平和な日常~冬~5
さてフロアでは開店してほどなく満席となり早くも僅かではあるが行列が出来始めていた。
ただ坂本夫妻の妻を筆頭にフロアで働く夕映達は、人数を十分用意していたので比較的余裕がある。
「お久しぶりですね。 ご立派になられて。」
「ああ、見た目だけは立派になったよ。 しかしここは変わらないな。 ほとんどあの頃のままだ。」
これも前回の限定復活の時に学んだことだが、麻帆良亭の元常連は料理は当然ながら坂本夫妻の妻との会話を楽しみに来る者が本当に多い。
その結果、坂本夫妻の妻は元常連の人々を中心に十分話を出来る時間を作ることを心がけていた。
今回夕映達が思っていた以上に接客になれていることから坂本夫妻の妻はフロアの采配をほとんど任せており、自身はお客さんへの挨拶に重点を置いている。
「タマちゃん、今日もお手伝い偉いね。」
「うん! がんばってるよ。」
「よし、ご褒美をあげよう。 今度お菓子でも買いなさい。」
「ワーイ! ありがとう!!」
そしてもう一人挨拶というか会話がメインになりつつあるのはタマモであった。
こちらは現在の常連や近くの住人など元常連ではない客が主であるが、あちこちから声をかけられては誉められたりお駄賃をもらったりしている。
お駄賃に関しては女子中高生は流石にあげることはないが、年配者を中心に時々貰うことがあるのだ。
金額は百円とか五百円とかで孫に小遣いをあげるような感じであり当初は横島も戸惑ったが、横島が申し訳ないからと言って返そうとしても受けとる人は居ないしあげる人は気にせずあげていた。
「いつもすいません。」
「いやいや、いいんだよ。 家は子供が結婚する気がないみたいで孫は諦めてるからね。 タマちゃんが孫みたいなもんだから。」
そしてお駄賃を貰ったタマモがすぐに近くに居たさよにそのことを報告すると、さよはあげた人にお礼を言いに来る。
結局横島はタマモにお駄賃を貰ったら自分か木乃香達に教えるように言っていて、誰かがすぐにお礼を言うことにしていたのだ。
「女将さん、あの子は?」
「今のこの店のオーナーの妹さんで看板娘なのよ。」
「へ~、随分と人気じゃないか。」
一方麻帆良亭の元常連はあちこちから引っ張りだこのタマモを物珍しげに見ている。
なんというか麻帆良亭は老舗の洋食屋にしては元々堅苦しくなく和やかで庶民的な雰囲気ではあったが、流石に小さな子供が手伝いをしていたことはない。
「働かせるの可哀想な気もするがなぁ。」
「本人がお手伝いが好きみたいで。 遊んでなさいって言うと仲間外れは嫌だって言うらしくって。」
それは端から見ると微笑ましい光景ではあるが、同時に可哀想だと感じる者もやはり居ない訳ではない。
子供は子供らしく遊んでというのは間違いではないがタマモに限って言えばそれは本人が全く望んでないのだ。
坂本夫妻の妻はその辺りをすでに理解していて、可哀想だと見る元常連に説明して歩いていた。
ちなみに以前タマモに対して直接もっと遊びたくないか?と聞いた者が居たが、タマモはお手伝いがいいと笑顔で即決して驚かせたなんて話もあるが。
基本的には思いやりのあるいい子だが極端な子供扱いや特別扱いは嫌がるのがタマモなのだ。
しかも意外に芯が強いこともあり、お手伝いに関しては誰かに言われて止めたことはない。
結果として偶然ではあるが過去を懐かしむ客が多い麻帆良亭の元常連にとって、未来に希望溢れるタマモの姿は少し眩しいくらいに見えていた。
終わったはずの店で過去を懐かしむ元常連達は、そんなタマモや夕映達などの次世代の輝きに目を細めることになる。
ただ坂本夫妻の妻を筆頭にフロアで働く夕映達は、人数を十分用意していたので比較的余裕がある。
「お久しぶりですね。 ご立派になられて。」
「ああ、見た目だけは立派になったよ。 しかしここは変わらないな。 ほとんどあの頃のままだ。」
これも前回の限定復活の時に学んだことだが、麻帆良亭の元常連は料理は当然ながら坂本夫妻の妻との会話を楽しみに来る者が本当に多い。
その結果、坂本夫妻の妻は元常連の人々を中心に十分話を出来る時間を作ることを心がけていた。
今回夕映達が思っていた以上に接客になれていることから坂本夫妻の妻はフロアの采配をほとんど任せており、自身はお客さんへの挨拶に重点を置いている。
「タマちゃん、今日もお手伝い偉いね。」
「うん! がんばってるよ。」
「よし、ご褒美をあげよう。 今度お菓子でも買いなさい。」
「ワーイ! ありがとう!!」
そしてもう一人挨拶というか会話がメインになりつつあるのはタマモであった。
こちらは現在の常連や近くの住人など元常連ではない客が主であるが、あちこちから声をかけられては誉められたりお駄賃をもらったりしている。
お駄賃に関しては女子中高生は流石にあげることはないが、年配者を中心に時々貰うことがあるのだ。
金額は百円とか五百円とかで孫に小遣いをあげるような感じであり当初は横島も戸惑ったが、横島が申し訳ないからと言って返そうとしても受けとる人は居ないしあげる人は気にせずあげていた。
「いつもすいません。」
「いやいや、いいんだよ。 家は子供が結婚する気がないみたいで孫は諦めてるからね。 タマちゃんが孫みたいなもんだから。」
そしてお駄賃を貰ったタマモがすぐに近くに居たさよにそのことを報告すると、さよはあげた人にお礼を言いに来る。
結局横島はタマモにお駄賃を貰ったら自分か木乃香達に教えるように言っていて、誰かがすぐにお礼を言うことにしていたのだ。
「女将さん、あの子は?」
「今のこの店のオーナーの妹さんで看板娘なのよ。」
「へ~、随分と人気じゃないか。」
一方麻帆良亭の元常連はあちこちから引っ張りだこのタマモを物珍しげに見ている。
なんというか麻帆良亭は老舗の洋食屋にしては元々堅苦しくなく和やかで庶民的な雰囲気ではあったが、流石に小さな子供が手伝いをしていたことはない。
「働かせるの可哀想な気もするがなぁ。」
「本人がお手伝いが好きみたいで。 遊んでなさいって言うと仲間外れは嫌だって言うらしくって。」
それは端から見ると微笑ましい光景ではあるが、同時に可哀想だと感じる者もやはり居ない訳ではない。
子供は子供らしく遊んでというのは間違いではないがタマモに限って言えばそれは本人が全く望んでないのだ。
坂本夫妻の妻はその辺りをすでに理解していて、可哀想だと見る元常連に説明して歩いていた。
ちなみに以前タマモに対して直接もっと遊びたくないか?と聞いた者が居たが、タマモはお手伝いがいいと笑顔で即決して驚かせたなんて話もあるが。
基本的には思いやりのあるいい子だが極端な子供扱いや特別扱いは嫌がるのがタマモなのだ。
しかも意外に芯が強いこともあり、お手伝いに関しては誰かに言われて止めたことはない。
結果として偶然ではあるが過去を懐かしむ客が多い麻帆良亭の元常連にとって、未来に希望溢れるタマモの姿は少し眩しいくらいに見えていた。
終わったはずの店で過去を懐かしむ元常連達は、そんなタマモや夕映達などの次世代の輝きに目を細めることになる。