二年目の春

夜のログハウスではランプの明かりを照明にしての夕食となる。

実は電気も通じてるので普通の照明もあったりするが、ランプの類も常備していてせっかくだからと夕食はランプの明かりですることにしたらしい。

ランプの光は少し薄暗くも感じるが暖炉の炎の明るさをより引き立てるようで、現代日本では意外にお目にかかれない雰囲気であった。

窓の外ではチラチラと雪が降り始めていて、マッターホルンは雲に隠れ始めている。

どこかおとぎ話の国にでも来たような光景であるが、室内では横島が夕食の支度をしてる間は少女達の魔法の練習をしている声が響いていた。


「あっ、テレビで見たことある!!」

そして夕食になるがメニューはラクレットを中心に幾つかの料理を用意していて、厳密には全てがスイス料理ではなく近隣のヨーロッパ料理で統一した物になる。

ただ少女達は円形のチーズを半分に切り暖炉の薪の炎で溶かして食べるラクレットの見た目に少し驚き楽しんでいた。

テレビのグルメ番組などで印象に残った者も多いらしい。


「あちっ!?」

「ほら、慌てて食べたら火傷するわよ。」

ラクレットは出来たてが美味しい料理であるが、焦げ目が付くほど溶けたチーズは慌てて食べると危険である。

タマモやさよなんかがそれを知ってか知らずか、熱々のチーズが溶けたラクレットを頬張ろうとして熱さにやられていたりするが。

しかしまあこの日は基本的に素朴な料理が中心であり、全体としては素材の味を楽しむ夕食となる。


「そんじゃ、気を開放して下さい。 ああ、そんなに多くなくていいんで。」

食後はまったりとした時間を過ごしたかった横島であるが、当然ながら午後に刀子と約束をした修行の相手をすることになってしまう。

ただ霊動シミュレーターにまでいくのは面倒だったらしく、ログハウス内で基本的な修行にしようと提案して受け入れれていた。


「気の流れに無駄が多いっすよ。 もっと具体的に経絡の流れを意識して下さい。」

ログハウスの中で座禅を組み修行する二人の姿は何処か違和感を感じなくもないが、横島は始めたからには真面目に指導をしていく。

正直言えば刀子も刹那も人としては基本はマスターしているし、十分修行もしていて大きな問題などない。

しかしより高いレベルから見ると細かな改善点がないかと言えばそうではないし、若さ故に力押しな部分などもあった。


「今回は修行らしい修行ですね。」

「まあな。 二人は神鳴流として完成されつつあるし、俺が教えるのは基礎的ものか実戦を想定した応用くらいだからな。」

少女達が興味深げに見守る中で横島は、二人に具体的な力の流れをイメージとして見せてやったり気の流れを直接修正してやったりしながら修行は続く。

まあ当然ながらエヴァと高畑は他人の気の流れに介入して修正する横島に多少驚きを感じていたが、それは今更口にするほどではないらしく静かに見守っている。



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