平和な日常~冬~5
「あっ、葛葉先生も来たん?」
「今日の食事会は私も学園長先生のお供として参加するのよ。 関西の交渉団には私の父も居るし少し気が重いんだけどね。」
一方近衛邸で料理を始める横島達であるがここで料理を作るのも二度目なので前回よりもリラックスした感じだ。
魔法協会の交渉団の食事会ということで夕映やのどかはそれなりに緊張感を持っているが、そんな時刀子が厨房に様子を見に来る。
実は今日の食事会は近右衛門に頼まれ刀子も参加する予定になっていた。
元々刀子は関東魔法協会にて近右衛門や木乃香などのVIPの護衛を統括する仕事はしてるが、他は各部署に臨時の助っ人で行くくらいでそれ以外は特に役職に着いてもなければ重要な仕事をしてるわけではない。
ただ現状で東西双方に事実上所属してる人間が近衛家以外では刀子しか居なく、その立場は若干微妙ではあるが食事会くらいには参加せねばならないだろう。
ちなみに似たような境遇の刹那に関しては実は正式に関東に所属まではしてなく、正式には横島と同じ近衛家による私的雇用になっていたので参加を免れていた。
この件に関しては刹那がまだ一四才という年齢であることと、関東に馴染めぬ場合には関西に帰すことも考慮していたので数年は私的雇用の形を取っているのだ。
「なんというか、御苦労様です。」
厨房には横島達しかおらずに刀子は思わず気が重いと愚痴るのだが、長い間敵対していたような組織の食事会に微妙な立場の刀子が肉親である父と一緒に出るという事実に、夕映は思わず御愁傷様と言いそうになるがなんとか御苦労様という言葉に言い変えている。
近右衛門のように立場が上の場合も大変だろうが、若く立場が低い刀子がもっと大変なのは考えるまでもない。
「実際に私が役に立つかは別だけど、顔を出さなきゃ出さないで問題なのよね。」
現実問題として刀子は東西の交渉団の中でよく知るのは父くらいで、後はかろうじて顔を知ってるかくらいである。
立場が微妙なので余計なことはもちろん言えないが、東西の交渉団の慰労というならば参加せねば特に関西に戻った父が後で何を言われるかわかったものではない。
そしていよいよ食事会は始まるが全体として和やかとまでは言えない雰囲気であった。
別に雰囲気が悪いわけではないが、強いてあげるならば交渉の時と同じ緊張感が続いている。
近右衛門としては交渉の苦労を労い今夜は交渉を忘れて楽しんで欲しいと挨拶はしたが、それを真に受けて騒ぐような大人は当然ながら居るはずもない。
「これはまた珍しい料理ばかりですな。」
「どれも有名な郷土料理ですが、意外に食べたことがない物も多い。」
とりあえず仕事の話をしないようにとすると会話の中心は自然と料理が中心になる。
ある意味無難に話を繋ぐには一番いいし、なんの脈略もない料理の数々は話題という意味では事欠かなかった。
「ゴーヤとは懐かしい。 実は私の母は沖縄出身でね。 幼い頃に食べたお袋の味というやつです。 最近では比較的簡単に手に入りますけど、昔はなかなか手に入らなくてね。」
そんな緊張感が溶けぬまま食事会は続くが、ふとした瞬間に関西側の一人がゴーヤチャンプルー食べると懐かしそうに自身の母の話を始める。
「母が若い頃は沖縄はアメリカの統治下にありましてね。 なかなか故郷の料理を食べられなかったと語ってました。」
近年では全国的に沖縄の料理が食べられるようになったが一昔前には食材を手に入れるのも苦労した時代があった。
母が沖縄出身だと語った彼は母の若い頃の伝え聞いた苦労を語ると、母の苦労を噛み締めるようにお袋の味とも言える料理を頬張る。
母とは少し違う味付けに懐かしさと寂しさの両方を感じつつも、それでも母を思い出す味に涙が出るようだった。
「今日の食事会は私も学園長先生のお供として参加するのよ。 関西の交渉団には私の父も居るし少し気が重いんだけどね。」
一方近衛邸で料理を始める横島達であるがここで料理を作るのも二度目なので前回よりもリラックスした感じだ。
魔法協会の交渉団の食事会ということで夕映やのどかはそれなりに緊張感を持っているが、そんな時刀子が厨房に様子を見に来る。
実は今日の食事会は近右衛門に頼まれ刀子も参加する予定になっていた。
元々刀子は関東魔法協会にて近右衛門や木乃香などのVIPの護衛を統括する仕事はしてるが、他は各部署に臨時の助っ人で行くくらいでそれ以外は特に役職に着いてもなければ重要な仕事をしてるわけではない。
ただ現状で東西双方に事実上所属してる人間が近衛家以外では刀子しか居なく、その立場は若干微妙ではあるが食事会くらいには参加せねばならないだろう。
ちなみに似たような境遇の刹那に関しては実は正式に関東に所属まではしてなく、正式には横島と同じ近衛家による私的雇用になっていたので参加を免れていた。
この件に関しては刹那がまだ一四才という年齢であることと、関東に馴染めぬ場合には関西に帰すことも考慮していたので数年は私的雇用の形を取っているのだ。
「なんというか、御苦労様です。」
厨房には横島達しかおらずに刀子は思わず気が重いと愚痴るのだが、長い間敵対していたような組織の食事会に微妙な立場の刀子が肉親である父と一緒に出るという事実に、夕映は思わず御愁傷様と言いそうになるがなんとか御苦労様という言葉に言い変えている。
近右衛門のように立場が上の場合も大変だろうが、若く立場が低い刀子がもっと大変なのは考えるまでもない。
「実際に私が役に立つかは別だけど、顔を出さなきゃ出さないで問題なのよね。」
現実問題として刀子は東西の交渉団の中でよく知るのは父くらいで、後はかろうじて顔を知ってるかくらいである。
立場が微妙なので余計なことはもちろん言えないが、東西の交渉団の慰労というならば参加せねば特に関西に戻った父が後で何を言われるかわかったものではない。
そしていよいよ食事会は始まるが全体として和やかとまでは言えない雰囲気であった。
別に雰囲気が悪いわけではないが、強いてあげるならば交渉の時と同じ緊張感が続いている。
近右衛門としては交渉の苦労を労い今夜は交渉を忘れて楽しんで欲しいと挨拶はしたが、それを真に受けて騒ぐような大人は当然ながら居るはずもない。
「これはまた珍しい料理ばかりですな。」
「どれも有名な郷土料理ですが、意外に食べたことがない物も多い。」
とりあえず仕事の話をしないようにとすると会話の中心は自然と料理が中心になる。
ある意味無難に話を繋ぐには一番いいし、なんの脈略もない料理の数々は話題という意味では事欠かなかった。
「ゴーヤとは懐かしい。 実は私の母は沖縄出身でね。 幼い頃に食べたお袋の味というやつです。 最近では比較的簡単に手に入りますけど、昔はなかなか手に入らなくてね。」
そんな緊張感が溶けぬまま食事会は続くが、ふとした瞬間に関西側の一人がゴーヤチャンプルー食べると懐かしそうに自身の母の話を始める。
「母が若い頃は沖縄はアメリカの統治下にありましてね。 なかなか故郷の料理を食べられなかったと語ってました。」
近年では全国的に沖縄の料理が食べられるようになったが一昔前には食材を手に入れるのも苦労した時代があった。
母が沖縄出身だと語った彼は母の若い頃の伝え聞いた苦労を語ると、母の苦労を噛み締めるようにお袋の味とも言える料理を頬張る。
母とは少し違う味付けに懐かしさと寂しさの両方を感じつつも、それでも母を思い出す味に涙が出るようだった。