二年目の春

「マスター! 本命渡したカレお返しくれないのよ!」

そして同じく頃の横島の店は例によって学生達で賑わっていた。

ホワイトデーということもあり横島やタマモからのお返しを目当てに来店する少女達も多いし、バレンタインの結果が芳しくない少女なんかが横島に愚痴をこぼしに来てもいる。

無論バレンタインの告白に成功して恋人と二人で来店する少女なんかもいるが、そんな二人はだいたいが他の常連の子達にからかわれたりしていた。


「ええなぁ。 恋人が居る学生生活なんて俺には無縁だった。」

「マスターこそ誰が本命なのよ? 女性が苦手にしてもいい加減にしないと刺されるわよ。」

ちなみに横島は結果が芳しくない少女を慰め、カップルで来店した少女には羨ましげに声をかけるが逆に横島自身の現状を突っ込まれることが多い。

相変わらずモテない過去を引きずる横島であるが、店の常連でそれを信じてる者は今もほとんど居ない。

木乃香を筆頭に横島と付き合ってるのではと噂になった者は身近に多いし、特に木乃香や千鶴なんかはお嬢様なので親の手前秘密にして付き合ってるのではとの噂が相変わらず消えないのだ。

他にも明日菜達に美砂達など明らかに横島に好意を持つのが端から見ても分かる少女が居るので、横島の本命は一体誰なのかという話は常連の少女達の格好の噂の種にされている。


ちなみに横島は一部の例外を除き男子中高生の評判はあまり良くない。

理由はいうまでもないだろうが、女性が苦手だと嘘をついて次々に女に手を出してると根も葉もない噂が男子中高生を中心に広がっていた。

更に酷い噂だと店の常連の半数は横島のお手つきだとの噂まであり、女子の噂とのギャップが凄いことになっているのだ。

まあ女子の側はそんな噂をする男子を見て男は馬鹿だなと笑っているが。

横島の店に男子学生が一向に増えない訳はそんな男女の噂が原因にあったりする。

ただここまで来ると店に集まる女の子を目当てにしたナンパ男が時折来ることがあるが、横島の店では基本的に女性が多く立場も強いので成功することはほとんどない。

しかも誰が始めたか不明だがナンパ男が来ると常連の少女達が横島との比較を堂々と始めるので、ナンパ男もたまったもんじゃなかった。

加えて中には男子の噂を逆手に取って、まるで横島のお手つきのような態度を取りナンパ男をからかう猛者もいる。

おかげで横島の噂が一向に改善しないが、当の横島自身も別に野郎の評判など興味がないので特に問題にはなってない。

流石に身に覚えもないのに手を出したことになってる女性が多いことには何とも言えない表情をするが。

しかし所詮は横島なので女性にチヤホヤされたりモテる扱いをされることが嫌かと言われるとそういう訳でもなく、満更でもなさそうである。


それと逆に横島の評判があまり悪くはないのは大学部の男子であった。

納涼祭や体育祭などイベントでの知り合いもそれなりに居るので評判はさほど悪くはない。

まあ女性関係についてはこちらもどうなんだとの噂もあるようだが、会ってみると案外普通だとの意見が割と広がっていた。

資産家で料理の腕前も卓越してるとなるとそりゃモテるだろうと割と冷静に受け止められている。

ただこちらは大学部との交流が多い夕映達やあやかが居るので、あまり支離滅裂な噂は否定されてることも大きいが。



37/100ページ
スキ