二年目の春

「おつかれ。 おかげで魔法のいいデータが取れたよ。」

シミュレーターが作り出した偽者とはいえ因縁の相手であるナギに勝ったエヴァは、コントロール室に戻って来ると機嫌が良かった。

別に過去にした件を引きずってる訳ではないが、いろいろ思うところがあったことも確かで少しは気が晴れたのが本音のようだ。


「これはなかなかいいな。 登録する魔法を増やせないか?」

「何の魔法がいいか決めてくれれば、新規にプログラム出来るぞ。」

今回横島はエヴァの魔法の直接のデータが取れたことでその情報を土偶羅が管理する異空間アジトのメインシステムに送っていたが、エヴァはそれに関しては特に興味はないようで軽く流すが代わりに腕時計型通信機の魔法の機能の追加を要求する。

正直なところ横島としてはあまり深く考えずに元々は木乃香達の護身用にと通信機に防御魔法を組み込んだのだが、それをエヴァがシミュレーターで切り札のように使うとは思ってなかった。

単純に考えても元々強いエヴァの実力を更に底上げする結果となっている。


「つまりエヴァちゃんが世界一強い魔法使いってこと?」

「世界一かは分からないけど世界最強クラスの実力はあるよ。 僕や葛葉さんじゃ多分二人でも勝てないからね。」

一方エヴァの戦いに衝撃を受けていた少女達は、今回魔法の凄さを改めて理解した者が多かった。

元々同時期に知った横島の非常識さと比べてたいしたことないので、ちょっと便利な技術程度の認識しかなかったが改めて見たあとではその認識が幾分変化している。

尤も自分達が同じようになれるとはとても思えないので、ある意味他人事のように受け止めていたが。


「次はマスターだね!」

「えっ、俺はやらんぞ。 面倒だし。」

そしてエヴァの戦いが終わり一段落すると次に霊動シミュレーターに挑戦するのは当然横島だと周囲は見ていたが、横島は相変わらずやる気がないらしくビックリした様子で否定する。

基本的に修行が好きじゃないというのもない訳ではないが、それより気が進まないのはみんなに見られながら戦うということだった。


「横島君、私は出来れば貴方の実力を見たいわ。 貴方やエヴァンジェリンさんならば直接見なくても実力が分かるんでしょうけど、私は分からないもの。」

まさか自分でこんな施設に連れてきておいて本人はやらないなんてあり得ないと少女達は不満を口にし始めるが、意外なことに刀子もまた横島の戦いが見たいと説得する側に回る。

ただこの件に関しては万が一の際には共闘しなければならないので、その前に横島の実力を最低限把握しておきたいという現実的な理由もあった。

正直なところ先日のエヴァとの会話で横島の実力がエヴァより上だとは知ったが、戦い方や能力など共に戦うならば把握しておきたいことは幾つもある。

刀子自身も神鳴流としてそれなりの実力があると自負するのでぶっつけ本番でもやれないこともなかったが、事前に時間があるならば把握し共に戦う訓練もしたいのが本音だ。


「別に手の内を全て晒せと言ってる訳でもないし、やってやればいいではないか。 だいたい貴様は出し惜しみし過ぎだ。」

高畑や雪広姉妹に茶々丸など一応中立な者は静かに見守っているが、今回は日頃慎重な木乃香達もが横島の戦いを見たいと告げる。

最終的に少女達に甘く押しに弱い横島は困った様子で迷い始めると、エヴァが呆れた様子で少女達の味方をしてだめ押しをしてしまう。

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