二年目の春
三月三日は雛祭りである。
横島の店では甘酒と雛あられに菱餅を日替わりメニューとして提供していて、女子中高生ばかりか日中に来店している主婦層なんかにも懐かしいと結構評判が良かった。
そんなこの日だが雛祭りであると同時にさよと円の誕生日でもあり、すっかりお祝い好きになったタマモが張り切って準備をしている。
二人へのプレゼントはハニワ兵と一緒に用意したらしく、ケーキや料理も積極的にお手伝いするつもりらしい。
「ふたりをびっくりさせるんだ!」
数日前から木乃香達と共にさよと円の誕生パーティーの話をしているが、二人には雛祭りパーティーだと言っていて一応秘密にしている。
まあ普通は勘づくのだろうし実際に円は勘づいているものの張り切っているタマモの為に知らないふりをしていた。
「それで今回はこのケーキ作るんか?」
「うん!」
クリスマスの時にタマモにケーキのデコレーションをさせて以来、タマモはケーキのデザインをするのも好きだった。
よくお絵かきをしているがあれ以来ケーキの絵も時々書いてるほどなのだ。
今回はさよと円の似顔絵をケーキに描きたいらしい。
「タマモにはちょっと難しいな。 二人でやるか。」
基本の似顔絵はタマモが描いた物をケーキの上に真似て描くのだが、さすがにタマモには難しく横島がかなり手助けしながら作っていくことになる。
そんな横島であるが一生懸命ケーキを作るタマモの姿に、ふとさよに声をかけた時のことを何故か思い出していた。
元々横島はさよを引き取るとまで考えた訳ではなく、ただ終わることのない孤独なさよの止まった時を動かしてやりたいと思ったに過ぎない。
賑やかな少女達を羨ましそうに見ていたさよの姿が、どこかかつて幽霊だったおキヌと重なって見えたことも無関係ではないだろう。
横島自身今はおキヌの魂もあるので他人事には思えなかったのかもしれない。
(人の縁なんて分からんもんだな。 それにしてもまさか家族なんて持っちまうとは……。)
現在の横島にとってさよは紛れもなく家族であるし、横島のようないい加減な男が幼いタマモを育てていけるのはかなりの部分でさよのおかげでもある。
本来はさよを助けるつもりだったはずがいつの間にか家族として横島が助けられてるのだから、さよには頭が上がらないなと苦笑いが出そうだった。
それにそもそもの問題として、横島は家族など持つつもりはなかったのだ。
人を愛し人に愛されることの重さすら自分にはまだ荷が重いと感じる横島にとって、家族という存在の責任の重さに自分が耐えられるとは思えなかった。
それが成り行きで家族を持ってしまい自分が家族を支えるのではなく家族に支えられてる現状には、本当に自分らしくいい加減だなとも思う。
(タマモもいつか親になったら俺やさよちゃんのこと思い出すのかな……。)
かつては思い出しもしなかった両親のことを横島は家族を持ってからは思い出す機会が増えていた。
不満は山ほどあったしケンカもした両親だが、こうして曲がりなりにも人の親になるとまた違った見方をするようになっている。
いつの日かタマモも人の親となり自分やさよのことを思う日が来るのかと思うと、それが楽しみであると同時に自分から離れていくのが寂しくも感じる。
やはり自分は親バカだなと思う横島であるが、鼻の頭にクリームを付けながらもデコレーションをするタマモと一緒にケーキを作っていくことになる。
横島の店では甘酒と雛あられに菱餅を日替わりメニューとして提供していて、女子中高生ばかりか日中に来店している主婦層なんかにも懐かしいと結構評判が良かった。
そんなこの日だが雛祭りであると同時にさよと円の誕生日でもあり、すっかりお祝い好きになったタマモが張り切って準備をしている。
二人へのプレゼントはハニワ兵と一緒に用意したらしく、ケーキや料理も積極的にお手伝いするつもりらしい。
「ふたりをびっくりさせるんだ!」
数日前から木乃香達と共にさよと円の誕生パーティーの話をしているが、二人には雛祭りパーティーだと言っていて一応秘密にしている。
まあ普通は勘づくのだろうし実際に円は勘づいているものの張り切っているタマモの為に知らないふりをしていた。
「それで今回はこのケーキ作るんか?」
「うん!」
クリスマスの時にタマモにケーキのデコレーションをさせて以来、タマモはケーキのデザインをするのも好きだった。
よくお絵かきをしているがあれ以来ケーキの絵も時々書いてるほどなのだ。
今回はさよと円の似顔絵をケーキに描きたいらしい。
「タマモにはちょっと難しいな。 二人でやるか。」
基本の似顔絵はタマモが描いた物をケーキの上に真似て描くのだが、さすがにタマモには難しく横島がかなり手助けしながら作っていくことになる。
そんな横島であるが一生懸命ケーキを作るタマモの姿に、ふとさよに声をかけた時のことを何故か思い出していた。
元々横島はさよを引き取るとまで考えた訳ではなく、ただ終わることのない孤独なさよの止まった時を動かしてやりたいと思ったに過ぎない。
賑やかな少女達を羨ましそうに見ていたさよの姿が、どこかかつて幽霊だったおキヌと重なって見えたことも無関係ではないだろう。
横島自身今はおキヌの魂もあるので他人事には思えなかったのかもしれない。
(人の縁なんて分からんもんだな。 それにしてもまさか家族なんて持っちまうとは……。)
現在の横島にとってさよは紛れもなく家族であるし、横島のようないい加減な男が幼いタマモを育てていけるのはかなりの部分でさよのおかげでもある。
本来はさよを助けるつもりだったはずがいつの間にか家族として横島が助けられてるのだから、さよには頭が上がらないなと苦笑いが出そうだった。
それにそもそもの問題として、横島は家族など持つつもりはなかったのだ。
人を愛し人に愛されることの重さすら自分にはまだ荷が重いと感じる横島にとって、家族という存在の責任の重さに自分が耐えられるとは思えなかった。
それが成り行きで家族を持ってしまい自分が家族を支えるのではなく家族に支えられてる現状には、本当に自分らしくいい加減だなとも思う。
(タマモもいつか親になったら俺やさよちゃんのこと思い出すのかな……。)
かつては思い出しもしなかった両親のことを横島は家族を持ってからは思い出す機会が増えていた。
不満は山ほどあったしケンカもした両親だが、こうして曲がりなりにも人の親になるとまた違った見方をするようになっている。
いつの日かタマモも人の親となり自分やさよのことを思う日が来るのかと思うと、それが楽しみであると同時に自分から離れていくのが寂しくも感じる。
やはり自分は親バカだなと思う横島であるが、鼻の頭にクリームを付けながらもデコレーションをするタマモと一緒にケーキを作っていくことになる。