二年目の春

「よくにあってるね」

この日の夜、横島がまだ店の後片付けをしている頃さよとタマモは風呂上がりに同じ柄のパジャマを着ていた。

実は先日のさよと円の誕生日の時にタマモがハニワ兵と一緒にさよにプレゼントしたのが、このお揃いのパジャマであった。


「こうして同じパジャマを着るのもいいものだね。」

パジャマ自体はタマモがプレゼントした割には大人しめで、春らしい花柄の爽やかな感じのパジャマである。

ちなみに柄や色合いを男性向けにしたパジャマを横島にも新調していて、こちらもタマモとハニワ兵が選んで作った物だった。

さよはタマモとハニワ兵が自分の為に考え作ってくれただけで胸がいっぱいようだったが、純粋にパジャマの柄なんかも好みでもある。

これに関してはもう半年以上一緒に住んでるだけに、タマモもハニワ兵もさよの好みなんかをある程度理解してるからでもあった。


「いっぱい、考えたんだよ! 」

「まさか私のプレゼントで悩んでたなんて。」

季節的にまだ夜は寒くさよはタマモの髪の毛を丁寧に乾かしながら誕生日プレゼントの話をしていくが、タマモは身振り手振 りを交えながらプレゼントを用意するまでの過程を語っていく。

そのあまりに楽しげなタマモの様子に、さよもまた楽しく幸せな気持ちになっていた。

二人はこのあとハニワ兵も交えてプレゼントや誕生日の話で更に盛り上がることになる。



「また、あいつか。」

一方店の厨房で後片付けと明日の仕込みをしていた横島の元には土偶羅の本体が訪れていた。


「高畑が一向に動かぬのでいい加減しびれを切らしたのだろう。」

この日の話はクルト・ゲーデルが最近密かに新しい動きを始めたという極秘情報の報告とそれへの対応であった。

横島はクルトの名前に露骨にめんどくさそうな表情をするも、やっぱりかと半分諦めの表情にも見える。

つい最近までは高畑に協力を要請する手紙や使者を送って来たりしていただけであったが、昨年末から数ヵ月過ぎても高畑があまりに動かぬのでどうやらしびれを切らしたらしい。

クルトは現在ネギの去就に関与した一件で制裁され左遷や閉職に追いやられた同志や、現体制に密かに不満を持つものなどと連絡を取り始めているようであった。


「目的は立派なんだがなぁ。」

メガロメセンブリアの人々を救いたいというクルトの目的は立派であり、横島は自身にはない信念の持ち主であることは認めてもいる。


「当面は監視を強化するが、最悪暴発もありうるから対策を進めねばならんな。」

まあ横島も土偶羅も人のことをとやかく言えるほど立派な存在ではないので批判をする気は更々ないが、それが自分達に不利益になるならば対向する準備はせねばならなかった。


「しかしまあ、自分とこの国民の為に他はどうなってもいいって、よくそこまで割り切れるな。」

目的の為には手段を選ばずとはよく聞く言葉だが、実際に世界規模でそれを実行に移そうとするクルトの覚悟と信念に横島は何とも言えない心境になる。

ぶっちゃけ横島にそこまでの覚悟と信念があるならば魔法世界の問題などすぐに片付くのだから。

ただそれが上手くいくとは横島には思えないから無理なのだが。


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