平和な日常~冬~6

バレンタインが終わると麻帆良では三学期の期末テストが迫っているが、この日超鈴音は珍しく眠れぬ朝を迎えていた。


「今更なこととはいえ……。」

日頃から徹夜など当たり前のようにしていた超であるが、寝ようとしても寝れないのは久しぶりである。

ただこの日はそれだけ彼女にとって重要な日になるはずであった。

そう、本来の歴史ならばこの日はネギ・スプリングフィールドが麻帆良へとやって来るはずの日なのだ。


「カレが魔法世界で家族と平穏な暮らしをしてるという事は、私の罪に対する運命の皮肉カ?」

すでにだいぶ前には分かっていたこととは言え、世界の行く末を左右する運命の子であるネギは魔法世界で家族と平穏に暮らしているという事実に超は運命の皮肉さを感じずにはいられない。


「何もかもが私の予想を超えていく。 歴史を変えるというのはそういうことなのカ? それともまさか……。」

思えばこの一年余りは誤算というレベルを越える想定外のことばかり起きていたなとしみじみと思い返す。

ネギが麻帆良に来ないことなど些細だと思える変化がいくつもあった。

超にはそれらが自分が過去を変えてる影響による変化なのかと考えていたが、それにしては変化が大きすぎるのはずいぶん前から気になっている。


「私の他にも歴史にない行動をしてる者が居るのカ?」

それは考えたくないことであったが、超は自分だけが歴史にはない行動をしてるのではないのではと最近になり考え始めていた。

別に時間移動は超鈴音だけの技術ではない。

時を越える事が可能である以上、自分以外の第三者が時を同じあるいは全く違う方法により時を越えることが全くあり得ないとは言い切れない。

そして超には自分と同じく時を越えた可能性がある者に心当たりがある。


「横島忠夫と芦優太郎。 あの二人は未来人か?」

ネギの一件には直接関わってはないが、昨年末から隠すことなく魔法協会に肩入れしている横島達は超からしても少し異質であり彼女は横島達が何らかの目的により未来から来たのではと疑い始めていた。

現に超鈴音でさえもすでに関東魔法協会の機密を含む重要情報が見られなくなったという事実がそれを疑う理由にあり、それに協力しているのが芦優太郎だという事実は超もつかんでいる。


「まあ普通に考えたらあり得ない話ネ。」

ただ全ては憶測の域を出てなく本音を言えばあまりに荒唐無稽な話だと思う。

それに未来人が何処かに居ると疑いだしたらきりがなく、超自身は他人のことより自身の計画を進めるだけで精一杯だった。

現実問題として横島は超の計画の最大の障害になりつつあることは確かだが、それはどちらかと言えば歴史の修正力のようなモノが働いたと考える方がまだリアリティがある。

特に木乃香達なんかは自分達から進んで横島に関わり協力したのであり、横島がそれを誘導したと考えるにはさすがに無理がある。

第一効率の面で考えると横島の行動は必ずしも効率的とは言えなく、超自身のように目的があるようには全く見えない。


「会えるのを楽しみにしていたのに残念ネ。」

そのまましばらく超は思考の中に埋没していたが、本来ならば今日会えるはずだった英雄の息子に会えないことが素直に残念だった。


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