二年目の春

同じ頃エヴァの家のリビングでは少し重苦しい空気が支配していた。


「超さんとマスターが敵対するのですか?」

「それはまだ分からん。 だが私は奴の計画に賛成ではない。」

この日茶々丸はいつもと同じように家事をしていたが、突然エヴァに少し話があるからと言われて今後超鈴音には協力しないと告げられる。

そのあまりに突然な話であったが茶々丸は意外に冷静で、なんとなくであるがこうなるのを少し前から予期してもいた。

茶々丸自身も自分が知ることは全て超鈴音に筒抜けになることを以前から気にしていたし、何よりエヴァが呪いからの解放以降に横島達と親しくなりいろいろ自分に隠していたことも気付いている。

元々超鈴音とエヴァの関係は互いに深入りせず共に相手を尊重する形だったが、エヴァの超に対する態度が変化し始めたのはやはり横島が麻帆良に来て以降であった。


「マスターは超さんの計画を知ってるのですか?」

「ああ、知っている。 少なくとも私には計画に賛成する理由はないし、むしろ迷惑だとすら思う計画だ。」

来るべき日が来たのだと茶々丸は受け止めたが、茶々丸自身はまだ超の計画の詳細を知らないのでエヴァがすでに計画を知っていることには驚いてしまう。


「私はどうなるのでしょう。」

「奴の計画はな、麻帆良で全世界に魔法を公開してやがて滅びる魔法世界を救う足掛かりにすることだ。 だが奴はその代償をこの時代の人間に求めている。 お前がそれを知ってなお奴の計画に参加したいなら好きにするがいい。」

エヴァと超鈴音の事実上の決別宣言に茶々丸が一番悩み不安になったのは自身の今後の処遇である。

所詮は超や葉加瀬によって作られたガイノイドである自分は当然お役御免なのかと覚悟をする茶々丸であったが、そんな茶々丸にエヴァは超の計画を話して聞かせそれに賛同するなら好きにしろとまるで人に決断を促すように話していた。


「私はオーバーテクノロジーで作られたガイノイドです。 超さんか葉加瀬さんのメンテナンスがなければ満足に稼働を続けられません。 仮に超さんの計画に賛同しなくともマスターの側に居ればマスターに迷惑をかけるでしょう。」

「そこは大丈夫だ。 代わりにメンテナンスを出来る奴を見つけてある。 だからお前は自分の意思でどうするか決めろ。」

エヴァはあえて超の計画が最早成功の可能性がほとんどないことは言わなかった。

最悪この場の会話も超に漏れる可能性もあり、迂闊なことは言えない。

まあこの場の会話だけでも超が誰を疑うかはわかりきっているが、どうせ超には横島の過去や素性など分かるはずがないのでエヴァは確証さえ持たれなければ構わないと考えている。


「まさか魔法世界の為にとはいえ、平和に暮らしているこの時代のこの街の人達を犠牲にするなんて。」

超の目的が過去の改変であることは茶々丸も知ってはいたが、まさか直接関係ない魔法世界の救済だとは思わなかったようだ。

麻帆良の人々と交流があり友人や知人が多い茶々丸だけに、明らかにショックを受けていて決断できぬまま言葉を失うことになる。
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