麻帆良祭への道

その頃魔法世界の新オスティア総督府ではオスティア総督であるクルト・ゲーデルが、メガロメセンブリアからの情報を見て意味ありげな笑みを浮かべていた


「ネギ君はいよいよ卒業ですか……」

それはメガロメセンブリアの本国に居る支援者からの情報で、ネギ・スプリングフィールドが魔法学校を卒業することと卒業後の修行先を求めて本国の穏健派に支援要請が極秘のうちに出されたとの情報である

クルト・ゲーデルはかつて赤き翼の仲間だった人物で、大戦後ナギ達と別れてメガロメセンブリアで元老院議員になった人物だった

クルトは元老院では中間派に属する議員で、かつて赤き翼の仲間だった事も上手く利用しており若手の有望株として名を馳せている

現在はオスティア総督という地位に着いているが、これは名誉職としてはそれなりの地位の職であり若きクルトは異例の出世だと一般的には知られているが……

実際はクルトを本国の元老院から離す為の措置だった

決して世間に明かせない魔法世界の根幹に関わる秘密から大戦中の裏側まで知るクルトは、元老院の強行派のみらず上層部からも疎まれている

元々の才能からか政治的な力を付けつつあるクルトを元老院上層部はオスティア総督府に封じ込めたと言える状況だった


オスティアは魔法世界の文明発祥の聖地であり世界最古の王国があった土地だが、戦略的な価値はともかく政治的には些か離れた辺境と言える土地だった



「早くネギ君に会いたいですね。 彼が居れば多くの同胞が救えるかもしれない」

メルディアナ学校長がネギを麻帆良に送る為に本国の穏健派に協力を求めた事は、クルトにとってチャンスである

ネギの存在があればメガロメセンブリアの元老院を掌握する事も決して不可能ではなく、滅びゆく世界から多くの同胞を救い出せる可能性があるのだから……


「近衛近右衛門。 確かにネギ君を安全に成長させるには彼の元が最適かもしれない。 しかし彼を動かすにはそれ相応の土産が入りますね」

クルトは以前からネギに注目してその動向を探らせていたが、現状では些か期待外れな感じも否めない

もう少し心身共に成長を促さなければ、命を狙う者が居る魔法世界では生きていけないとクルトは考えている

その為にも近右衛門がネギを受け入れるような土産が必要だった


「うむ……、旧世界側の魔法協会が求めてる戦時の指揮命令権をあちら側に渡す必要がありますね」

しばらく考え込んでいたクルトだったが、地球側の魔法協会が求めてる戦時の指揮命令権の問題を譲歩する必要があると考えている

戦時の指揮命令権とは本国であるメガロメセンブリアが戦争状態になった時に、地球側の魔法協会の指揮命令権を強制的にメガロメセンブリア元老院が徴発する法律だった

元々は地球側の魔法協会がメガロメセンブリアの完全な支配体制だった時代の法律なのだが、長い月日が過ぎた現在は地球側の魔法協会はメガロメセンブリアや地元国家の中間的な立ち位置の組織になっている


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