その後、日暮れと共に店から常連の女子中高生の姿が消えると横島は早々に店を閉めて料理の準備に専念する。

この頃になるとようやくベッドから出して貰えた明日菜も一階に降りて来ていて、タマモはついでに昨夜から一緒だった二体のハニワ兵も連れて降りて来ていた。


「アスナ、インフルエンザもう大丈夫なの？ 流石に体が丈夫ね。」

「悪化する前に治療して貰ったのよ。 あの子お医者さんみたいで。」

「へー、医者のハニワくんも居るんだ。」

インフルエンザに感染して僅か一日で回復した明日菜に友人の少女達は流石に驚き元々体が丈夫だったことからだろうと噂をするが、明日菜は少し苦笑いを浮かべてタマモが連れてきた二体目のハニワ兵について説明する。

以前ならばここで馬鹿は風邪引かないとの言葉からからかわれるところだが、最近はもう定期テスト以外の日常のミニテストなんかでも美砂達と同レベルかそれ以上の時もよくあるので流石に言われなくなっていた。

バカレッドのアダ名はすでに死語と化していて時折あの明日菜が立派になったと、まるで子供の成長を喜ぶ親のように涙を拭う仕草で言われる程度だ。

現実問題として今も横島やのどかが居ないと成績は落ちるのだろうが、のどかと明日菜は完全に互いに助け合うことで成績を安定させているのでこの関係は当分変わらないだろう。

横島に関して言えば最近は明日菜よりのどかを教える時間が増えたほどで、それだけ明日菜は安定している。


「かぜひいたら、わたしたちがかんびょうするからね！」

一方タマモは二体のハニワ兵と共に次なる患者を求めて少女達の診察をしていた。

現在インフルエンザが流行しているので誰が感染してもおかしくはないのだが、今のところ横島の周囲では明日菜だけである。

まあ客商売ということもあり基本的に横島の周囲はインフルエンザ予防に熱心だからだろう。



「そろそろ来るみたいよ。」

そして本日の主役である千鶴が店に来る前にいつものメンバープラス雪広さやかと那波家の人達も店に到着していた。

恐らくバレてるだろうが一応本人に内緒のサプライズであり家族が来てることは気付かれてないだろう。

ちなみに前回居なかった刀子も今日はちゃっかり参加している。

実は刀子に関しては異空間アジトから戻ってから少女達の間では、これからは学校の外では教師としてではなくなるべく友人として扱おうという話をしていた。

この件に関しては刀子自身が異空間アジトに居た時に教師としての立場や魔法関係者としての立場で大変だと普段は言えない本音を暴露していたことから始まる。

横島という一人の男性を間に挟みライバルとも言えるし仲間とも言える刀子を少女達はいろいろ気にしていたのだ。

刀子自身が横島や少女達のために時間が必要だと告げて自分も待つと言う以上は、少女達の側も刀子に今まで以上に配慮が必要だと思っている。

美砂達なんかは特に刀子が年齢的なものを気にしていることを感じており、あまり追い詰めたくないのが本音にもあったが。

ただ少女達も刀子も現状を変えたくないとの想いはみんな同じで、出来ればこのまま上手く行ってほしいと思っているのだ。

正直なところ横島と一緒に居続ける道を選ぶには、人として普通に結婚して家庭を築くのは不可能なのだろうとみんな薄々は気付いている。

現状ではそれもいいかもしれないと漠然とは思うが、現実的なことを考えると寿命の違いや今ある家族のことなどいろいろ問題も残っていた。

特に木乃香に関しては魔法協会の未来を考えられない原因も一つはそんな横島と自分達の未来が見えないからでもある。

将来的に横島や友人達が魔法協会から離れて、自分一人が魔法協会に取り残されるような未来もあるかと思うと簡単に答えなど出ない。

両親や祖父には申し訳ないとは思うが現状の木乃香にとって魔法協会はさほど大切ではなかった。