二年目の春

さて茶々丸とチャチャゼロの相手は先程刀子と刹那がビッグイーターに続き戦った低レベルの鬼であった。

これに関してはプログラム上の経験はあれど実戦経験がない茶々丸に配慮した形であり、普通のアンドロイドやガイノイドと違い魂を持つ茶々丸に横島が慎重に考えたためである。


「うわ、チャチャゼロ戦いなれてるな。」

そんな二人の戦いであるが横島が最初に反応したのはチャチャゼロの戦い慣れた姿だった。

武術のような形ある動きではなく、あくまで実戦における戦いやすさというか殺しやすさを追求したようなチャチャゼロの動きに横島は素直に感心する。

端から見ると舞うように敵を倒す姿には横島のみならず少女達も驚きタマモはパチパチと拍手していた。



そして一方の茶々丸は素手による格闘での戦闘を行っているが、こちらは横島の表情が少し渋い。


「茶々丸は元々戦闘を目的にしてはないからな。」

横島はとりあえず無言で今回も二人のデータを解析していたが、横島の表情に気付いたエヴァがあんなものだろうと語る。

ただ現状で茶々丸の戦闘技術は客観的に見て悪くはなく、一般人や一般的な魔法関係者程度ならある程度戦えることは確かだ。

そもそも別にエヴァも茶々丸を戦闘においての活躍を期待した訳ではないので、身の回りの世話が出来ればそれで良かったらしい。


「あのボディだとあれが限界だよなぁ。」

この時代の一般的なロボット技術では超鈴音が関わる麻帆良学園以外だと歩かせるのにやっとのレベルであり、実際にはアンドロイドで肉弾戦が行える茶々丸は十分オーバーテクノロジーになる。

しかしそれでも茶々丸のボディに関してはブロトタイプの実験体ということもあり必ずしも戦闘向きではない。

たたまあこの件は根本的な問題として、アンドロイドにそこまで高度な肉弾戦が必要なのかから考えなくてはならないだろう。

正直なところ一般的な魔法使いとある程度戦える技術があれば、超鈴音にとって現状ではそれ以上の性能はさほど必要ないとも言える。

例の計画の為に量産するには最低限のスペックがあればよく、逆に過剰な性能は量産の邪魔になるだろう。


「あの、茶々丸さんを作ったのは超さんと葉加瀬さんなんですよね? 二人のうち特に超さんは何者なのか横島さん達は知ってるのですよね?」

横島としてはそう遠くない未来に茶々丸には新しいボディか現在のボディの改良が必要だろうと考え始めるが、そんな横島の表情と言葉に夕映は以前から気になっていたことの一つを尋ねていた。

実は超鈴音の正体に関しては夕映のみならずのどかやあやかに千鶴も以前から気にしていて、彼女達の間で密かに話をする機会があったりする。

完璧超人の天才超鈴音については以前は超だからと流していたことも魔法を知り横島を知ると違和感や疑問が多く感じられていた。

加えて木乃香が少し前に横島の態度が超鈴音にだけ微妙に違うと夕映達になんとなくこぼしたことも、彼女達に超鈴音が何かしらの秘密があると確信させた一因でもある。


「えっと……。」

結果として突然絶妙なタイミングで夕映から尋ねられた超鈴音の正体に、横島は少し困った表情で刀子と高畑を見る。

夕映達は超鈴音の正体に秘密があることを確信していることもあり、どう話すべきか横島と刀子と高畑は迷ってしまう。




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