平和な日常~冬~6

「ネギのエッチ! ノックしなさいっていつも言ってるじゃないの!!」

一方本来の歴史と違い魔法世界の辺境に移住していたネギは、この日アーニャの着替えを偶然見てしまいアーニャに激怒されていた。

元々故郷の村に居た頃は村の人が面倒を見ていたとはいえ、一軒家に一人住んでいたネギは日常生活における常識が欠落している。

魔法学校に入学以降はネカネと一緒の部屋に住んでいたが、こちらはこちらでネカネが甘やかしたこともあり魔法世界にアーニャが来て以降ネギが苦労したのはそんなアーニャとの共同生活であった。


「ごめん、でもそんなに怒らなくても……。」

ネギにとってアーニャは幼馴染みでありそれ以上でもそれ以下でもなく、はっきり言えば女性として見ていない。

対するアーニャはネギに異性としての意識もあるので、この二人は日常生活においてとにかく賑やかである。

例を上げるならばネギは未だにネカネとお風呂も寝るのも一緒だが、アーニャはそれに対してもいい加減一人でしなさいと口を酸っぱくするほど言っていた。

これには基本的に子供は女の子の方が成熟だという事実もあるが、それを抜いてもネギは肉親の愛情を求めている。


「まあまあ、アーニャちゃんもそんなに怒らないで。 ネギに悪気はないのよ。」

「ネカネさんが甘やかすからダメなんですよ!」

何かと口うるさいアーニャにネギは困ったようにネカネに助けを求めるとネカネは双方をなだめて収めるのだが、アーニャはこれもまたネギが親離れならぬネカネ離れ出来ない原因だと言い出す。

ただネカネにとってはネギもアーニャも子供なので、双方の話を聞いて落ち着かせるだけなのだが。


「ネギはまだ子供ですもの。 私はまた一緒に暮らせてホッとしてるわ。 アーニャちゃんもネギのことお願いね。」

最近は四人での生活も大分なれて来ていて、今年の春には借りてる家の裏の荒れ地を本格的な畑にしようかと祖父は言っている。

実はここは当初は一時的な仮の住みかになるはずだったが、現状では危ういバランスではあるが平和な生活が守られてるだけに安易に動けなくもなっていた。

当初予定していたジャック・ラカンの元に行けば確かに現状の監視の目は届かなくなるが、逆にそれはネギを危険視する者達に余計な疑念を抱かせ平和な日常でなくなる可能性がある。

少なくとも誰かに狙われるなり動く理由がない限りは下手に動かぬ方がいいと判断していた。

その結果より自給自足の生活に近付けるために、祖父は少なくともネギが成人するまでここに定住する可能性も含めて本格的に暮らす為の準備に取り掛かっている。

畑に関しては家庭菜園レベルの畑ならば現状でもあるが、四人で生きていくには足りなかったのだ。


「本当にネギって私が着いてないとダメなんだから。」

少し話は逸れたがネギに着替えを見られて怒っていたアーニャであるが、ネギが憎くて怒っている訳ではないのでしょんぼりと落ち込むネギとなだめるネカネに次第に機嫌を直して仲直りすることになる。


「ネギもアーニャちゃんは女の子なんだから、気を付けないとダメよ。」

過去の悲劇の記憶から逃れる為にひたすら力を求めていたネギはその天才的な才能から歪んだ成長をしていたが、皮肉なことに祖父やネカネと暮らすようになり過去の記憶に悩まされることは少なくなっていた。

ネカネとアーニャがネギと祖父を追ってきたのは祖父にとっても想定外であったが、母親のようなネカネと友達であり幼馴染みであり異性でもあるアーニャはネギに欠けてるモノを教えるにはちょうどいい存在である。

横島がこの世界に来たことにより運命が変わったネギ少年は、本来ならば与えられることがなかった子供としての時間を得ることになりその運命に立ち向かう強さと優しさを学ぶ貴重な時間になることになる。


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