麻帆良祭への道
「相変わらず暇そうだな」
同じ頃横島の店には登校即下校したエヴァが訪れていた
朝の通勤時間を過ぎて客が途絶えた店内では、横島がコーヒーとタバコでマッタリしている
黒いスラックスと白いワイシャツ姿にオールバックの髪型の横島がカウンターでコーヒーを飲む姿は、仕事をサボるバイトにしか見えない
「いらっしゃい。 今日はわらび餅作ったから日本茶でどうだ?」
暇そうだと言われた横島は否定も肯定もせずに、相変わらずメニューにない物を勧める
最近はエヴァがほぼ毎日午前中に来るため、密かにエヴァの好みに合わせて和菓子を作っていた
そんな横島に対してエヴァは何とも答えないが、それも最近いつもの事で横島は勝手に和菓子を出すのだ
「和三盆に本わらび粉か…… 相変わらず非常識な男だな」
「一口で材料を当てる人に言われてもな~」
わらび餅とお茶と一緒に碁を打ち始める横島とエヴァだったが、エヴァは一口でわらび餅の材料を当ててしまう
その高級な材料に半ば呆れるエヴァだったが、一口で材料を当てられた横島は相変わらず軽い調子である
「さっき出来たばっかりだから美味いだろ?」
「麻帆良でこんな高級な材料を使うのはお前だけだ」
ちょっと自慢げに語る横島にエヴァは呆れた口調だが、皿のわらび餅が無くなるとそっと横島の前に皿を動かす
すると横島は無言のままお代わりを持って来るという暗黙の了解だった
「お前ここに来る前はどこで何をしていた?」
そのまま沈黙の中で碁を打ちながら、たまに客が来ると横島がしばらく抜ける程度だったのだが、ふとエヴァから横島個人への疑問が口に出ていた
あまり自身が詮索されたくないエヴァは他人の過去など聞くことは今までなかったのだが、ふと沸き上がる興味に聞いてしまったのである
「ん? 最近は外国をあちこち旅してたよ。 観光って言うよりは放浪みたいな感じかな」
「まさか困ってる人を助けて歩いていたなどと言う訳じゃあるまいな」
「なんだそりゃ? 俺は見知らぬ他人の事に首突っ込むほど余裕のある人生送ってねえよ。 それにさ……、人を助けるって難しいからな」
実はエヴァは以前から横島が立派な魔法使いなのかとの疑惑を感じていたのだ
近右衛門が頻繁に出入りして木乃香が居着いてるのも、その関わりかと邪推していたのである
「フフフ……」
横島の答えと表情にエヴァは不敵な笑みを隠そうとはしなかった
それはエヴァの知る立派な魔法使い達と横島が、まるで違う価値観である事に他ならない
決して気を許した訳ではないが、簡単に人を救うと口にする者達よりは好感が持てた事は確実である
「なんか悪巧みしてますって感じの笑顔だな。 せっかくの可愛い顔が台なしだ」
「余計なお世話だ」
不敵な笑みを突っ込まれたエヴァは思わず顔を赤らめてしまう
正体に気付いているだろう人間に可愛いと言われる事は本当に珍しかった
「明日はようかんにしようか。 そろそろ冷たいようかんが美味い季節だしな」
何気ない横島の呟きにエヴァは無言のままだったが、その瞳が僅かに輝いたのを横島は見て見ぬふりをしていた
同じ頃横島の店には登校即下校したエヴァが訪れていた
朝の通勤時間を過ぎて客が途絶えた店内では、横島がコーヒーとタバコでマッタリしている
黒いスラックスと白いワイシャツ姿にオールバックの髪型の横島がカウンターでコーヒーを飲む姿は、仕事をサボるバイトにしか見えない
「いらっしゃい。 今日はわらび餅作ったから日本茶でどうだ?」
暇そうだと言われた横島は否定も肯定もせずに、相変わらずメニューにない物を勧める
最近はエヴァがほぼ毎日午前中に来るため、密かにエヴァの好みに合わせて和菓子を作っていた
そんな横島に対してエヴァは何とも答えないが、それも最近いつもの事で横島は勝手に和菓子を出すのだ
「和三盆に本わらび粉か…… 相変わらず非常識な男だな」
「一口で材料を当てる人に言われてもな~」
わらび餅とお茶と一緒に碁を打ち始める横島とエヴァだったが、エヴァは一口でわらび餅の材料を当ててしまう
その高級な材料に半ば呆れるエヴァだったが、一口で材料を当てられた横島は相変わらず軽い調子である
「さっき出来たばっかりだから美味いだろ?」
「麻帆良でこんな高級な材料を使うのはお前だけだ」
ちょっと自慢げに語る横島にエヴァは呆れた口調だが、皿のわらび餅が無くなるとそっと横島の前に皿を動かす
すると横島は無言のままお代わりを持って来るという暗黙の了解だった
「お前ここに来る前はどこで何をしていた?」
そのまま沈黙の中で碁を打ちながら、たまに客が来ると横島がしばらく抜ける程度だったのだが、ふとエヴァから横島個人への疑問が口に出ていた
あまり自身が詮索されたくないエヴァは他人の過去など聞くことは今までなかったのだが、ふと沸き上がる興味に聞いてしまったのである
「ん? 最近は外国をあちこち旅してたよ。 観光って言うよりは放浪みたいな感じかな」
「まさか困ってる人を助けて歩いていたなどと言う訳じゃあるまいな」
「なんだそりゃ? 俺は見知らぬ他人の事に首突っ込むほど余裕のある人生送ってねえよ。 それにさ……、人を助けるって難しいからな」
実はエヴァは以前から横島が立派な魔法使いなのかとの疑惑を感じていたのだ
近右衛門が頻繁に出入りして木乃香が居着いてるのも、その関わりかと邪推していたのである
「フフフ……」
横島の答えと表情にエヴァは不敵な笑みを隠そうとはしなかった
それはエヴァの知る立派な魔法使い達と横島が、まるで違う価値観である事に他ならない
決して気を許した訳ではないが、簡単に人を救うと口にする者達よりは好感が持てた事は確実である
「なんか悪巧みしてますって感じの笑顔だな。 せっかくの可愛い顔が台なしだ」
「余計なお世話だ」
不敵な笑みを突っ込まれたエヴァは思わず顔を赤らめてしまう
正体に気付いているだろう人間に可愛いと言われる事は本当に珍しかった
「明日はようかんにしようか。 そろそろ冷たいようかんが美味い季節だしな」
何気ない横島の呟きにエヴァは無言のままだったが、その瞳が僅かに輝いたのを横島は見て見ぬふりをしていた