二年目の春

「たださ、戦って解決しようとかは今のところ考えてないんだよ。 戦う前に問題は潰しちゃうしさ。」

真剣に話を聞くエヴァと刀子に横島は淡々と語るが、ある程度戦いをあると予期しているエヴァや刀子と戦いを徹底的に避ける横島の考え方の違いは大きい。

基本的に横島は大まかな方針を決める以外は土偶羅に丸投げしていて、後は土偶羅が戦いのような方法を取る前に問題を潰してしまうのだ。


「そもそも俺が魔法世界に関わってるのも理由の大半は明日菜ちゃんだしさ。 エヴァちゃんに話したっけか? 明日菜ちゃんの過去。」

「神楽坂明日菜の過去だと……」

「黄昏の姫御子って言えば分かるか? それが明日菜ちゃんの過去なんだよ。」

この時横島はエヴァに自分が魔法世界に関わる詳しい理由を話してなかったことを思い出し、その理由を語り始めていた。


「黄昏の姫御子だと……。 そうか、タカミチが焦っている理由はそこか。」

「ああ、でも姫御子の固有能力は俺の世界の技術で封印したから誰にも使えんけど。」

全ての根源とまではいかないが高畑の焦りや近右衛門や詠春の過去の言動や行動の大半は明日菜を隠して守るためなんだとエヴァは理解するが、横島はそんなエヴァについでとばかりに肝心の能力はもう誰にも使えないとだめ押しのように言い切る。


「貴様も何気に容赦ないな。」

黄昏の姫御子としての価値というか存在意義はその固有能力である始まりの魔法を使えることなのだが、それがもう使えないという現状に流石のエヴァも横島の容赦ないやり方に呆れ気味だった。

それはある意味ゲームのルールを変えるようなものであり、普通は出来ないことなのだが横島は平気でしてしまうのだから。


「それじゃあ世界樹の地下の封印されたあれは? あれを第三者が嗅ぎ付けて来たら戦わざる負えないんじゃないの?」

横島が魔法世界に関わる理由とその現状にエヴァはしばし考え込み無言になるが、代わりに口を開いたのは刀子だった。

明日菜に関しては横島の封印の影響で一時期よりは安全ではあるが、麻帆良にはもう一つ爆弾がある。


「あれは現状だと放置していいって俺の相棒の土偶羅が言ってるんっすよ。 秘密結社の連中には今しばらく魔法世界の目を向けたいらしくって。 ぶっちゃけその気になればどうとでも出来るんで。」

「貴様、まさかナギも解放出来るのか!?」

「うーん、絶対とは言えんが多分。 ただそいつを解放すれば世界が滅茶苦茶になるから土偶羅が今はダメだって。」

ある意味明日菜以上に魔法世界に与える影響が強い魔法世界の創造主であるが、実はその封印に関しては土偶羅が現状での解放に反対していた。

近右衛門との協力して以降に土偶羅は密かに創造主の始末とナギの解放を検討したが、現状で秘密結社完全なる世界に手を出すと麻帆良にとってマイナスにしかならないしナギに関しては下手に解放すると魔法世界のみならず地球側も巻き込んで世界を引っ掻き回すとの予測をされている。

まあそれが魔法世界の救済に繋がればいいが、そう上手くいかないと土偶羅は考えてるらしい。

実際問題として魔法世界を救っても麻帆良にとってはマイナスになる可能性も割りとあり、創造主の始末とナギの解放はタイミングが重要だというのが土偶羅の意見であった。



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