗な月が見えている。

異空間アジトも季節は麻帆良とほぼ同じなので一応春のはずだが、一面の雪景色を見ているとそれを忘れそうになる。

それに今日は朝はハワイで午前中はアメリカで午後はスイスとあまりに気候が違うところを移動したので、夕映は少しばかり感覚が狂いそうだった。


「あしたはゆきがっせんしたい!」

「そうだね。」

ただまあそんな気温の変化など全く気にもしないタマモは明日は何をしようかとワクワクさせていて、二人の笑みを誘うことになる。

今日初めて見た横島の戦う力のことなど気になることはいろいろあるが、現状ではタマモと一緒に遊ぶこと同じくらい大切なことだった。

日頃は子供とは思えぬほど頑張り屋であるタマモの為には、こういう機会には思う存分遊んであげようと思うようである。



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