平和な日常~冬~6
「これを作ったのが横島君だったなんて。」
「元々は麻帆良祭限定のイベント用に考えたんですけどね。 思ってた以上に評判になっちゃって。」
その後も横島が店を営業する傍らで仕込みは続くが、藤井は麻帆良カレーの鍋を見て信じられないような表情をしていた。
今や麻帆良の新しいご当地グルメとして地道に知名度をあげている麻帆良カレーだが、開発者が横島であることはやはりほとんど知られてない。
藤井も麻帆良カレーという新しい料理が最近あるとは聞いていたが、前回来た時はギリギリに来たので気付く余裕がなかったのだろう。
「まろやかな味とスープ状のカレーは好みが分かれるだろうけど……。」
宣伝まではしてないが横島の麻帆良カレーは本家本元として知る人ぞ知るグルメとして、市外からの観光客が食べに来ることもある。
それは万人に受けるというよりは好みが分かれる味ではあったが、毎日というよりは時々無性に食べたくなる味といった感じだ。
藤井も興味があったらしくレトルトの物は食べたが、味見をしてみると本家本元の麻帆良カレーはひと味違うと唸る。
「イベントなんで美味しくてインパクトが欲しかっただけなんですよね。 それがいつの間にか有名になっちゃって俺が一番驚いてますから。」
まだB1グルメなど存在しないこの時代だが、それでも地方発の料理が話題となり全国区になることはさほど珍しくはない。
ただどういう理由や経緯があれど一つの料理を産み出し人々に受け入れられるのは簡単ではないのだ。
「この師匠にしてあの弟子ありと言ったところだな。 横島君と木乃香君の料理は本当によく似ている。」
一体何者なのだと改めて横島を見つめる藤井であるが、坂本夫妻の夫は横島と木乃香の料理は本当によく似ていると語る。
実際横島と木乃香は味の系統というか料理の癖まで似ていて、端から見ると本当に普通の師弟に見えるようだ。
「そもそもなんで喫茶店をしてるんですか? どう考えてもレストランの方がいいような。」
「俺が麻帆良に来たときに最初に仲良くなったのが木乃香ちゃん達なんですよ。 彼女達みたいな学生が気軽に来てくれる店でもと考えたら喫茶店だったんです。 正直あんまり肩肘張った店は個人的に苦手なんで。」
一方藤井は根本的な疑問として何故喫茶店にしたのかと遠慮なく尋ねていた。
誰もが一度は頭を過る疑問ではあるが、正直横島は明確な理由なんてなく強いてあげるとすれば木乃香達のような若い女の子を相手にした商売をしたかっただけである。
まあ店をやると決めた早々に木乃香が押し掛けバイトとして働くと言い出したので、なんとなくその流れで学生が来るなら喫茶店だろうと考えたに過ぎない。
「別に喫茶店でも好きな料理は作れますしね。」
坂本夫妻の夫はなんとなく理解しているがそもそも横島の思考は普通の料理人のものではない。
気軽にみんなで騒いで好きな料理を作りたいだけであり、一言で言えば良くて料理バカであり悪ければただの変人である。
坂本夫妻は横島の開店当初から知る常連と親しいのでいろいろ聞いてはいて、人並外れた感性がある代わりに人とは感性が少し違うのだと思っていた。
「店を持ってもうすぐ一年になりますけど、木乃香ちゃん達とか常連の人達に助けられたり教えてもらったりしながらなんとかやってこれましたから。」
不思議そうに自分を見る藤井に横島は思わず笑い出してしまうが、横島は本当に好きなことをやりたいだけでなんとなく店を持ったのだ。
それがもうすぐ一年になるほど続き当初は赤字でもいいと思っていた店が黒字で普通にやれてる理由は、開店前から助けてくれた木乃香達と開店後に店に来てくれた常連達だろうと改めて思う。
「元々は麻帆良祭限定のイベント用に考えたんですけどね。 思ってた以上に評判になっちゃって。」
その後も横島が店を営業する傍らで仕込みは続くが、藤井は麻帆良カレーの鍋を見て信じられないような表情をしていた。
今や麻帆良の新しいご当地グルメとして地道に知名度をあげている麻帆良カレーだが、開発者が横島であることはやはりほとんど知られてない。
藤井も麻帆良カレーという新しい料理が最近あるとは聞いていたが、前回来た時はギリギリに来たので気付く余裕がなかったのだろう。
「まろやかな味とスープ状のカレーは好みが分かれるだろうけど……。」
宣伝まではしてないが横島の麻帆良カレーは本家本元として知る人ぞ知るグルメとして、市外からの観光客が食べに来ることもある。
それは万人に受けるというよりは好みが分かれる味ではあったが、毎日というよりは時々無性に食べたくなる味といった感じだ。
藤井も興味があったらしくレトルトの物は食べたが、味見をしてみると本家本元の麻帆良カレーはひと味違うと唸る。
「イベントなんで美味しくてインパクトが欲しかっただけなんですよね。 それがいつの間にか有名になっちゃって俺が一番驚いてますから。」
まだB1グルメなど存在しないこの時代だが、それでも地方発の料理が話題となり全国区になることはさほど珍しくはない。
ただどういう理由や経緯があれど一つの料理を産み出し人々に受け入れられるのは簡単ではないのだ。
「この師匠にしてあの弟子ありと言ったところだな。 横島君と木乃香君の料理は本当によく似ている。」
一体何者なのだと改めて横島を見つめる藤井であるが、坂本夫妻の夫は横島と木乃香の料理は本当によく似ていると語る。
実際横島と木乃香は味の系統というか料理の癖まで似ていて、端から見ると本当に普通の師弟に見えるようだ。
「そもそもなんで喫茶店をしてるんですか? どう考えてもレストランの方がいいような。」
「俺が麻帆良に来たときに最初に仲良くなったのが木乃香ちゃん達なんですよ。 彼女達みたいな学生が気軽に来てくれる店でもと考えたら喫茶店だったんです。 正直あんまり肩肘張った店は個人的に苦手なんで。」
一方藤井は根本的な疑問として何故喫茶店にしたのかと遠慮なく尋ねていた。
誰もが一度は頭を過る疑問ではあるが、正直横島は明確な理由なんてなく強いてあげるとすれば木乃香達のような若い女の子を相手にした商売をしたかっただけである。
まあ店をやると決めた早々に木乃香が押し掛けバイトとして働くと言い出したので、なんとなくその流れで学生が来るなら喫茶店だろうと考えたに過ぎない。
「別に喫茶店でも好きな料理は作れますしね。」
坂本夫妻の夫はなんとなく理解しているがそもそも横島の思考は普通の料理人のものではない。
気軽にみんなで騒いで好きな料理を作りたいだけであり、一言で言えば良くて料理バカであり悪ければただの変人である。
坂本夫妻は横島の開店当初から知る常連と親しいのでいろいろ聞いてはいて、人並外れた感性がある代わりに人とは感性が少し違うのだと思っていた。
「店を持ってもうすぐ一年になりますけど、木乃香ちゃん達とか常連の人達に助けられたり教えてもらったりしながらなんとかやってこれましたから。」
不思議そうに自分を見る藤井に横島は思わず笑い出してしまうが、横島は本当に好きなことをやりたいだけでなんとなく店を持ったのだ。
それがもうすぐ一年になるほど続き当初は赤字でもいいと思っていた店が黒字で普通にやれてる理由は、開店前から助けてくれた木乃香達と開店後に店に来てくれた常連達だろうと改めて思う。