異邦の占い師

(大丈夫か、ここの魔法協会は……)

学園側=魔法協会のはずなのだが、魔法に関わるはずの場所を探検する部活が公式にある事には横島も驚きだった


「一般人はウチら中学生と同じ地下3階までが入っていい場所なんよ。 それ以上は危険だからダメなんやて」

「うむ、どっからどこまでを突っ込んでいいのかわからんな~」

図書館島の説明を受けながら見学するように歩く横島だったが、最早ツッコミどころがありすぎて反応に困ってしまう


(例の学園を包む結界の影響か…… 怪しげなモノを気にしなくなるなんてよく考えた魔法だこと)

図書館島の地上部分を見学しながら話しを聞いていた横島だったが、ここの人間が予想以上に秘密や魔法を気にしない事に驚きも感じている

横島もまた元の世界では様々な奇跡や術を見て来たが、認識阻害の魔法は魔法を秘匿してきたこの世界ならではの魔法だった


(まあ、神族が地上に居ない世界だしな。 神魔界とのチャンネルが直接繋がってないし、この世界は悪霊なんかの発生率もかなり低いみたいだし悪いことばかりじゃないってか)

魔法の秘匿から世界の根源に関わる事まで僅かに考えていく横島だったが、この世界は表向きは元の世界と大差ないが根源的な部分では随分と違う事を改めて実感していた


「こりゃ本を探すのは一苦労だな。 しかも高い場所の本を取るのは危ないし……」

地上部分から地下へと降りて見学をしていく横島だったが、ここを利用する者は大変だろうと苦笑いを浮かべてしまう


「そうやな。 大学生の人が地下に貴重な本を探しに行く時は大変やって言ってたわ~ 時には命懸けなんやて」

「本を探すのに命懸けなんて嫌だな。 この情報機器が発達した時代になんてアナログな……」

「横島さん携帯もないし人の事言えないやん」

図書館なためあまり大きな声は出せない二人だが、それなりに楽しいらしく談笑しながら進んでいく



「あー、夕映や」

二人が地下3階を見学していた時、木乃香は前方に居た少女に気付き声を上げていた

前方には高い脚立の一番上に乗って、背伸びをして本を取ろうとしていた少女が居る


「夕映、危ないえ~」

高い脚立の一番上で背伸びをする夕映に木乃香はハラハラしながら声をかけるが、それがまずかった


「はい?……えっ」

木乃香の声に反応して振り向いた夕映は、バランスを崩して足を踏み外してしまう


「夕映!!」

足を踏み外して脚立から落ちていく夕映に木乃香は悲鳴に似た声を上げるが、あまりに突然の事で身体は動かない


「うわっと! 大丈夫か?」

足を踏み外した瞬間に夕映は落ちたのを理解して床の衝撃を覚悟したが、夕映が感じたのは見知らぬ横島の声だった


「夕映! 大丈夫?」

「……はい大丈夫です」

予期せぬ事態に夕映がポカーンとする中で木乃香は慌てて駆け寄るが、夕映はまだ現状を理解してない

あの瞬間に横島が真っ先に動いて夕映を受け止めただけなのだが、夕映は何故自分が見知らぬ横島に抱き抱えられてるのか、すぐには理解出来なかったようである





10/12ページ
スキ