平和な日常~冬~5
その日の夕食はいつものメンバーに加えて坂本夫妻と友人達も一緒だったので、いつもとは微妙に違う雰囲気であった。
横島達にとって夕食に食客が増えるのはさして珍しくもないが、坂本夫妻や友人達にとっては若い子達と大人数での夕食は珍しい。
まあ坂本夫妻達も孫との食事はすることもあるのだろうが、意外と孫以外と一緒に食事をする機会はないようである。
ただ店を営業したまま店内のフロアで食事をする事には流石に驚きというか半ば呆れてもいたが。
結局良くも悪くも横島は自然体であり肩肘を張るどころかお客さんに対しても必要以上に気を使わないのだから、先程夕映が語った変わった人だという言葉が妙にしっくりとくる。
そんな夕食後は木乃香達が帰り横島は店で後片付けや明日の仕込みをしながら店を開けていたが、坂本夫妻はさよとタマモと一緒に二階に上がっていた。
「なんだか不思議な気分ね。 つい一年前までは私達がここに住んでたのよ。」
二階に上がると玄関にはまだ新しい下駄箱があるものの一年前とはあまり変わりはない。
しかしリビングはすでに一年前とは別の部屋のようで、坂本夫妻は長年暮らした部屋の変わった姿に何とも言えない心境になったようだ。
テレビの位置なんかは同じであったが自分達の頃とは家具の配置が違うし、気持ち良さそうに泳ぐ金魚の水槽が何故か夫妻の目を惹き付けている。
壁には雪広グループで配っている世界の観光地のカレンダーもあって、ここで横島達が生活してるのだと感じさせる光景だった。
「お風呂はいつでも入れるのでゆっくりして下さいね。」
流石に下着などは近所の店から買ってきたが寝間着に着る服は横島やさよの服を貸すことにして、坂本夫妻が今着てる服は今夜中に洗濯乾燥機で洗濯すれば明日の朝には着ることが出来るだろう。
泊まる準備自体はハニワ兵がしていたのでさよは隠れてるハニワ兵の指示通りに坂本夫妻に説明するだけである。
まるで離れて暮らす息子夫婦の家に来たような感覚に襲われる坂本夫妻であるが、それはここが自分達がつい一年前までは住んでいたからだろうと思う。
そして坂本夫妻は二階に来たことでタマモの母親が居ないのだとこの時初めて気付いていた。
元々横島とさよは見た目は元より仲の良さなどからも兄妹に見えなくもなく坂本夫妻は兄妹だと思っているが、タマモに関しては兄妹にしては年が離れている。
どちらかと言えば横島の子供にも思えるが、横島の子供でないのは横島とタマモの様子を見ていてなんとなくだが感じていたのだ。
「三人で暮らしてるの?」
「そうですよ。 実は私達は血の繋がりはないんですけどね。 縁あって一緒に暮らしてます。」
あまり深く聞いてはいけないと思いつつ坂本夫妻の妻はさよや幼いタマモを心配して、それとなくだがつい聞いてしまう。
しかしさよもタマモも今は幸せでありそんな坂本夫妻の心配を全く気付いてないので、さよが話せる範囲で素直に現状を語るとタマモも続けて楽しげに日々の日常を話していくと坂本夫妻はホッとしたようにタマモの話を聞いていた。
その後坂本夫妻はお風呂に入りこたつでゆっくりしていると店を閉め終えた横島が二階に上がってくる。
するとタマモは横島の膝の上に座るとスケッチブックに絵を描き始めるが、坂本夫妻はその絵に驚きの表情を見せた。
「あら、それは私達かしら?」
「うん! このまえきたときのだよ。」
タマモが描いていたのは前回坂本夫妻が麻帆良亭を復活させた時の絵だった。
特別上手い訳ではなく年相応ではあるが、楽しげな坂本夫妻の表情を誰が見ても分かる絵である。
自分達はこんな表情をして仕事をしていたのかと、坂本夫妻はタマモの絵を見て始めて気付いたようであった。
横島達にとって夕食に食客が増えるのはさして珍しくもないが、坂本夫妻や友人達にとっては若い子達と大人数での夕食は珍しい。
まあ坂本夫妻達も孫との食事はすることもあるのだろうが、意外と孫以外と一緒に食事をする機会はないようである。
ただ店を営業したまま店内のフロアで食事をする事には流石に驚きというか半ば呆れてもいたが。
結局良くも悪くも横島は自然体であり肩肘を張るどころかお客さんに対しても必要以上に気を使わないのだから、先程夕映が語った変わった人だという言葉が妙にしっくりとくる。
そんな夕食後は木乃香達が帰り横島は店で後片付けや明日の仕込みをしながら店を開けていたが、坂本夫妻はさよとタマモと一緒に二階に上がっていた。
「なんだか不思議な気分ね。 つい一年前までは私達がここに住んでたのよ。」
二階に上がると玄関にはまだ新しい下駄箱があるものの一年前とはあまり変わりはない。
しかしリビングはすでに一年前とは別の部屋のようで、坂本夫妻は長年暮らした部屋の変わった姿に何とも言えない心境になったようだ。
テレビの位置なんかは同じであったが自分達の頃とは家具の配置が違うし、気持ち良さそうに泳ぐ金魚の水槽が何故か夫妻の目を惹き付けている。
壁には雪広グループで配っている世界の観光地のカレンダーもあって、ここで横島達が生活してるのだと感じさせる光景だった。
「お風呂はいつでも入れるのでゆっくりして下さいね。」
流石に下着などは近所の店から買ってきたが寝間着に着る服は横島やさよの服を貸すことにして、坂本夫妻が今着てる服は今夜中に洗濯乾燥機で洗濯すれば明日の朝には着ることが出来るだろう。
泊まる準備自体はハニワ兵がしていたのでさよは隠れてるハニワ兵の指示通りに坂本夫妻に説明するだけである。
まるで離れて暮らす息子夫婦の家に来たような感覚に襲われる坂本夫妻であるが、それはここが自分達がつい一年前までは住んでいたからだろうと思う。
そして坂本夫妻は二階に来たことでタマモの母親が居ないのだとこの時初めて気付いていた。
元々横島とさよは見た目は元より仲の良さなどからも兄妹に見えなくもなく坂本夫妻は兄妹だと思っているが、タマモに関しては兄妹にしては年が離れている。
どちらかと言えば横島の子供にも思えるが、横島の子供でないのは横島とタマモの様子を見ていてなんとなくだが感じていたのだ。
「三人で暮らしてるの?」
「そうですよ。 実は私達は血の繋がりはないんですけどね。 縁あって一緒に暮らしてます。」
あまり深く聞いてはいけないと思いつつ坂本夫妻の妻はさよや幼いタマモを心配して、それとなくだがつい聞いてしまう。
しかしさよもタマモも今は幸せでありそんな坂本夫妻の心配を全く気付いてないので、さよが話せる範囲で素直に現状を語るとタマモも続けて楽しげに日々の日常を話していくと坂本夫妻はホッとしたようにタマモの話を聞いていた。
その後坂本夫妻はお風呂に入りこたつでゆっくりしていると店を閉め終えた横島が二階に上がってくる。
するとタマモは横島の膝の上に座るとスケッチブックに絵を描き始めるが、坂本夫妻はその絵に驚きの表情を見せた。
「あら、それは私達かしら?」
「うん! このまえきたときのだよ。」
タマモが描いていたのは前回坂本夫妻が麻帆良亭を復活させた時の絵だった。
特別上手い訳ではなく年相応ではあるが、楽しげな坂本夫妻の表情を誰が見ても分かる絵である。
自分達はこんな表情をして仕事をしていたのかと、坂本夫妻はタマモの絵を見て始めて気付いたようであった。