平和な日常~冬~5

「マスターもっとないの?」

「手元にあるのはあれで終わりだよ。 もっと強力なやつならあるけど危ないしなぁ。 また今度な。」

破魔札で遊んでいた少女達だが、まともな威力になったのはやはりエヴァと刀子と高畑のみであった。

次点で木乃香も一度だけ他の少女より威力があったが、後は本当に最低限使えただけと言える。

当然ながらみんなで使って満足がいくほど大量には横島も持ってるはずはなく、なんちゃって魔法に浸って遊んでいた少女達には物足りない様子だった。


「貴方の世界だと符術は一般人も使えるものがあるのね。」

「そうですね。 厳密に言うと俺の世界はこっちの世界と霊的っていうか魔法的な環境が全然違うんっすよ。 魔法の技術的にはこっちが基本的には進んでますけど。 あの手の札は一般人も使えることは使えますよ。 尤もお札の種類と威力に問題があるので普通は誰も使いませんけど。」

破魔札で少し魔法にもやる気が出たのか水着を着た少女達は砂浜で西洋魔法の練習を始めるが、刀子とエヴァは破魔札に興味があるようで何気なく語る横島の説明を興味深げに聞いている。

今回使った破魔札自体たいしたことないのは当然理解しているが、重要なのは一般人にも使えることだろう。


「貴様なら一般人も普通に使える符をもっと作れるんじゃないのか?」

「作れるよ。 もう隠しても意味がないから言うけど、俺の技術の大半は人間のものじゃないし。 ただ絶対にめんどくさいことになりそうだから作らないけど。」

加えてエヴァに至っては横島が自分でお札の類いを作れることを半ば確信していて、独自の術が開発出来ることもすでに読んでいた。

これに関してはエヴァ自身もまた独自に魔法を開発出来ることや、横島の魔法を見た上での推測ではあったがほぼ当たっていて横島も隠すことはなかった。


「めんどくさいどころの騒ぎじゃないわよ。 世界がひっくり返るわ。 現在居る魔法使いから優位性がほとんど無くなるですもの。 あの子達に口止めしないと。」

ただそんな話を聞いた刀子は少し迷うがエヴァと顔を見合わせると即決断して、すぐに破魔札の存在を口止めするために少女達を集めきつく口止めをする。

一般人が使える破魔札に関しては決して口外していいものではないという結論に達した刀子であるが、皮肉にもそれは先程お互いの立場の違いが明らかになったエヴァと同じ結論であり口には出さないがエヴァも口止めしろと言いたげであった。

ちなみに少女達はまた秘密が増えるのかと少し困ったような表情を見せるも、横島と一緒に居てその恩恵に預かる限りは今後も秘密が増えていくんだろうなと覚悟もしている。


「タカミチ、貴様もだぞ。」

なお高畑に関してはエヴァ直々に釘を刺していて、エヴァの中で高畑の信用度が今回の件で急降下したことを印象付けることになった。


「タマモ、スイカでも切ってくるか?」

「うん!」

結果として横島とタマモは二人だけになるが、ある意味一番危機感のない二人は刀子とエヴァの話が終わる前に今日のおやつにと持参したスイカを切る為に別荘内に入っていく。


「おーい、スイカ切って来たぞ。」

その後何処か他人事のような横島とタマモがスイカを切って砂浜に戻ると、そのあまりの危機感の無さに刀子とエヴァばかりか木乃香達やあやか達までが渋い表情をする。

美砂達なんかは我先にとスイカに駆け寄るが、普段は頼りにしていいのか微妙な横島なだけになんとも言えない様子であった。


「あっ、そうだ。 船も持ってきたんだ。 欲しいって言っただろ?」

結局スイカを食べると再び魔法の練習に戻る者や海で遊ぶ者などそれぞれが自由に過ごしていくが、横島は忘れていた事を思い出したように船を持ってきたと告げる。


「船?」

「いや前にエヴァちゃんと向こうで空飛ぶ乗り物あげる約束しただろ。」

今度は突然何を言い出したのかと周囲の注目を集めるが、それはエヴァが異空間アジト訪問でどさくさに紛れて空飛ぶ乗り物が欲しいと頼んだ件であった。
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