二年目の春

「それにしてもスポンサーかなり集めたな。」

「それに関しては去年のクリスマスパーティーの影響ですわ。 主催者である横島さんの人となりを皆さん理解したからだと。」

そのままあやかが横島のことを考えてる間に横島は木乃香達と書類を見ていたが、横島が驚いたのはスポンサーがかなりついたことである。

メインスポンサーが芦コーポレーションであることに変わりはないが、昨年出店販売に参加した雪広と那波の両社に加え麻帆良学園の支援企業がかなりスポンサーになっていた。

横島はあやかが集めたのだろうと思ったようだが、実際には昨年のクリスマスパーティーで横島が挨拶したり酔っぱらい相手に目立った影響がかなりあったようである。


「苦労してパーティーで挨拶した甲斐があったな。」

ただスポンサーが集まった理由がクリスマスパーティーだと知ると横島は酔っぱらいの件が全く頭に浮かばなかったらしく、挨拶周りをした結果だと自画自賛するが夕映やのどかは苦労したのは自分達やあやかや千鶴なんだけどと複雑そうな表情をする。


(本当にこういう人が人たらしというんでしょうね。)

一方あやかはそんな横島達を見ながらクリスマスパーティー以前について思い出していた。

奇しくも麻帆良祭での横島の活躍もあって、あやかは多くの人に認められることになった。

それは狙っていたことではなく偶然の産物なのだが、それが一時的な評価として終わらなかったのはまたしても横島が原因で麻帆良カレーから手を引いたためである。

元々2ーAの出し物だったこともあり横島が手を引くと必然的にあやかに仕事が回ってきた。

そしてその後の納涼祭であやかはその評価を不動のものにしたと言っても過言ではない。

正直いつかは自分の力で雪広の名に恥じない人になりたいとは思っていたが、それがこんな形で叶いつつあるのは今でも不思議な気分である。


(古い言い方をするならば王の器とでも言うのでしょうか? だいぶ歪んだり大きな穴が空いてるようですが。)

あやか自身、多くの立派な大人に会って来たし尊敬できる人物も多く知っている。

しかし誰かの下で働きたいと具体的に思ったのは横島が初めてであった。


(あの件が無ければ……。)

横島が今後の麻帆良や世界にとって重大な鍵を握る存在になるかもしれないとあやかは気付いている。

あいにくと魔法世界の危機は知らないが横島の存在や異空間アジトの力は強大で、良くも悪くも周りに影響を与える可能性があるのは少し考えれば分かるのだ。


そしてあやかの中では一つだけ心の奥底に封じてる想いがある。

あのクリスマスパーティーで横島が自分をどう見てるか知ってしまった後、あやかは千鶴からあの件は横島が考えた行動ではなくつい口出ししてしまっただけだと聞いてしまったのだ。

それはあやかの心の奥底で横島に対する今までにない想いが生まれた瞬間でもあった。

ただあやかはそれが友情なのかそれ以上なのか考えることなく心の奥底に封じてしまい、今までと変わらぬ関係を横島と続けている。

こうして横島に振り回されてる自分が楽しく感じることで今はいいとあやかは思っていた。




16/100ページ
スキ