二年目の春

「これは力を融合させるんじゃなくて具体的には共鳴させてるんです。 俺の切り札とも言える技のアレンジっすよ。 これなら高畑先生にも理論的には得られる力ですしね。」

その圧倒的な力は高畑が知る誰よりも確実に上であり高畑は体が硬直したまま動けなかった。

この場に居るだけで体が魂が今にも敗北を認めて意識を失いそうにすらなるが、それでもなお立ち続けられるのは高畑の努力の賜物だろう。

具体的には高畑の現在の力を百とするならば横島は数万といったところか。

ご存知だろうがこの力の共鳴に関しては本来は異なる魂を共鳴させる美神令子との同期合体が始まりであり、横島はかつて神魔の最高指導者との最終決戦を前に自身が継承した複数の魂の力を本当に一つにするために行き着いた結論だった。

その力は最早存在するだけで世界に影響を与えたほどであり横島自身にも少なからずリスクはあったが、今回はそれを高畑にも可能なように咸卦法を元にアレンジしたものになる。


「横島君……。」

そして高畑は横島が切り札と自ら語る技を見せたことに驚きながらも、その圧倒的な力に限界を感じ始めていた自身に新たな希望を見出だしていた。

無論それは困難という言葉すらも生易しいもので高畑自身が同じレベルに到達出来るとはとても思えない。

だが可能性がゼロかと言われるとそれはまた違うはずなのだ。


「そんじゃ、最後にもう一度手合わせして終わりますか?」

最終的に高畑は共鳴状態の横島とラストとして手合わせをして終わるが、高畑の豪殺居合い拳ですら防ぐことすら必要なく何をしても無傷である。

それはかつて圧倒的な力の斉天大聖と対戦した横島自身を思い出させる光景だった。



「おかえり~!」

「こうして見てるとやっぱり強そうに見えないのにね。」

その後コントロール室に戻った横島は瞳を輝かせ駆け寄ったタマモを溺愛した様子で抱き上げてやると、少女達が食べていたお菓子を食べて一段落することになる。

なんというかその姿は先程までの横島と別人のようなギャップがあり、少し不思議そうに見てる者も中には居るが横島自身は全く気にしてないらしい。


「力の共鳴か。 おとぎ話のような話だな。」

「どんな力にもそれぞれ独自の波長があるからな。 同じ力でも個人には個人の波長もある。 それを共鳴させれば爆発的な力が得られるんだよ。 正直普通の人間である高畑先生がどこまで会得出来るかは俺にもわからんけど。」

一方横島に対する見方が一番変わったのは刹那だった。

コントロール室からは直接横島の力は感じられないが、高畑を圧倒した姿に衝撃を通り越して信じられないといった様子だ。

そしてエヴァは今までに自身の概念にはなかった力の共鳴に興味を示すも、あれが横島以外に出来るのかは少々疑問も感じてるらしい。

理屈を聞くとなんとなく理解はが出来るが、目に見えない力の波長をどうやって共鳴させるほど合わせるのかは検討もつかないといったところだろう。

ただまあ横島も高畑が力の共鳴を会得出来るとは思ってなく、何かのきっかけになればいいとしか考えてなかったが。

実は力の共鳴は肉体や霊体への負担も大きいので特に普通の人間は早々乱発出来ないものでもある。

まあ高畑に才能と運があれば、横島ほどでなくとも現状の数倍程度の共鳴ならば可能かもしれないとは横島も思う。

正直なところ力の共鳴までいくと才能だけでも努力だけでも不可能なのが現実だった。


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