平和な日常~冬~5

その後タマモは窓の外を気にしながら雪がたくさん積もるのを願いつつ一足先に寝ることになる。

一方テレビでは首都圏で現在も降り続く雪の情報が随時流れているが、電車は夕方以降は完全に止まってしまい道路も麻痺しているので駅や公共施設で夜明けを待つ人の様子が映し出されていた。

実は麻帆良に関しても帰宅難民が多少出たようで、麻帆良学園では学園が保有する寮のゲストルームや各校舎を避難所として解放するなど対応に追われている。

しかも季節は真冬なので体育館などを解放して終わりとはいかずに、暖房や毛布の準備は当然必要だし食べ物もまた用意しなくてはならないだろう。

その他には麻帆良市内に本拠地を持つ企業などでは、社員が帰宅難民であると同時にこの大雪の対応の為に徹夜になってるところもあるらしい。

横島は先程刀子に手助けが必要かと以前の連絡してみるが、現状では麻帆良は人手が足りないほどではないとのこと。

中等部では避難所として解放したことで教員や学園関係者が徹夜で対応に当たるようだが、暖房や毛布は備蓄品があるらしく食料も十分に手に入ったようだ。



「これ十センチ超してるだろう。」

結局横島達と坂本夫妻は早めに休むことにしてこの日は終わるが、翌朝横島が起きると窓の外はまだ夜明け前で暗かったのだが一面の銀世界だった。


「……ゆきつもった?」

同じく横島が起きたことで目を覚ましたタマモはまだ少し眠いらしく目を擦りながらフラフラと起き出すが、横島に抱き抱えられて窓の外を見ると途端に眠気がぶっ飛んだように目を見開き瞳をランランと輝かせ始める。

思った以上に積もっていて本当に雪ダルマも作れそうなほどだ。


「仕入れにいかんとダメなんだが……。」

タマモはさっそく外に行くと言い出し、横島はそのまま外に出ていきそうなタマモに防寒具を着せて完全防備の状態にしていく。

そして今日の店の営業について考えるが、実は雪広グループからは今朝の配達は定時では無理な上に一部食品は配達不可能だと連絡が昨夜のうちに入っていた。

仕入れに関しては朝市はどうせ今日はやってないだろうし市場も生鮮食品はあるかは怪しい。

だんだん面倒になってきた横島はいっそ今日は休んじゃおうかなとの考えが一瞬頭を過るものの、坂本夫妻が来てることもあり流石に面倒だから休むのは不味いかなとも思う。


「あっ、おはようございます。 起こしちゃいましたか? すいません。」

とりあえず現状の確認が先かと雪広グループの配達会社に今朝の配達の状況を確認したり、市場にも生鮮食品があるか連絡してみるなどしてると夜明け前にも関わらず坂本夫妻が起きて来る。


「私達はいつも朝はこの時間なのよ。 店をやってる時からの習慣なの。」

少し煩かったかと申し訳なさそうに謝る横島だが、どうやら坂本夫妻も元々朝が早いらしい。

そのまま横島は坂本夫妻にはゆっくりして貰って自身は仕入れに行くことにするが、流石にそのままだと危ないのでタイヤにチェーンを着けて仕入れに向かう。

いつも通りタマモと二人で仕入れに出掛けるのだが、当然ながらオープンカーのコブラは泣きたくなるほど寒い。

というかこんな日にコブラに乗るのは世界でも横島くらいだろう。

タマモの中でオープンカーの地位がまた一段と下がったのは言うまでもないが、仕入れに関してもやはり満足に出来ずに散々な朝であった。

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