二年目の春

一方この日の刀子は朝から部屋の掃除や洗濯をしていた。

教師という職業柄週末も仕事をすることはあるし、魔法関係の仕事に剣の修行にとやることはいくらでもある。

ただ平日は最低限しか出来ない掃除や洗濯は週末に本格的にやることが多い。


「本当に凄い効き目ね。」

半日掛けて掃除と洗濯を終わらせた刀子は、窓の外で風に揺られるシーツを眺めながらふと自分の手を見る。

少し前に横島から貰った老化防止魔法薬の効き目はあれから日を追う毎に感じていた。

刀子の場合は忙しいと肌荒れすることがありスキンケアにはかなり気を使っているが、あれ以来肌荒れをしてからの回復力が良くなったと感じている。


「やっぱり出せないわよね。 簡単には。」

ちなみにこの老化防止魔法薬に関しては雪広・那波・近衛家の人間にも伝わっていて、以前異空間アジトに行ったメンバーも服用することになっていた。

近右衛門達年配者は実質的に寿命が伸びることになるし、加えて母親世代が喜んだのは言うまでもない。

横島自身はあまり気にした様子もなく求められると気軽に提供しているが、老化防止魔法薬なんて世の中に出せば騒ぎになるどころでは済まないだろう。

上手く立ち回れば世の中に人間の半分は確実に味方に付けられるが、下手をすると魔法の秘匿を含めて世界を混乱させることも可能性としてはない訳ではない。

まあそれを言うならば横島の持つ技術や魔法なんかは、そんな判断が難しいものがまだまだたくさんあるんだろうが。


「責任重大だわ。」

現在刀子は魔法関係者的には木乃香達の指導者として見られていてそれも間違いではないが、近右衛門からは横島の秘密を絶対に外部に漏らさないようにしてくれとも言われている。

まだ若い少女達やどこか抜けている横島では多少不安があるのが実情なのだろうし、実質的に刀子が秘密を守る役割を担わなければならない。

刀子自身は横島の恩恵も得ているが、同時に自分が魔法協会どころか地球の未来すらも左右しかねない立場であることに責任の重さを感じていた。


「高畑先生は今日もあそこかな。 私も午後から刹那でも誘って少し修行しようかしら。」

そんな自身の立場と責任を考えていた刀子であるが、ふと自分と近い立場である高畑のことを思い出す。

まあ厳密には高畑は刀子とは微妙に違うが、彼は今も自らの力を求め足掻いている。

恐らく今日もエヴァの別荘で修行してるのだろうが、高畑ほどの実力者をそこまでさせるほどの相手が敵対する可能性があるのだ。

それに高畑に関しては場合によっては敵対する可能性もない訳ではない。

もし仮に横島が魔法世界を本当に見捨てると決断した時、高畑はどうするのか刀子には読めなかった。


「ほんと、横島君ともう少し話さなきゃね。」

高畑の性格からして横島や木乃香達に害を与えるようなことをするとは思えないが、魔法世界と明日菜を天秤に賭けねばならない時が来たらどうするかは分からない。

横島が実際にどの程度戦えるのかも分からない刀子は、最悪の場合を想定して横島と共に戦う為に事前に話をしておくべきだと考えていく。

まあ相手が高畑になる可能性はさほど高くはないが、秘密結社完全なる世界は戦う可能性が十分にある。

万が一の時には戦力は多い方がいいし、刀子自身は刹那よりは戦えるが実践経験が豊富というほどでもない。

刹那共々もう少し修行時間を増やすべきかと考えながら、刹那に連絡して午後は修行をすることにする。

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