平和な日常~冬~5
それから数日後、数年ぶりに和解した木乃香と刹那であるが二人の関係は以前からは多少変化はあったもののあまり大きな変化とまでは言えなかった。
もちろん木乃香と刹那は挨拶は交わすし普通に話もすることはあるのだが、元々刹那はコミュニケーション能力に難があり自分から人に話し掛けることすら希な生活だったことが原因である。
加えて本来の歴史では修学旅行の事件で絆を深めるはずの明日菜とは、未だに普通のクラスメートでしかないことも地味に影響していた。
基本的に受け身というか積極性がない刹那が木乃香やクラスメートとの距離を縮めるには、明日菜のように周囲と繋いでくれるような積極的な人間が必要なのかもしれない。
ただ木乃香自身が今は横島を中心とするコミュニティの中心人物であることも本来の歴史とは大きく違うところで、今の木乃香は麻帆良でも有数の有名人であり木乃香の周りには美砂達やあやか達を筆頭に常に友人知人が居ることも刹那との関係が大きく変わらない原因だと思われる。
別に木乃香の周囲は誰も刹那を拒否してないので刹那が積極的にグループの輪に加わればいいだけなのだが、それが出来ないから九年も絶縁状態だった訳だし。
まあ和解が済んだのは確かなので後は時間をかけて様子を見るしかないのだが。
「横島君とこはあんまり変わらんなぁ。 表通りに新しいラーメン屋出来ただろ? うちの客ごっそり持っていったわ。」
さてそんなこの日の午後には近所のラーメン屋の親父が重苦しい空気を纏って店に来ていた。
「ああ、年末に開店したあそこですか。 結構繁盛してますよね。 美味いんっすか?」
「味はそこそこらしいがボリュームがあって、ライス無料なんだってさ。」
我が道をゆく横島にはあまり関係ないことだが麻帆良は飲食店の競争が激しい激戦区である。
横島の店のある裏通りから近い表通りに今風の新しいラーメン屋が昨年末に出来たのは横島も知っていたが、近所に昔からあるラーメン屋では客が激減して大変らしい。
「大手のチェーン店らしいから、うちなんかだと対抗するの厳しいよ。」
近所のラーメン屋は昔ながらの醤油ラーメンをウリにしているが、新しいラーメン屋は豚骨醤油のラーメンで店内も女性が入りやすいようにと爽やかな内装だった。
ラーメン屋の親父もあの手この手で対策を考えては試してるようだが、成果は今一つのようだ。
「横島君みたいに味で勝負出来るほどの違いもないしな。」
無論ラーメン屋の親父も無能ではないが値段と味をトータルで考えると単純に味だけで勝負するのは簡単ではない。
実はそんな横島の場合でも近くにあった大手コーヒーショップを閉店に追い込んでいたりするが。
そこは横島の店から徒歩五分ほどの場所に数年前からあった店であるが、横島の店から近いこともあって客を奪う形になった結果昨年の十一月頃にひっそりと閉店している。
まあ元々そこは値段が割高で高級志向をウリにしていたので学生の割合が少なく開店してしばらくは住み分けが出来ていたのだが、半ば道楽で店をやる横島には味も値段も勝てないので当然の結果ではあった。
「うちは木乃香ちゃん達が居なきゃ繁盛する前に潰れてましたよ。」
「もっと学生をターゲットに変えるべきか。 しかしここの近所は女子寮ばっかりだからな。 ラーメン屋は不利なんだよなぁ。」
何度目か分からないため息を溢すラーメン屋の親父の話を横島は聞き役に徹して話し相手になっていたが、流石に横島自身から軽はずみな言動を言うことはない。
立場上アドバイスを求められれば答えはするものの、基本的には横島も喫茶店のマスターとして愚痴を聞くのも仕事だと受け止める程度である。
特に年上の年配者に関しては安易なアドバイスなんかはしないように気を付けていた。
まあ相手もプロであり自分で考えるだろうし、何よりこの手の問題は宮脇食堂の一件で横島も結構懲りている。
ただ横島の場合は愚痴をこぼしやすいのか、常連なんかはあれこれと愚痴をこぼすことが割りと良くあった。
中には嫁と姑が別々の時間に来て双方で似たような愚痴をこぼす者なんかもいるが。
もちろん木乃香と刹那は挨拶は交わすし普通に話もすることはあるのだが、元々刹那はコミュニケーション能力に難があり自分から人に話し掛けることすら希な生活だったことが原因である。
加えて本来の歴史では修学旅行の事件で絆を深めるはずの明日菜とは、未だに普通のクラスメートでしかないことも地味に影響していた。
基本的に受け身というか積極性がない刹那が木乃香やクラスメートとの距離を縮めるには、明日菜のように周囲と繋いでくれるような積極的な人間が必要なのかもしれない。
ただ木乃香自身が今は横島を中心とするコミュニティの中心人物であることも本来の歴史とは大きく違うところで、今の木乃香は麻帆良でも有数の有名人であり木乃香の周りには美砂達やあやか達を筆頭に常に友人知人が居ることも刹那との関係が大きく変わらない原因だと思われる。
別に木乃香の周囲は誰も刹那を拒否してないので刹那が積極的にグループの輪に加わればいいだけなのだが、それが出来ないから九年も絶縁状態だった訳だし。
まあ和解が済んだのは確かなので後は時間をかけて様子を見るしかないのだが。
「横島君とこはあんまり変わらんなぁ。 表通りに新しいラーメン屋出来ただろ? うちの客ごっそり持っていったわ。」
さてそんなこの日の午後には近所のラーメン屋の親父が重苦しい空気を纏って店に来ていた。
「ああ、年末に開店したあそこですか。 結構繁盛してますよね。 美味いんっすか?」
「味はそこそこらしいがボリュームがあって、ライス無料なんだってさ。」
我が道をゆく横島にはあまり関係ないことだが麻帆良は飲食店の競争が激しい激戦区である。
横島の店のある裏通りから近い表通りに今風の新しいラーメン屋が昨年末に出来たのは横島も知っていたが、近所に昔からあるラーメン屋では客が激減して大変らしい。
「大手のチェーン店らしいから、うちなんかだと対抗するの厳しいよ。」
近所のラーメン屋は昔ながらの醤油ラーメンをウリにしているが、新しいラーメン屋は豚骨醤油のラーメンで店内も女性が入りやすいようにと爽やかな内装だった。
ラーメン屋の親父もあの手この手で対策を考えては試してるようだが、成果は今一つのようだ。
「横島君みたいに味で勝負出来るほどの違いもないしな。」
無論ラーメン屋の親父も無能ではないが値段と味をトータルで考えると単純に味だけで勝負するのは簡単ではない。
実はそんな横島の場合でも近くにあった大手コーヒーショップを閉店に追い込んでいたりするが。
そこは横島の店から徒歩五分ほどの場所に数年前からあった店であるが、横島の店から近いこともあって客を奪う形になった結果昨年の十一月頃にひっそりと閉店している。
まあ元々そこは値段が割高で高級志向をウリにしていたので学生の割合が少なく開店してしばらくは住み分けが出来ていたのだが、半ば道楽で店をやる横島には味も値段も勝てないので当然の結果ではあった。
「うちは木乃香ちゃん達が居なきゃ繁盛する前に潰れてましたよ。」
「もっと学生をターゲットに変えるべきか。 しかしここの近所は女子寮ばっかりだからな。 ラーメン屋は不利なんだよなぁ。」
何度目か分からないため息を溢すラーメン屋の親父の話を横島は聞き役に徹して話し相手になっていたが、流石に横島自身から軽はずみな言動を言うことはない。
立場上アドバイスを求められれば答えはするものの、基本的には横島も喫茶店のマスターとして愚痴を聞くのも仕事だと受け止める程度である。
特に年上の年配者に関しては安易なアドバイスなんかはしないように気を付けていた。
まあ相手もプロであり自分で考えるだろうし、何よりこの手の問題は宮脇食堂の一件で横島も結構懲りている。
ただ横島の場合は愚痴をこぼしやすいのか、常連なんかはあれこれと愚痴をこぼすことが割りと良くあった。
中には嫁と姑が別々の時間に来て双方で似たような愚痴をこぼす者なんかもいるが。