平和な日常~冬~5
一方この日の放課後、木乃香には人生初の予期せぬ体験が待ち受けていた。
「もし良かったら俺と付き合ってくれないか?」
それは木乃香がいつものように明日菜・夕映・のどかと学校を後にした時のこと。
最寄りの駅近くで一人の見知らぬ高校生に声をかけられていた。
「突然のことで驚いてるかもしれないが体育祭で見掛けた時から好きだった。」
真剣な表情で少しだけ話を聞いて欲しいと語る高校生はナンパには見えずに木乃香はええよと気軽に返事をすると、明日菜達と一緒に駅前の広場に移動して話を聞くことにしたものの、まさかの人生初の告白に流石の木乃香と明日菜達も固まってしまう。
麻帆良祭の写真や体育祭の料理大会の影響で木乃香は見知らぬ人に声をかけられたりナンパされたりする機会が意外とあったが、それでも中等部以外の世間的には横島の彼女だとの印象が強いのでここまで真剣な告白は初めてである。
「ごめんなさい。」
見てる方が緊張しそうなほど緊張した高校生に木乃香はしばし固まっていたが、すぐに我に帰ると深々と頭を下げて断りの言葉を口にした。
周りの明日菜達もまさかこんな場面に遭遇するとは思わず成り行きを見守るしか出来ないが、木乃香は考える間もなく断りの言葉を口にしている。
「やっぱりそうか。 いや分かっていたんだ。 時間を取らせて悪かったな。」
高校生はまるで一昔前の青春ドラマのような真面目そうな男性だった。
彼は木乃香の返事に作り笑いするように表情を崩すと、最後にありがとうと言って名前も名乗らずに去っていく。
「ビックリしたわ。」
「それはこっちの台詞よ。 まさか目の前であんな告白見るなんて思わなかったわ。」
高校生の姿が見えなくなるまで固まったように動けなかった木乃香達であるが、姿が見えなくなると高まっていた緊張から解放されたように身体中から力が抜けていくようであった。
日頃からあまり突発的なことにも動じない木乃香も流石に今回は驚いたらしく、近くのベンチに座りホッと一息ついている。
そしてホッとしたのは見ていた明日菜達も同じで彼女達三人も恋愛経験などないので、本当にどうしていいか分からないようだった。
そのまま駅前広場のベンチで無言になり座り続ける四人であったが、木乃香は元より明日菜達までもが男性と付き合うということを自分のこととしてリアルに考えてしまう。
まあ元から全くそういうことを考えたことがない訳ではないので突発的な出来事に驚く気持ちが強いが、それでも異性という存在と好きという気持ちについては考えさせられるものがある。
「そう言えば美砂は前に告白されて断ったって言ってたわね。」
しかし木乃香達に恋愛経験は無く周りで恋愛をまともにしてそうなのは美砂達であるが、肝心の美砂達にしても恋人が居たとは聞いたことないし以前に告白を断った話ならば聞いたことがあった。
木乃香に関しては当然十代の女の子なので恋愛に興味はあったが、それは読み物や物語としての側面が強く自分のこととしてリアルに考えられるかと言われると今一つ考えられなかったのが本音だろう。
明日菜・夕映・のどかの三人も自分は木乃香ほどモテないので半分他人事のような心境ではあるものの、それでもリアルに男性と付き合うと考えるいいきっかけにはなっている。
四人がそれぞれに頭に浮かぶ男性は一人であり、正直その男性が本気で好きなのかと聞かれると返事に困るかもしれない。
ただもしその男性が先程の高校生のように告白してくれたらと思うと……。
「帰ろっか。」
「うん。」
四人はほぼ同じタイミングで同じ想像をしていたのかのどかなどな顔を真っ赤にしていたが、すぐに元に戻りその男性には無理だなとの結論に至る。
恋愛オンチな上に変なとこで不器用なその男性には普通なんて求めてはいけないとの考えにみんなが至ると、木乃香達は顔を見合わせてため息をこぼしたのちに帰路につくことになる。
普通の恋愛に憧れる気持ちは当然あるが、それ以上に今ある幸せを失いたくないとの想いが最終的には強く残ることになっていた。
「もし良かったら俺と付き合ってくれないか?」
それは木乃香がいつものように明日菜・夕映・のどかと学校を後にした時のこと。
最寄りの駅近くで一人の見知らぬ高校生に声をかけられていた。
「突然のことで驚いてるかもしれないが体育祭で見掛けた時から好きだった。」
真剣な表情で少しだけ話を聞いて欲しいと語る高校生はナンパには見えずに木乃香はええよと気軽に返事をすると、明日菜達と一緒に駅前の広場に移動して話を聞くことにしたものの、まさかの人生初の告白に流石の木乃香と明日菜達も固まってしまう。
麻帆良祭の写真や体育祭の料理大会の影響で木乃香は見知らぬ人に声をかけられたりナンパされたりする機会が意外とあったが、それでも中等部以外の世間的には横島の彼女だとの印象が強いのでここまで真剣な告白は初めてである。
「ごめんなさい。」
見てる方が緊張しそうなほど緊張した高校生に木乃香はしばし固まっていたが、すぐに我に帰ると深々と頭を下げて断りの言葉を口にした。
周りの明日菜達もまさかこんな場面に遭遇するとは思わず成り行きを見守るしか出来ないが、木乃香は考える間もなく断りの言葉を口にしている。
「やっぱりそうか。 いや分かっていたんだ。 時間を取らせて悪かったな。」
高校生はまるで一昔前の青春ドラマのような真面目そうな男性だった。
彼は木乃香の返事に作り笑いするように表情を崩すと、最後にありがとうと言って名前も名乗らずに去っていく。
「ビックリしたわ。」
「それはこっちの台詞よ。 まさか目の前であんな告白見るなんて思わなかったわ。」
高校生の姿が見えなくなるまで固まったように動けなかった木乃香達であるが、姿が見えなくなると高まっていた緊張から解放されたように身体中から力が抜けていくようであった。
日頃からあまり突発的なことにも動じない木乃香も流石に今回は驚いたらしく、近くのベンチに座りホッと一息ついている。
そしてホッとしたのは見ていた明日菜達も同じで彼女達三人も恋愛経験などないので、本当にどうしていいか分からないようだった。
そのまま駅前広場のベンチで無言になり座り続ける四人であったが、木乃香は元より明日菜達までもが男性と付き合うということを自分のこととしてリアルに考えてしまう。
まあ元から全くそういうことを考えたことがない訳ではないので突発的な出来事に驚く気持ちが強いが、それでも異性という存在と好きという気持ちについては考えさせられるものがある。
「そう言えば美砂は前に告白されて断ったって言ってたわね。」
しかし木乃香達に恋愛経験は無く周りで恋愛をまともにしてそうなのは美砂達であるが、肝心の美砂達にしても恋人が居たとは聞いたことないし以前に告白を断った話ならば聞いたことがあった。
木乃香に関しては当然十代の女の子なので恋愛に興味はあったが、それは読み物や物語としての側面が強く自分のこととしてリアルに考えられるかと言われると今一つ考えられなかったのが本音だろう。
明日菜・夕映・のどかの三人も自分は木乃香ほどモテないので半分他人事のような心境ではあるものの、それでもリアルに男性と付き合うと考えるいいきっかけにはなっている。
四人がそれぞれに頭に浮かぶ男性は一人であり、正直その男性が本気で好きなのかと聞かれると返事に困るかもしれない。
ただもしその男性が先程の高校生のように告白してくれたらと思うと……。
「帰ろっか。」
「うん。」
四人はほぼ同じタイミングで同じ想像をしていたのかのどかなどな顔を真っ赤にしていたが、すぐに元に戻りその男性には無理だなとの結論に至る。
恋愛オンチな上に変なとこで不器用なその男性には普通なんて求めてはいけないとの考えにみんなが至ると、木乃香達は顔を見合わせてため息をこぼしたのちに帰路につくことになる。
普通の恋愛に憧れる気持ちは当然あるが、それ以上に今ある幸せを失いたくないとの想いが最終的には強く残ることになっていた。