平和な日常~冬~5
さてその後の明日菜はほとんど熱も上がらずに順調に快復して翌朝を迎えていた。
ただそれでも流石に一晩で完治とはいかなくこの日は新聞配達を休み学校も休むことになる。
タマモに関しては結局一晩中明日菜に付き添っていたが睡魔には勝てずに眠ってしまい、明日菜が自分のベッドに入れて一緒に寝ることになっていた。
まあ朝起きたタマモは自分がなんで明日菜と一緒に寝てるのか分からずに不思議そうにしていたが、それはそれとして深く考えずに起きたらすぐに明日菜の看病を再開している。
「ウチがまた顔を出せばええんやね。」
「うむ、前回と同じく特に何かを言う必要はないが顔を出してくれると助かる。」
一方この日の昼休みになると木乃香は近右衛門に呼ばれて学園長室に来ていた。
何事かと思った木乃香であるが用件は現在行われている東西の魔法協会の協力交渉の担当者達を、明日の夜に近右衛門が自宅に招いて食事会をするので横島と共に料理を作り最後に顔を出して挨拶して欲しいとのことらしい。
「ウチは別にええけど、交渉って上手く行ってへんの?」
「今のところ上手く行っておるが、成果が出るのはまだまだ先じゃろう。 長い間対立しておったからのう。」
横島にも今朝連絡して仕事の依頼をして了解を得たとのことだが、木乃香は以前少しだけ小耳に挟んだ東西協力の行方を気にしている。
当然のことだが両親と祖父の所属する組織の対立など見ていて気持ちがいいものではない。
ただ木乃香ですらも東西協力が簡単でないのは十二分に理解はしていた。
「すまんのう。 本当は木乃香には迷惑をかけたくはないのじゃが。」
「気にせんでええよ。 ウチが顔を出すだけで少しでも上手くいくならやらな損やん。」
この件に関して近右衛門は正直なところあまり気乗りはしてなく、まだ魔法を知ったばかりの孫娘を魔法協会の問題解決に利用するようなやり方は本意ではない。
しかし東西協力の旗振り役はどう考えても近衛家がせねばならないし、東西双方に所属しない木乃香だからこそ顔見せすることで東西双方の交渉団に対してより協力を促す効果がある。
現実問題として魔法世界のタイムリミットなどを考えると東西協力の交渉はもっと早めねばならないのが現実だった。
「いつの間にか、大人になったのう。」
一方の木乃香は自分が顔見せすることで交渉が上手くいくのならば、協力することに全く異論はなかった。
正直なところ現段階で将来魔法協会を継げと言われると困るのだが、そこはもし誰かに聞かれても絶対に明言しないようにと近右衛門や両親から言われている。
加えてあやかや千鶴からは周りが好きなように誤解するくらいは構わないので、あえて放置して誤解させたらいいとアドバイスも貰ってもいた。
事実上の後継者として扱われることに木乃香自身は当初少し悩んでもいたのだが、言い方は良くないかもしれないが好きなように誤解させておけばいいとのことである。
どのみち木乃香が将来を決めるまでにはまだ時間もあるし、近右衛門達が将来的な魔法協会の統合を目指してることも木乃香達はすでに知っていた。
どうなるか分からない将来の魔法協会に対して現状で木乃香が立場や将来を明確にしない範囲での協力ならば、木乃香自身の将来に与える影響は限定的だとの見方を木乃香達はしている。
「魔法協会に関しては正直どうしたらいいか分からへんけどね。」
「それは構わんよ。 将来はゆっくり考えるといいじゃろう。 ワシも婿殿も当分現役じゃ。」
結果として木乃香は状況を利用して強かに生きることにするのだが、それは一年前の木乃香からは想像も出来ないことだった。
現実の厳しさなど無縁だったはずの孫娘が僅か一年足らずでこれほど世間に揉まれ成長するとは、近右衛門ですら考えもしなかったことである。
綺麗事や理想論ではなく現実的な方法を選べるようになった木乃香が近右衛門は頼もしく感じていた。
ただそれでも流石に一晩で完治とはいかなくこの日は新聞配達を休み学校も休むことになる。
タマモに関しては結局一晩中明日菜に付き添っていたが睡魔には勝てずに眠ってしまい、明日菜が自分のベッドに入れて一緒に寝ることになっていた。
まあ朝起きたタマモは自分がなんで明日菜と一緒に寝てるのか分からずに不思議そうにしていたが、それはそれとして深く考えずに起きたらすぐに明日菜の看病を再開している。
「ウチがまた顔を出せばええんやね。」
「うむ、前回と同じく特に何かを言う必要はないが顔を出してくれると助かる。」
一方この日の昼休みになると木乃香は近右衛門に呼ばれて学園長室に来ていた。
何事かと思った木乃香であるが用件は現在行われている東西の魔法協会の協力交渉の担当者達を、明日の夜に近右衛門が自宅に招いて食事会をするので横島と共に料理を作り最後に顔を出して挨拶して欲しいとのことらしい。
「ウチは別にええけど、交渉って上手く行ってへんの?」
「今のところ上手く行っておるが、成果が出るのはまだまだ先じゃろう。 長い間対立しておったからのう。」
横島にも今朝連絡して仕事の依頼をして了解を得たとのことだが、木乃香は以前少しだけ小耳に挟んだ東西協力の行方を気にしている。
当然のことだが両親と祖父の所属する組織の対立など見ていて気持ちがいいものではない。
ただ木乃香ですらも東西協力が簡単でないのは十二分に理解はしていた。
「すまんのう。 本当は木乃香には迷惑をかけたくはないのじゃが。」
「気にせんでええよ。 ウチが顔を出すだけで少しでも上手くいくならやらな損やん。」
この件に関して近右衛門は正直なところあまり気乗りはしてなく、まだ魔法を知ったばかりの孫娘を魔法協会の問題解決に利用するようなやり方は本意ではない。
しかし東西協力の旗振り役はどう考えても近衛家がせねばならないし、東西双方に所属しない木乃香だからこそ顔見せすることで東西双方の交渉団に対してより協力を促す効果がある。
現実問題として魔法世界のタイムリミットなどを考えると東西協力の交渉はもっと早めねばならないのが現実だった。
「いつの間にか、大人になったのう。」
一方の木乃香は自分が顔見せすることで交渉が上手くいくのならば、協力することに全く異論はなかった。
正直なところ現段階で将来魔法協会を継げと言われると困るのだが、そこはもし誰かに聞かれても絶対に明言しないようにと近右衛門や両親から言われている。
加えてあやかや千鶴からは周りが好きなように誤解するくらいは構わないので、あえて放置して誤解させたらいいとアドバイスも貰ってもいた。
事実上の後継者として扱われることに木乃香自身は当初少し悩んでもいたのだが、言い方は良くないかもしれないが好きなように誤解させておけばいいとのことである。
どのみち木乃香が将来を決めるまでにはまだ時間もあるし、近右衛門達が将来的な魔法協会の統合を目指してることも木乃香達はすでに知っていた。
どうなるか分からない将来の魔法協会に対して現状で木乃香が立場や将来を明確にしない範囲での協力ならば、木乃香自身の将来に与える影響は限定的だとの見方を木乃香達はしている。
「魔法協会に関しては正直どうしたらいいか分からへんけどね。」
「それは構わんよ。 将来はゆっくり考えるといいじゃろう。 ワシも婿殿も当分現役じゃ。」
結果として木乃香は状況を利用して強かに生きることにするのだが、それは一年前の木乃香からは想像も出来ないことだった。
現実の厳しさなど無縁だったはずの孫娘が僅か一年足らずでこれほど世間に揉まれ成長するとは、近右衛門ですら考えもしなかったことである。
綺麗事や理想論ではなく現実的な方法を選べるようになった木乃香が近右衛門は頼もしく感じていた。