「はい、タマちゃん。 先生もせっちゃんも冷めへんうちにおあがり。」

場違いな空気全開の横島が置いていった料理はなんとピザとポテトにスイーツは羊羮であった。

一体横島は何を考えているのかと刀子は頭を抱えるが木乃香はあまり気にしてないようでタマモに取り分けて上げつつ、刀子と刹那にも食べるようにと言葉をかける。

ずっと無言だった木乃香から突如名前を呼ばれた刹那はビクッとするも結局返事は出来ずに、頭を抱えていた刀子が二人分を取り分けていた。


「あれ、これって……。」

予想以上に何も出来ない刹那に困ってしまう刀子であるが、ピザを一口食べるとその表情が変化する。

そもそも余り物と横島は言っていたが夕食は別にピザでもなければ羊羮なんて今日は売ってなく、横島がこの場に合わせて作ったのが本当であった。

しかもピザは俗に言う和風ピザの一種で関西でお馴染みな白味噌をベースにした一品である。


「刹那、貴女も食べなさい。」

横島が何故ピザにしたのかは誰にも分からないが、その意図は一口食べれば分かるものだった。

刀子はすぐに刹那にも食べるようにと促すと刹那はようやく一口食べるが、刀子と同じく表情が僅かに変化する。


「懐かしいのに新鮮な味やわ。」

それはピザということで多少イタリアン風にアレンジしてはいるが味付けの基本は懐かしい京都の味であった。

思わず木乃香も驚くが横島は何度も一緒に料理をした木乃香の家庭の味を当然熟知している。

あからさまに京都料理は出さなかったが、タマモ以外の三人が京都生まれだということを考慮して考えたメニューだった。

同じくポテトと羊羮も京都風にしていて何処か懐かしさを感じる味にしている。

木乃香は自分も食べつつモグモグと美味しそうに頬張るタマモの口元を拭いてあげたりと、世話をしながら刹那の言葉を待った。


「おいしくない？」

「あっ、いえ。 そういう訳では。」

とりあえず料理で固まった空気は解けたが未だに何も言えない刹那に刀子は本題をどう切り出そうかと悩むが、そんな時あまり役に立ってなかったタマモが突然刹那に言葉をかけていた。


「なかよくしたいときは、いっしょにごはんをたべるのがいちばんなんだよ。」

どちらかと言えば木乃香と刀子は刹那自身に話す勇気を持って欲しかったが、タマモはそんなことを理解してないので一緒にご飯を食べれば仲良くなれると本気で思っている。

エヴァにしろ木乃香達にしろ他の常連の人達にしろタマモはそうして仲良くなったのだから、タマモ的にはこのタイミングを待っていたのだ。


「わたししってるよ。 このかちゃんもさくらざきさんもなかよくしたいんだよね。 ならいっしょにごはんをたべてなかよくすればいいんだよ。」

離れていた時間や過去、そして魔法や正体と何を話し何を隠すのか刹那は未だに決めかねていた。

そんな刹那にタマモの言葉は何故か胸に突き刺さるように響いている。

ご飯を食べれば仲良くなれるというのはタマモの勘違いとも言えるが、タマモは双方が仲良くしたいと知ってるからこそ言った言葉であった。


「たいせつなおはなしはひみつにしたらいいよ。 わたしぜったいしゃべらないから。」

「タマちゃん誰かの秘密知ってるん？」

「うん、でもこのかちゃんでもおしえないよ。」

なんというかご飯を食べて仲良くなろうとする純粋過ぎるタマモに刹那と刀子はポカーンとするが、続けてタマモが大切なことは秘密にしたらいいと言い出すと木乃香ですら驚いてしまう。

まさかタマモがそんなこと知ってるとは思わなかった木乃香であるが、実際タマモはエヴァ関連の秘密は知ってるが誰にも話してないのだ。

まあ誰かの秘密を知ってると言うこと自体が子供の浅知恵にも思えるが、タマモは木乃香にも他人の秘密は言わないと断言する。

ぶっちゃけタマモは刹那の正体もチャチャゼロに聞いて知ってるが黙っていて、その決意は本物なのだが。