麻帆良祭への道

ネギの問題に関連して魔法関係者が暗躍する頃、魔法世界の辺境のとある街に一人の老人が居た


「ちょっと高くないか?」

「旦那、馬鹿言っちゃいけないよ。 中古でもこんだけの船はなかなかないんだぜ? おまけに連合の軍用兵装付きなんて他じゃ買えない品だよ」

老人の相手をしていたのは四十代くらいの人間の男性である

馬鹿でかい倉庫の中に二人居て目の前には全長百メートルほどのクジラ型の空中船があり、どうやらこの空中船の売買交渉をしてるようだ


「連合の大戦時の旧式艦艇は余り気味だと聞いたが? この手の艦艇を改造した貨物船は特に辺境にはゴロゴロしてるぞ」

「……分かったよ。 精霊エンジンを新型に取り替えてやる。 それでどうだ? 実際精霊エンジンの新型は違うが兵装は20年前とさほど変化がねえ。 何処で商売するのか知らねえが、辺境の海賊程度じゃ手も足も出ないぜ」

ピリピリとした空気の中交渉する二人だったが、先に折れたのは売り手である四十代の男性である

グッタリした表情の男性はエンジンの換装で交渉を纏めた


「エンジンの換装と装備の取り付けに一ヶ月はかかる。 ここまでまけたんだから前払いで頼むぜ」

男性の言葉にも老人は特に表情を変えぬまま、大きなスーツケースから大量のドラクマ金貨を男性に差し出す



「やれやれ、やっと一隻か。 あとは帝国の船や水上船も手に入れねばな」

ところ変わって異空間アジトのメインコントロールルームでは、土偶羅の本体がホッと一息ついていた

先程の老人は以前にも登場した土偶羅の人型スペアボディの一体であり、現在魔法世界で活動中だったのだ

アシュタロス時代から続く知識や技術の収集活動は新世界に来ても行われており、土偶羅は魔法関係の知識や技術の収集を進めている

世界の創世という当初の目的こそ失ったが、横島を守り横島の意志を貫く環境を作るのが役割の土偶羅にとっては使える物はなんでも使わねばならない現状だった

そんな土偶羅は現在密かに魔法世界の軍事力の検証と対策に追われている

そのため魔法世界の各種兵器や魔法の収集をしていたのだ

横島本人は魔法世界などに関わるつもりなどまるでないが、いつどんな形で関わることになるかなど分からない

まして横島が親しくしてる明日菜が魔法世界の重要人物となれば、当然危険性は更に高まる

最悪の場合を想定する土偶羅としては、事前に魔法世界への軍事介入も含めた検討と準備が必要だった

横島の力がいかに強大とはいえ、横島が一人で全てを解決すれば横島の居場所が無くなるのだ

土偶羅はいかに横島の力や存在を隠しながら、横島の目的を達成させるかを考えている

その為には抑止力や介入も可能な軍事力は必要不可欠だった



「どこの世界も生命とは愚かだな。 破滅を知りえてなお争いを続けるとは……」

調査中の魔法世界の情報を見つめる土偶羅は呆れたような冷めた口調であった

それはかの世界の状況が、世界の破滅を知りながらも戦いを続けた前世界の末期に僅かに似ているからかもしれない

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