二年目の春

「ゆきだ!」

「あれがマッターホルンなんだぁ。」

その後高畑達を残した一行は雪が見たいとのタマモの希望で雪のある場所に横島の瞬間移動で移動するが、見渡す限りの大自然と何処かで見たことがある美しい山が印象的な場所だった。

そこは地球でいえばヨーロッパのスイスイタリア国境にあるマッターホルンの麓の町のスキー場である。

異空間アジト内には幾つかのスキー場があるらしいが、この日天気が良くて景色が綺麗に見えるこの場所をハニワ兵に勧められて来ていた。

テレビや雑誌などでしか見たことがないマッターホルンに感動する少女達であるが、移動方法が瞬間移動なのでイマイチ情緒がないなと感じる者もいる。

旅の楽しみは移動にもあるんだとしみじみと感じる少女達も居るが、タマモは到着早々にふかふかのパウダースノーにダイブして全身雪まみれになっていた。


「ああ、もう着替えてからじゃないと風邪引いちゃうわよ。」

楽しげに笑顔を見せつつ雪の中をごろごろと寝転がりひょっこりと顔を出すタマモを明日菜は抱き上げると、雪を払ってやり早く着替えさせようとスキー場の施設の中に連れていく。

タマモとしては早く遊びたいらしくそのままでも大丈夫だと言うものの、明日菜は聞く耳もたず一足先に連絡を貰っていたハニワ兵が用意した防寒着に着替えさせる。


「タマモ、あんま遠くに行くなよ。」

「うん!」

そのまま防寒着を着込み完全防備となったタマモは、待ちきれないと言わんばかりにチャチャゼロを引っ張るように連れて外に飛び出して行った。

横島はチャチャゼロも一緒だからとあまり心配してないが、明日菜とさよは心配らしく自分も着替えると慌ててタマモを追っかけていく。



「高畑先生、気合い入ってますね。」

一方霊動シミュレーターに残った刹那はシミュレーターに挑戦する高畑の気合いが入った様子を興味深げに見つめていた。

麻帆良でも屈指の実力を持つ高畑であるが、意外なことにそんな彼の本気を見たことある者は少なく修行姿を見たことがある者は全く居ない。

一部では高畑は才能ある英雄だからと、自分達一般人とは違うと口にする魔法関係者もいるほどである。


「あれだけ実力差を見せつけられたらねぇ。」

そんな高畑が現在戦っているのは過去に赤き翼により倒されたアーウェルンクスシリーズの一体であるが、こちらはデータ不足により今までで一番再現率が低い。

とは言っても戦闘に関する再現に関してはそれなりで、対アーウェルンクスとの戦闘訓練には十分使えるものではあるが。

一般人に近い少女達が居なくなったからか鬼気迫る様子で戦う高畑に刀子と刹那の反応はそれぞれ違うが、刹那は高畑がそこまですることに驚きを感じている一方刀子は横島との実力差故にやる気を出したのだろうと思っている。

圧倒的な実力差を見せられて心が折れないその精神力が高畑が英雄と呼ばれるのだろうと思うようだ。



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