二年目の春

さて腕時計型通信機のことで賑やかな夜になったが、一旦解散したあと横島はエヴァ・チャチャゼロ・茶々丸だけを連れてバベルの塔に来ていた。


「バベルの塔……。」

そこはある意味異空間アジトの真価とも中枢ともいえる場所であり、エヴァ達三人は驚きを通り越して見ているだけで微かな恐怖を感じるほどであった。

流石のエヴァも人が立ち入っていい場所ではないのではとも思うほどだが、横島は慣れてるからか特に感じることもないので瞬間移動でさっさと目的の部屋に連れて行く。


「ここは……?」

「研究室の一つっすよ。 茶々丸ちゃんのボディを調査するのにここの設備を使いたいんで。」

なんというか身が引き締まるようなバベルの塔であるが、横島が一行を連れて行った部屋はそれとは対照的に何処か人間臭いというか人の営みが感じられる生活感のようなものがある部屋だ。


部屋自体はかなり広く天井も高いが柱の類いが一切ないので一見すると巨大な倉庫のようにも見える。

ただ部屋には大量の機械類や電子機器のような物から兵鬼に分類される物まで多種多様な物があり、それなりに整理されているがそれでもかなり混沌としている。

中でもデスクの一つには乱雑に積まれた本や書類でパソコンが埋まっていて、つい今さっきまで誰かが使っていたような雰囲気だった。


「そこの椅子に座って楽にしてていいぞ。 ここの設備は人型アンドロイド専用だから調査くらいすぐに終わる。」

何処か大学部の研究室のようなその部屋で横島は茶々丸を調査用のセンサーや兵鬼と繋がった椅子に座らせるが、茶々丸は見たこともない兵鬼の類いに少し表情が固い。


「人型アンドロイド専用?」

「エヴァちゃんからなんも聞いとらんのか? 俺は麻帆良に来る前は異世界に居たんだよ。 人型アンドロイドに関しては俺にも結構技術があるんだぞ。 昔、とあるじいさんにこき使われたからなぁ。」

エヴァ達が見守る中で横島はいつもの調子で普通に会話を続けながら茶々丸のボディの調査を行うが、茶々丸は何気なく話された横島の過去に流石に本当なのか冗談なのか判断出来なかった。

加えて機械的なセンサーや生体的な兵鬼で調べられることが幾分恥ずかしいらしく、少し恥じらいの表情も見せていたが。


「ふーん、なるほどね。」

そのままちょっとした映画館ほどもある巨大なモニターにすぐに茶々丸のデータが次々と映し出されていくが、当然ながらエヴァとチャチャゼロはちんぷんかんぷんである。

横島は超鈴音が餞別にと茶々丸に渡したUSBメモリーのデータもついでに調べてみるが、こちらも本当に普通の茶々丸関連のデータだった。


「何がなるほどなんだ? さっさと説明しろ。」

「どうやら超さんはいずれ茶々丸ちゃんのボディの改良を予定してたらしいな。 現状は基本的なデータ収集の為のボディでデータが集まり次第全面的な改良する気だったみたいなんだよ。」

茶々丸のボディの調査自体は本当にすぐに終わるが、横島が一人で意味ありげにデータを見ていることにしびれを切らしたエヴァはさっさと説明しろと急かす。


「改良ですか?」

「データ収集の機能はデータが集まれば不要だしな。 より実用的なボディに改良を前提に造ったんだろうよ。」

正直なところ茶々丸自身もエヴァも超鈴音の具体的な計画は詳しく知らないので気付いてなかったようだが、現行の茶々丸はAI開発と量産を前提にしたボディ開発の為のデータ収集用のボディのようである。

そのため茶々丸のボディのスペックは意図的に抑えれていて、運用データ不足ではあるが単純な技術的にはもっと高性能なボディが造れると横島は見抜いていた。

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