二年目の春

それから二時間ほど過ぎると初心者組も最低限は滑れるようになっていた。

最初は魔法を使わねば滑れなかったエヴァもそれは同様でコツを掴むといち早く滑れるようになっている。

流石に年の功ともいうべきなのだろうが同じ初心者組の少女達より早く滑れるようになったのがよほど嬉しかったのか、独特の高笑いをしながら滑れるようになったことを自慢していた。


「あの高笑いエヴァちゃんから真似したのね。」

そんな高笑いするエヴァの隣では何故かタマモが同じように高笑いをしている。

まるで姉妹のように高笑いする姿は妙に微笑ましく、明日菜はタマモの高笑いがエヴァを真似したものなのだと気付く。

実はタマモは以前から時々高笑いをすることがあり、誰が教えたのかと少女達の間で少し話題になっていたのだ。

正直タマモと並んで高笑いするエヴァの姿に魔法世界で恐れられてる魔王の威厳なんて欠片もない。

エヴァがそれに気付いているのかは分からないが、まあ二人とも楽しそうなので特に突っ込む者も居なかった。


「かまくらをつくろう!」

その後はしばらく自由時間にしようということになると少女達はそれぞれバラバラに行動するが、タマモはさよ・明日菜・夕映・のどか・桜子など休憩しようとしていた少女達を誘いかまくらを作り始める。

その中には横島宅のハニワ兵や近くに居たハニワ兵なんかも加わり、人海戦術であっという間にスキー場の隅にかまくら用の小高い山が出来上がる。


「ねえ、なんで水なんてかけるの?」

「ぽー!」

途中からかまくら作りの指揮は現地のハニワ兵がしていたが、彼は雪を固める為にと時々水をかけて少女達を驚かせていた。

どうも雪質が水分が少ないパウダースノーなだけにそのままではかまくら作りには向かないらしい。

最後に穴を掘って内部をくり貫けば出来上がるが、それは観光地にあるようなかなり本格的なかまくらで大人四~五人は入れるようになっている。


「おいおい、随分でかいかまくら作ったな。」

「ほんまや。」

そのまま完成したかまくらに入って意外に暖かい内部に感動の声を上げていたタマモ達の元に、横島と木乃香とのどかが何体かのハニワ兵と一緒におやつにと作った甘酒とチーズフォンデュの鍋を持って来ていた。

当初は甘酒とお汁粉にしようかと考えていた横島であるが、両方甘い物よりはということで一応現地の名物であるチーズフォンデュにしようかということになったらしい。

横島達と一緒に来たハニワ兵は椅子やテーブルなどを運びかまくらの中と外に並べていく。

大きなかまくらと椅子やテーブルはゲレンデからもよく見えるようで、ゲレンデで滑っていた少女達や見知らぬハニワ兵達が何をしてるのかとすぐに集まってくる。


「うわ~、美味しそう!」

「いただきまーす!」

冷えた体に温かい甘酒やチーズフォンデュは格別のようで少女達やハニワ兵達はフーフー・ハフハフ言いながら堪能するが、予想以上に人が集まると当然食べ物は足りなくなり横島は木乃香達とスキー場のハニワ兵と共に慌てて追加で温かい料理と飲み物を作ることになってしまう。






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