二年目の春

「まっ、いずれアンドロイドの兵士を造る気なんだしな。 歴史を変えるったって金と技術だけじゃどうにもならんし、軍事力とまではいかなくても実力行使する部隊は最低限必要だしな。 エヴァちゃんならいざ知らず超さんの実力じゃ一人で戦いたくても出来んし。」

「やはりマスターの情報源は……。」

「ああ、この男だ。」

そのまま横島は茶々丸のボディの調査に関する作業の手を動かしながらも、何気ない世間話のように超鈴音の今後の計画について暴露すると茶々丸は横島が超の計画を知っていることに驚きながらも瞬時にエヴァの情報源であることを悟る。

まあここまで来ると茶々丸も薄々勘づいていたし、元々交遊関係の狭いエヴァだけに超の計画の情報源は横島か近右衛門しかほとんど可能性がないのだ。


「横島さん。 超はいつ何をするのか教えてください。 私は超を止めねばなりません。」

調査自体はすぐに終わり茶々丸は手持ち無沙汰な様子で横島の作業を眺めていたが、横島がエヴァの情報源だと知ると超計画の詳細を知りたくて尋ねる。

流石に超も茶々丸に計画の詳細を明かしてなかったし、これから敵対するだけに計画に関する情報は最後の餞別には含まれてなかったらしい。


「そう焦らんで、少し落ち着けよ。 超さんの計画は麻帆良祭の最終日だからまだ時間はある。 第一止めるったってどうやって止める気だ?」

カタカタカタとキーボードを打つ音が響く中、今すぐにでも超鈴音を止めたいと願う茶々丸に横島はキーボードを打つ手を止めて茶々丸に視線を向ける。

茶々丸の覚悟を横島は疑ってる訳ではないが、茶々丸が何をどう考えどう行動するつもりかは聞いておく必要があった。


「超にも言われました。 自分は言葉では止まらないと。」

「だろうな。 本当に帰れるかわからん未来から片道キップのつもりで来たんだろうし、今更止まれんだろう。」

人には結果が見えていても止まれない時が存在する。

いや人のみならず神魔でも存在するし、それはより高みへと登り詰めた者の方が多いのかもしれない。

超鈴音にしても自分の為だけならば止まれるかもしれないが、彼女は生まれ育った未来の仲間達の最後の希望の一欠片なのだから。


「予め言っておくけど、俺が協力しても全部を救いたいなんていうのは流石に無理だぞ。 世界はそんなに簡単じゃない。」

結局言葉では止まらない超鈴音をどうするのか、茶々丸は答えられなかった。

彼女のAIをもってしても彼女が望む答えは見つからないし、理想を言えば茶々丸は超もこの世界も全てが丸く収まる方法を求めている。

横島はそんな茶々丸の考えを理解し共感もするが、逆にそれがどれだけ危険で不可能なことかも理解していた。

まあ元々超の件は放置も出来ないので協力するつもりはあるが、極論を言えば横島は超鈴音個人に対しては多少なりとも力になってやりたいが彼女の未来世界に関しては本当に関わりたくない。

はっきり言えば横島自身もまた迷っている。


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