平和な日常~冬~6

それから数日が過ぎて二月も後半に差し掛かると麻帆良学園ではテスト勉強の期間となり、横島は相変わらずテストの山かけとテスト勉強を教えることになり忙しくなる。

まあ流石に横島もこの期間に慣れて来たので地味に横島の勉強の教え方も上手くなっていたが、それ以上に変わったのが高畑であった。


「高畑先生、教え方上手くなったのよね。」

「ホントホント、上手くなった。」

前回の二学期末のテストでは高畑のやる気はともかく必ずしも教え方は上手くなく成果は今一つだったが、今回はそれが目に見えるほど改善し始めている。

この期間は担任がテスト勉強を教えたり対策を立ててやるなどすることは珍しくはないが、高畑は恥を忍んで学年主任の新田や同僚の教師に加え横島にまで勉強を教えてる時のコツなどを教えて欲しいと頼んで努力していた。


「こう言う言い方をすると失礼に当たると思いますが、以前は私達生徒の事を見てるようで見てなかったのだと思います。 それが今は変わったのが大きいかと。」

高畑が変わったのは横島達のみならず関わりがある者の大半が感じてることだが、夕映は以前の高畑は自分達生徒の事を見てるようで見てないと言い周囲の少女達もそれを否定出来なかった。


「今思えば、高畑先生は失った過去と仲間の為に生きていたのでしょう。 少し調べましたが赤き翼は民衆の英雄ではありますが、必ずしも為政者との関係は良くないようです。 私達が知らない歴史の裏側の秘密が一つや二つは抱えてるのかもしれません。」

高畑は何故変わったのかは多くの者が疑問に思うことだが、夕映は高畑の過去や赤き翼の過去を刀子に頼んで一般的な魔法世界の情報だけだが調べたらしい。

正直なところ赤き翼の情報は必ずしも統一されてなく未確認の情報や噂が多くあり、全体として明らかなのは救ったはずのメガロメセンブリア率いる連合勢力からかなり疎まれてることである。

どうやら夕映は自分達が知らされてる情報に裏がある可能性があることを早々に突き止めたらしい。


「そうそう赤き翼と言えばサウザンドマスターの息子が昨年魔法学校を卒業したのですが、行く宛てがなく問題になったそうです。 その子はまだ十才の子供だそうですが各国魔法協会は受け入れを拒否したそうで、その理由が不明なことからもいろいろ憶測を呼んでます。 高畑先生が変わったのもその件が関係ある気もするです。」

「よくそんなことまで調べたな。」

「一般的な魔法関係者に開示されてる資料ですよ。 横島さんは知ってるのでしょう?」

なんというか隠された秘密があると言われると興味をそそられる少女達であるが、夕映はすでに昨年のネギの一件に関する情報まで掴んでいた。

ただ夕映が調べることが出来たのは一般的な魔法協会員に開示されてる資料だけであり、夕映は当然横島も知っていると確信している。


「まあ知ってるけどさ。」

「ねえねえ、なんで子供が拒否されたの?」

「それはちょっと……。 ぶっちゃけ前に教えた話が真相と違うのは本当だけど、その真相ってかなりヤバイ話なんだよな。」

魔法の情報開示から一ヶ月半ほどの短い期間でまさか赤き翼に関する情報をそこまで集め嘘だと見抜かれると思ってなかった横島は少し狼狽するも、以前教えた情報が嘘だと認めた以上は流石に軽々しく言えるはずはなかった。

先程も指摘したが実際赤き翼の存在には都市伝説のようにハッキリしない情報が多い。

一般的な魔法世界人でも政府発表をそのまま信じてる者はさほど多くないが、ここでタチが悪いのは二十年前の戦争に関しては連合も帝国もアリアドネーもそれぞれに主張が食い違う点が多いことだ。

基本的には秘密結社完全なる世界が悪いとしてる点は一緒だが、国家である以上は騙されたから自分達に責任が全くないとは通用しない。

その結果互いに他国に責任を押し付けあってもいた。

まあ結論から言うと少しばかり頭が回る者ならば二十年前の大戦と赤き翼の情報が不自然なのは気付くが、普通はそこに気付いても関係ないので特に気にもしないのが現状である。

冷めた見方をすればみんな悪いのだと言うことになり、それが一番適切かもしれない。

ちなみにメガロメセンブリア辺りではマスコミや御用学者が政府に都合がいい情報を主張してるので、それを信じてる者もそれなりにいるが。

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