平和な日常~冬~5

「明日菜ちゃんインフルエンザか?」

麻帆良亭の限定復活も終わり横島の店は平常営業に戻るが、麻帆良では少し前からインフルエンザが流行し始めていた。

横島自身はインフルエンザには感染しないが、タマモとさよを除く周りの少女達は感染する可能性もあるので食事などは最近特に気を付けている。


「今のところちょっとダルいだけなんですけど。 でも私体が丈夫なの取り柄ですから大丈夫です。」

そんな一月もあと数日となったこの日、いつも元気なはずの明日菜の体調がおかしいのに気付いたのは横島とタマモだった。

本人的には少しダルいだけだとは言うがタマモは心配なのか明日菜の側を離れなくなったし、横島も手が空いた隙に店を木乃香達に任せて明日菜を裏に呼び体調を確認し始めていた。


「かぜひいたらねてなきゃだめだよ。」

一方のタマモはどうやら先程から明日菜を二階に連れて行って休ませようとしてるらしいが、明日菜が大丈夫だと拒否してるらしい。


「タマモ、明日菜ちゃんが風邪か調べるから少し待ってるんだぞ。」

珍しく少し怒った様子で明日菜を心配するタマモを宥めた横島は、明日菜がインフルエンザに感染してるか調べることにする。

素人がインフルエンザ検査なんて出来るのかと疑問を抱く明日菜であるが、横島は普通じゃないからと言われた通りにしていた。

方法は至って簡単で喉の奥の粘液を綿棒で採取するところまでは一般のインフルエンザ検査と同じであり明日菜も驚きなどなかったが、ここで横島が影からかつてヒャクメが使っていた鞄を取り出すと明日菜はどっから出したのかと不思議そうに横島の影を見ている。


「そんな変な鞄どっから出したんですか?」

「影の中だよ。 影の中に特殊な空間を作って物置代わりにしてるんだ。」

今まで見た魔法で一番便利そうな魔法だなと珍しく関心する明日菜であったが、横島は鞄から神通パソコンを取り出すと粘液のついた綿棒をそのまま成分分析していく。

流石に横島もインフルエンザのデータなど持ってないが、神通パソコンは異空間アジトのメインシステムと繋がってるので簡単な調査ならばすぐに結果が出る。


「やっぱインフルエンザだな。 薬はすぐに用意するから二階に行って今日は寝てた方いいな。 大丈夫だろうけど一応今夜は家に泊まって様子を見るか。」

明日菜はやはりインフルエンザに感染していたようで、横島は病院に行くべきか少し悩む明日菜を半ば強制的に休ませることにしていた。


「病院に行かなくて大丈夫ですか?」

「このタイプのインフルエンザ薬なら向こうに備蓄があるから病院は要らんな。 術っていうか魔法でも治せるには治せるが明日菜ちゃんは抵抗力と自然治癒力を上げる魔法料理で十分だな。」

「治せるならすぐに治してくれた方が……。」

「人の体には抵抗力や自然治癒力があるからな。 あんまり過保護にするのは良くないんだわ。 心配しなくてもタマモが看病してくれるって。」

明日菜の場合は病院に行くのが苦手という訳ではなく病院に行けばお金がかかるなと思っていて、どうせ治るなら市販の風邪薬でいいだろうかと悩んでいたらしい。

ただ明日菜の感染したインフルエンザは治療薬が異空間アジトの備蓄にあったらしく、横島はそれを飲ませて一晩様子を見ることにしていた。

症状的には女子寮に返してもいいのだが寮に返すと部屋が同室の木乃香に感染する可能性もあるので、一晩預かることにしたようである。

ぶっちゃけ横島ならばインフルエンザなど文珠を使えば瞬時に治せるが、それをしないのはあんまり過保護にして体の抵抗力や自然治癒力が落ちるのは良くないからであった。

この辺りはかつて魔鈴が魔法と魔法が人の体に与える影響などを研究していたので、その知識に基づく判断である。

結局明日菜はタマモに連れられて二階に上がっていくことになった。

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