平和な日常~冬~5
その後も店の営業と明日の仕込みは平行して続くが、木乃香は暇なタイミングを見つけては日頃横島に料理を教わる時のように要点をメモを取りながら坂本夫妻の仕込みを見守り続けた。
最初は木乃香が仕込みの手順や気付いたことを勝手にメモしていただけだったが、勉強熱心な木乃香に坂本夫妻の夫はいつの間にか店に来る前に行った仕込みやその材料についてなども教え始めている。
「必要かは分からないが、君達ならばそう苦労しないで習得出来るだろう。」
一見すると暇な時にただ見ているだけの横島とメモを取りながら真剣に見ている木乃香であるが、坂本夫妻の夫は木乃香ばかりではなく横島もその気になれば麻帆良亭の味を習得出来るだろうと見ていた。
実際横島は要所で覗きに来ていて必要なポイントは見ていたし坂本夫妻の夫もそれを理解している。
「いや~、勉強になります。」
途中から教え始めたこともあり半ば遠慮なく学び始めた横島と木乃香に、坂本夫妻の夫は嫌な顔一つすることなく仕込みに必要なポイントを教えていく。
まあ横島のように手取り足取りとまではいかないが、後は自分で努力して覚えろとでも言うように最低限のことだけを教えていた。
無論すでに自分の形がある横島や木乃香であるので麻帆良亭の味をそのまま受け継ぐ訳ではないが、二人の料理の中に麻帆良亭の味が一部でも形を変えて生きていくのも悪くはないと坂本夫妻の夫は思っている。
終わらせるべきものは終わらせて伝えるべきことは伝えよう。
それが横島達と出会って坂本夫妻が決めたことだった。
「横島君はやはり味覚も勘も良すぎる。 それは利点であるが欠点でもあるな。」
そして夕方を過ぎると仕込みは一段落して坂本夫妻は厨房の隅で休憩にするが、夫がふと漏らしたのは横島の味覚と勘についてだ。
坂本夫妻は長年店を開いていただけに多くの料理人と出会い何人かは弟子として育てて来たが、そんな坂本夫妻から見ても横島はやはり異質だった。
まさに天性の才能だと感じるほど横島の味覚は鋭く勘もいいと感じるが、それが横島の欠点でもあると以前から感じていたことを再認識する。
「良く言えば目指す味にたどり着くのが早いと言えるし、悪く言えば試行錯誤が足りないと言える。 その若さでそれだけの腕前の理由は理解できたが、今後に少し不安も感じるな。」
人の五感を超えた超感覚で料理をする横島の本質を坂本夫妻の夫はほぼ見抜き、それ故にそれがゆくゆくは横島の料理人としての枷になるのではと気にしていた。
「試行錯誤が足りないのは本当にその通りですよ。」
坂本夫妻もあまり口出しする気はないようではあるが横島の何処かアンバランスな現状を危惧していて、横島自信は苦笑いを浮かべてそれを素直に認めている。
借り物の技術と経験をこれまた借り物の超感覚で使うだけに欠点はあるし、横島もそれは常々自覚していた。
「時が解決する気もするが、あまり味覚や勘に頼りすぎない方がいいだろうな。 料理は試行錯誤の連続だ。」
「肝に命じておきます。」
坂本夫妻の夫にとって横島は羨ましくなるほどであるが、それ故に小さく纏まりそうな現状を心配していた。
それは横島にとってぐうの音も出ないほど的を得たことであり一切の反論の余地もない。
結局のところ極端に言えば横島の料理は寄せ集めのコピーや物まねのようなものでオリジナルではないのだから。
一方木乃香は自身では思いもしなかった横島の欠点に驚きつつも、それは横島の秘密や過去と関係あるのかなと漠然と考えていた。
ただ木乃香からすると欠点があるならば克服すればいいと前向きに思うし、必要ならば自分達が力になればいいと思っていたが。
最初は木乃香が仕込みの手順や気付いたことを勝手にメモしていただけだったが、勉強熱心な木乃香に坂本夫妻の夫はいつの間にか店に来る前に行った仕込みやその材料についてなども教え始めている。
「必要かは分からないが、君達ならばそう苦労しないで習得出来るだろう。」
一見すると暇な時にただ見ているだけの横島とメモを取りながら真剣に見ている木乃香であるが、坂本夫妻の夫は木乃香ばかりではなく横島もその気になれば麻帆良亭の味を習得出来るだろうと見ていた。
実際横島は要所で覗きに来ていて必要なポイントは見ていたし坂本夫妻の夫もそれを理解している。
「いや~、勉強になります。」
途中から教え始めたこともあり半ば遠慮なく学び始めた横島と木乃香に、坂本夫妻の夫は嫌な顔一つすることなく仕込みに必要なポイントを教えていく。
まあ横島のように手取り足取りとまではいかないが、後は自分で努力して覚えろとでも言うように最低限のことだけを教えていた。
無論すでに自分の形がある横島や木乃香であるので麻帆良亭の味をそのまま受け継ぐ訳ではないが、二人の料理の中に麻帆良亭の味が一部でも形を変えて生きていくのも悪くはないと坂本夫妻の夫は思っている。
終わらせるべきものは終わらせて伝えるべきことは伝えよう。
それが横島達と出会って坂本夫妻が決めたことだった。
「横島君はやはり味覚も勘も良すぎる。 それは利点であるが欠点でもあるな。」
そして夕方を過ぎると仕込みは一段落して坂本夫妻は厨房の隅で休憩にするが、夫がふと漏らしたのは横島の味覚と勘についてだ。
坂本夫妻は長年店を開いていただけに多くの料理人と出会い何人かは弟子として育てて来たが、そんな坂本夫妻から見ても横島はやはり異質だった。
まさに天性の才能だと感じるほど横島の味覚は鋭く勘もいいと感じるが、それが横島の欠点でもあると以前から感じていたことを再認識する。
「良く言えば目指す味にたどり着くのが早いと言えるし、悪く言えば試行錯誤が足りないと言える。 その若さでそれだけの腕前の理由は理解できたが、今後に少し不安も感じるな。」
人の五感を超えた超感覚で料理をする横島の本質を坂本夫妻の夫はほぼ見抜き、それ故にそれがゆくゆくは横島の料理人としての枷になるのではと気にしていた。
「試行錯誤が足りないのは本当にその通りですよ。」
坂本夫妻もあまり口出しする気はないようではあるが横島の何処かアンバランスな現状を危惧していて、横島自信は苦笑いを浮かべてそれを素直に認めている。
借り物の技術と経験をこれまた借り物の超感覚で使うだけに欠点はあるし、横島もそれは常々自覚していた。
「時が解決する気もするが、あまり味覚や勘に頼りすぎない方がいいだろうな。 料理は試行錯誤の連続だ。」
「肝に命じておきます。」
坂本夫妻の夫にとって横島は羨ましくなるほどであるが、それ故に小さく纏まりそうな現状を心配していた。
それは横島にとってぐうの音も出ないほど的を得たことであり一切の反論の余地もない。
結局のところ極端に言えば横島の料理は寄せ集めのコピーや物まねのようなものでオリジナルではないのだから。
一方木乃香は自身では思いもしなかった横島の欠点に驚きつつも、それは横島の秘密や過去と関係あるのかなと漠然と考えていた。
ただ木乃香からすると欠点があるならば克服すればいいと前向きに思うし、必要ならば自分達が力になればいいと思っていたが。