平和な日常~冬~6

同じ頃タマモは悩んでいた。

来月の三日はひな祭りだが、実は土偶羅が調べたさよの誕生日でもある。

当然さよにもプレゼントをあげたいとタマモは思うが、今までは基本的にタマモはさよと相談してプレゼントを選んでいたのだ。

それ故にさよへのプレゼントをどうするか悩んでしまう。


「タマモちゃんどうかしたんですか?」

「ううん、なんでもない。」

先程からタマモとさよは一緒にこたつに入り二人が好きな旅番組を見ていたが、何処かいつもと違う様子のタマモにさよは声をかけるもタマモは笑顔を見せてなんでもないと告げる。

プレゼントは秘密にしなくてはダメだと言うのはさよに教わったのだ。

大好きなさよの為にタマモは何をプレゼントしようかと一人悩んでいく。



「えっ、タマモが何かを悩んでる?」

「はい、ここ何日か何か考え込んでるみたいで。 一応聞いてみたんですけどなんでもないとしか言ってくれなくて。」

一方のさよはこの日タマモが寝付くと横島にタマモが何かを悩んでるらしいと相談していた。

タマモ的には隠してるつもりだが、一緒に住む家族だけに流石にバレバレである。

さよとしてはタマモを心配するので何か悩みがあるなら話して欲しいが、それでも無理矢理聞く訳にもいかずに悩んでいた。


「私じゃ頼りにならないから言えないんでしょうか?」

「それは違うだろ。 多分誰かと秘密にする約束でもしたんじゃないか? 俺も内容まで知らないけど、タマモは誰かと時々秘密にする約束してるっぽいんだよなぁ。」

まさか自分へのプレゼントで悩んでるとは思いもしないさよは、自分では頼りないのかと落ち込むが横島はそれを否定する。

横島も詳しく知らないがタマモがいろんな人と仲良くなり、秘密にする約束などしてるのは何となく感じていた。


「調べてみてもいいけど、もう少し様子を見ておこう。 家族なんだし本当に困ったら相談してくれるって。」

「……そうですね。」

タマモを心配しつつも少しばかりの寂しさも感じるさよであるが、普段のタマモの態度が変わった訳ではなくさほど深刻な感じではない。

タマモにも考えがあるのだろうしもう少し様子を見ようと言う横島の意見にさよは頷くが、それでもすっきりしないのは子供が親離れをするのを寂しく感じる親のような心境なのかもしれない。

まあタマモの親離れはまだ先になるだろうし、完全にさよの誤解なのだが。


「そうそう、さよちゃんの戸籍作ったからパスポート取得出来るようになるし修学旅行は好きなとこ選んでいいぞ。」

「えっ、幽霊なのに戸籍とかパスポートなんて用意できるんですか?」

「いや、幽霊ってのは内緒で戸籍作ったんだ。 流石に修学旅行で偽造パスポートってのも怖いからな。」

そのまま話はタマモの件からさよの修学旅行の話になっていた。

実は以前から木乃香達にさよのパスポートはどうなるのかと横島は聞かれ取得出来るようにしておくと言っていたのだ。

修学旅行の行く先はまだ複数ある候補から決まってはないが、来月初旬には決めねばならない。

本来の歴史ではネギが居たこともあり京都を中心にした関西になるがこの世界では最有力の候補はハワイであり、もし海外になった場合さよがどうなるのか木乃香達が心配していたのである。

尤もさよ自身はパスポート以前に修学旅行はかなりお金がかかるからと流石にそこまではワガママは言えないからと半ばあきらめていたが。


「戸籍って作れるもんなんですね。」

「今回は学園長先生が手を回してくれてな。 だから心配しなくていい。 今度一緒に申請に行こう。」

幽霊であるはずの人と同じような生活が出来たばかりか戸籍とパスポートまで持てるとのことに、さよは信じられないように驚いていた。

ただ今回の件は近右衛門が手を回してくれたと聞くとさよはもっと驚き、普通じゃないのは横島だけでないんだなとしみじみと感じることになる。


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