平和な日常~冬~5
その後も順調に営業は続くが混雑のピークはやはりお昼時だった。
前回を上回る行列に並ぶのを諦める人が出るほどであるが、同時に予約客に対する不満も僅かだがちらほらと囁かれている。
事前に十分な告知をしていたとはいえ、寒い中で並ぶ自分達を差し置いて予約客を別扱いすることにはやはり賛否両論があるようだ。
尤も不満をこぼしているのがほとんど麻帆良亭やマホラカフェの常連ではない、一見さんであることが皮肉であり面白いところかもしれない。
ただ現状ではたまに不機嫌そうに後何分待ちかと尋ねる程度で特に大きな問題にはなってなく、そもそも待てない人間は並ばないのが普通で麻帆良でも飲食店に限らず行列は時々あることなのである。
実は一組だけ問題を起こしそうなガラの悪い連中が並ぶには並んだのだが、彼らは運悪くすぐ前に居た豪徳寺と友人達にガンを飛ばした結果勝手にびびって捨て台詞を吐いて去っていたりもするが。
ちなみに豪徳寺と友人達の名誉の為に説明すると豪徳寺達は笑って彼らの態度を受け流し、勝負ならいつでも受けると爽やかに答えたのだが逆にそれが怖かったのだろう。
特に豪徳寺の場合は見た目の関係から時々因縁を付けられるため、そういう連中に慣れているなんて事情もあった。
まあその光景を見ていた横島の店の常連の女子中高生達は、甘党で実はいい人である豪徳寺に因縁を付けたお馬鹿さんに爆笑していたが。
「まあ想定の範囲内というとこでしょうか。」
「そうだね。 良かった。」
そして一同が休憩に入ったのは一時を過ぎてからだった。
厨房の隅では夕映・のどか・美砂・タマモが昼食にしていたが、夕映とのどかは伝票の束を片手に食べながら午前の状況を確認している。
些か行儀が悪いものの残念ながら食後にゆっくり確認している時間はない。
坂本夫妻の夫や横島と軽く打ち合わせをしながら、もし足りない食材などが出てくれば早めに買いにいかねばならないかもしれないのだ。
元々仕込み量や各メニューの販売予定数なんかを坂本夫妻と実質的に話し合い決めたのは夕映とのどかである。
前回は途中で食材が足りなくなった失敗があっただけに、基本的には前回の売り上げを目安に麻帆良亭時代の各メニューの売れ行きや横島の店の常連の傾向にこの日の天気までも考慮に入れて慎重に決めていた。
ちなみに残りの横島や木乃香達なんかも一応話し合いには参加していたが、細かい数字は夕映達が真剣に考えた物でいいやとほぼ丸投げしている。
横島自身は相変わらず追い詰められないと真剣にならないので店の収益には木乃香達がビックリするほど興味がなく、多少仕入れや仕込みが多いくらいでいいだろうと言って終わってしまうのだ。
流石にもう周りは横島の収入までは心配はしてないものの、坂本夫妻の手前一定の収益は上げる必要があった。
まあそもそも麻帆良亭の限定復活とはいえ基本的な店の運営自体は完全に現店主である横島のものであり、坂本夫妻は立場的には雇われの身になっている。
この件に関して実は横島としては本音では坂本夫妻に主導権を渡して一日限定で自分達が雇われの身になっても良かったのだが、そうすると軽費や収益の責任なんかも坂本夫妻が考えなければならないので現実的ではなかった。
「藤井さんは何かありますか?」
「いや、特にないです。」
一方藤井はアルバイトの子だと思っていた夕映とのどかが、実質的に店の主導権を握り午後の予測や在庫確認などして坂本夫妻の夫と打ち合わせをする姿を不思議そうに見ていた。
店主である横島は追認の返事でほぼ終わっていて、それは横島が思ってる以上に違和感がある光景のようだ。
最後に藤井自身にも夕映は意見を求めるが、何故か藤井の返事は敬語口調になってしまい坂本夫妻の夫に微かに笑われていた。
前回を上回る行列に並ぶのを諦める人が出るほどであるが、同時に予約客に対する不満も僅かだがちらほらと囁かれている。
事前に十分な告知をしていたとはいえ、寒い中で並ぶ自分達を差し置いて予約客を別扱いすることにはやはり賛否両論があるようだ。
尤も不満をこぼしているのがほとんど麻帆良亭やマホラカフェの常連ではない、一見さんであることが皮肉であり面白いところかもしれない。
ただ現状ではたまに不機嫌そうに後何分待ちかと尋ねる程度で特に大きな問題にはなってなく、そもそも待てない人間は並ばないのが普通で麻帆良でも飲食店に限らず行列は時々あることなのである。
実は一組だけ問題を起こしそうなガラの悪い連中が並ぶには並んだのだが、彼らは運悪くすぐ前に居た豪徳寺と友人達にガンを飛ばした結果勝手にびびって捨て台詞を吐いて去っていたりもするが。
ちなみに豪徳寺と友人達の名誉の為に説明すると豪徳寺達は笑って彼らの態度を受け流し、勝負ならいつでも受けると爽やかに答えたのだが逆にそれが怖かったのだろう。
特に豪徳寺の場合は見た目の関係から時々因縁を付けられるため、そういう連中に慣れているなんて事情もあった。
まあその光景を見ていた横島の店の常連の女子中高生達は、甘党で実はいい人である豪徳寺に因縁を付けたお馬鹿さんに爆笑していたが。
「まあ想定の範囲内というとこでしょうか。」
「そうだね。 良かった。」
そして一同が休憩に入ったのは一時を過ぎてからだった。
厨房の隅では夕映・のどか・美砂・タマモが昼食にしていたが、夕映とのどかは伝票の束を片手に食べながら午前の状況を確認している。
些か行儀が悪いものの残念ながら食後にゆっくり確認している時間はない。
坂本夫妻の夫や横島と軽く打ち合わせをしながら、もし足りない食材などが出てくれば早めに買いにいかねばならないかもしれないのだ。
元々仕込み量や各メニューの販売予定数なんかを坂本夫妻と実質的に話し合い決めたのは夕映とのどかである。
前回は途中で食材が足りなくなった失敗があっただけに、基本的には前回の売り上げを目安に麻帆良亭時代の各メニューの売れ行きや横島の店の常連の傾向にこの日の天気までも考慮に入れて慎重に決めていた。
ちなみに残りの横島や木乃香達なんかも一応話し合いには参加していたが、細かい数字は夕映達が真剣に考えた物でいいやとほぼ丸投げしている。
横島自身は相変わらず追い詰められないと真剣にならないので店の収益には木乃香達がビックリするほど興味がなく、多少仕入れや仕込みが多いくらいでいいだろうと言って終わってしまうのだ。
流石にもう周りは横島の収入までは心配はしてないものの、坂本夫妻の手前一定の収益は上げる必要があった。
まあそもそも麻帆良亭の限定復活とはいえ基本的な店の運営自体は完全に現店主である横島のものであり、坂本夫妻は立場的には雇われの身になっている。
この件に関して実は横島としては本音では坂本夫妻に主導権を渡して一日限定で自分達が雇われの身になっても良かったのだが、そうすると軽費や収益の責任なんかも坂本夫妻が考えなければならないので現実的ではなかった。
「藤井さんは何かありますか?」
「いや、特にないです。」
一方藤井はアルバイトの子だと思っていた夕映とのどかが、実質的に店の主導権を握り午後の予測や在庫確認などして坂本夫妻の夫と打ち合わせをする姿を不思議そうに見ていた。
店主である横島は追認の返事でほぼ終わっていて、それは横島が思ってる以上に違和感がある光景のようだ。
最後に藤井自身にも夕映は意見を求めるが、何故か藤井の返事は敬語口調になってしまい坂本夫妻の夫に微かに笑われていた。