二年目の春

「また創造主か。 本当にろくなことしてないな。 それはそうとお前ももう少しソフトな言い方は出来んのか?」

土偶羅の突然の暴露話にエヴァは無言のまま考え込み、刀子はエヴァが元々は人間だったことに衝撃を受けていた。

一方の横島は、何か問題があると根源には毎度創造主が関わってることに心底うんざりといった表情である。


「魔王と呼ばれる者には余計な配慮など不要であろう。」

「ああ、教えてくれて感謝する。」

ただ横島としてはそれよりもあまりに気遣いのない土偶羅の言葉にも少し困ったように注意をするが、土偶羅はエヴァには余計な配慮など不要だと言い切りエヴァ自身もそれを肯定しおまけに感謝の言葉まで口にしていた。

しかも不思議なことにエヴァには先程までの不愉快さは無くなっていて、土偶羅に対しての態度も違和感ないほどまでに変わっている。


「そうそう、タカミチ・T・高畑の修行には手を貸してやれ。 万が一魔法世界に介入するなら必要な人材だ。」

結局エヴァが落ち着いたことで話は本題に戻るが、土偶羅が告げたのは意外なことに横島に高畑の修行への協力をするようにとの意見であった。


「えー、戦うのも修行も好きじゃないんだが。」

「霊動シミュレーションを使え。 あれならお前が毎度相手をしなくても役に立つ。 それについでにこの世界の魔法のデータも直接欲しい。」

正直修行も戦いも好きじゃない横島はあからさまに不満そうだが、土偶羅は高畑の修行に霊動シミュレーションを使うことを提案する。

まあ一度くらいは相手をしなくてはダメだろうが高畑の修行に霊動シミュレーションを取り入れることで少なくとも毎回横島が相手をする必要はなくなるし、そもそもの問題として土偶羅はできる限り高畑を味方にしておきたいようだった。


「霊動シミュレーションって何かしら?」

「戦闘用のシミュレーターって言えば分かりますかね? 擬似的に再現した相手と戦える訓練機器っすよ。」

「役に立つのか?」

「ある程度データがあれば相手を再現出来るからな。 強さとか戦い方も細かく変えれるし修行には十分使えるぞ。」

そんな横島と土偶羅の会話に刀子とエヴァは霊動シミュレーションに興味を持ち、エヴァなどは実際に使えるのか少し半信半疑な部分はあるものの面白そうだとは思うらしい。


「タカミチの修行にはいいかもしれんな。」

「私も使ってみたいわ。 あと出来れば刹那にも使わせてあげたいんだけど……。」

その後も横島は高畑と対戦するのは渋るが霊動シミュレーションを使わせるくらいならいいかと思うらしくとりあえずそちらの話を進めるが、意外に乗り気なのは刀子であり出来れば刹那にも使わせたいと言い出していた。

実際問題としてなかなか実戦経験もそう積めるものではないので、実戦に限りなく近い形での修行はずっとしたかったようである。


「桜咲さんかぁ。 別にいいんじゃないか。」

霊動シミュレーションは異空間アジト内に施設があるが正直持ち運び出来る物ではない。

ただその代わりという訳ではないが神魔クラスの力がある横島でも使えるようにグレードアップしていて、施設も霊的な条件や地形や天候などが変えれるようにと機能もいろいろ追加している。

刹那に霊動シミュレーションを使わせるということは、すなわち異空間アジト内に入れるということだが横島は相変わらず軽いため特に深く考えることもなく許可を出してしまう。

ちなみに現在異空間アジトでは霊動シミュレーションは戦闘用ハニワ兵達が訓練に使っていて十分活用している。

基本的に平和な異空間アジトではあるが、戦闘用ハニワ兵だけはいつ横島に呼ばれてもいいようにと日々訓練を欠かしてなかった。




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